wondertrunk(ワンダートランク)は、世界の旅行会社や旅行メディアと一緒に仕事をしています。そこで、今回は各国の旅行会社にヒアリングした内容もふまえて、2016年に出会った「世界のユニークな旅人タイプ」をご紹介します。
台湾では、2016年にLCCの就航と個人旅行が急拡大しましたが、一方で「スキー」「登山」「サイクリング」「マラソン」など、旅行者の趣味にあわせた少人数の団体旅行も人気が出ています。個人では行きづらい地方の観光地にも、少人数の旅行であれば気軽にいける。そこで安心して自分の好きな「体験」をする、というコミュニティ型の旅行スタイルです。
最近ではアウトドアやスポーツだけでなく、「建築」「写真」などのツアーも売れ筋だそうです。
実はこの「スモールグループツアー」のスタイルは、台湾だけでなく欧米市場でも一定のボリュームが見込める旅人タイプです。イギリスの新興系の旅行会社にヒアリングしたところ、「英語圏横断のスモールグループツアー」というものが存在します。
これは、あるテーマに沿った12-15名程度の日本旅行の少人数のツアーを企画し、イギリス、アメリカ、オーストラリア(以下:豪州)など「英語圏」をまたいで募集をかけます。参加者は、なんと「日本の空港に集合」して、そこからみんなで行くというものです。たとえば、「木曽路やアルプスを見ながら松本に抜ける、山の日本文化を体験するルート」など、京都や広島とは違ったエリアが人気のようです。
台湾と並んで、日本の地方が取り込もうと取り組む市場がタイです。「タイの人は比較的、地方コンテンツに興味があるし、親日なので受け入れやすい」というのが人気の理由の一つですが、今、タイの若者に大人気の旅行スタイルが「農業体験&農家ステイ」です。WWOOF(Working Weekends on Organic Farms)という世界的なファームステイの予約プラットフォームがあるのですが、そのサービスを使うユーザーや旅人は「WWOOFer(ウーファー)」と呼ばれます。
タイの若者の中では、近年、「ワーキングホリデー」「ボランティア」とならんで「WWOOF」が大人気だそうです。フランスのワイナリー、ニュージーランドの牧場など、様々なファームステイがありますが、日本では北海道での農業体験をするタイの旅行者が出てきているようです。
実はこのWWOOFは、タイだけでなく、欧米諸国でも人気です。サービスが元々はイギリスではじまったこともあり、イギリス、アメリカ、豪州などの英語圏はもちろん、オーガニック嗜好の強いドイツや北欧のユーザーも多数います。
アジア以外のいわゆる欧米系の国の中で、ターゲット候補としてあがりやすいのが豪州です。「豪州の旅行者は訪日の滞在日数が長く、旅行消費額も高い」というのがその理由です。
豪州からの旅行者で、我々が注目しているのは「パウダースノー・ハンター」という旅人タイプです。ご存知のとおり、北海道のニセコは豪州からの旅行者が多く集まっています。しかし、ニセコが有名になり、混雑してきた・金額が高くなっているという理由で、パウダースノーを求めるスノーボーダーたちが南下をはじめています。
まさに極上のパウダースノーを求めて、日本列島を旅するハンターなのですが、彼らの新天地の一つは、長野の白馬です。さらには、岩手の安比、福島の裏磐梯などにも豪州ボーダーが増えてきています。豪州以外にも、ニュージーランド、カナダ、アメリカ、などアクティブにスノースポーツを楽しむ人が多い国には多数存在します。
ここまでいくつかの旅行者タイプをご紹介しましたが、これはほんの一部です。あるドイツの旅行マーケティング会社の分類では、世界の旅人のタイプはなんと200種類にもなるそうです。
日本の地方がつながっていくべき海外の旅行者のタイプの可能性はまだまだありますが、比較的、大きいボリュームがありながら、日本にあまり来ていない層を最後に2つご紹介します。
一つは「アドベンチャー・トラベラー」。大自然での冒険が大好きな旅行層です。アメリカなどでは、アドベンチャー・トラベル専門の旅行会社もあります。日本でもwondertrunkでは、環境省の国立公園の海外向けSNS運営をサポートしていますが、おそらく世界に数千万人のコア旅行層がいるであろう、ボリュームゾーンです。2016年から国立公園を世界レベルでのナショナルパークにするプロジェクトが始まったので、今後の拡大が期待されます。
もう一つは「Foodies」。いわゆるグルメのトラベラーです。和食が世界文化遺産になり、ミシュランの星の数が多い東京、京都などには世界のグルメ・トラベラーが集まってきています。しかし、それはまだ大都市だけで、地方には足が向かっていません。日本の地方では、郷土料理やB級グルメばかりがフォーカスされています。庄内や北海道などでは一部はじまっていますが、地方の豊かな食材を使って「A級」の食事をPRする「Foodie Destination」は大いに可能性があります。
2016年は、政府が2020年・2030年にむけたインバウンドの新目標を発表した年でもあります。より多くの外国人旅行者を受け入れるためには、新しい旅先として「地方のインバウンド」は益々もりあがっていくと考えられます。そこで次回は、「2017年にwondertrunk & co.が注目する地方のデスティネーション」をご紹介します。
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※ご参考【担当者に聞く】日本の地域を、世界の観光地に…デスティネーション・プロデュースで、インバウンドは進化する! -博報堂DYグループ「株式会社wondertrunk&co.」設立インタビュー