2011年12月6日
博報堂研究開発局では、生活者が関心を示したと思われるモノやサービスの事例を新聞・雑誌・webなどから収集し、消費行動に潜む意識変化を分析しております。本年のレポートは、2012年以降へ向けて大きな潮流となりそうな生活者欲求の特徴を、【幸福分母の改新】というキイワードでまとめました。今回の分析に併用した【興味度ランキング】【消費に関わる生活者調査】の内容も、あわせてご紹介いたします。
東日本大震災とそれに伴うエネルギー危機は、当たり前に続くと思われていた日常の脆さをむき出しにしました。私たちは、文明がいかに進化しても未だに自然弱者であることを痛感し、さらに戦後を起点とした成長モデルと欧米型成熟への憧れといった、幸福観の通念基盤をも揺さぶられています。
今年の【興味度ランキング】上位には、「節電商品(1位)」「防災商品(2位)」「スマートフォン(3位)」「高機能肌着(4位)」「節約・倹約グッズ(5位)」「猛暑対策商品(6位)」と、生活や情報環境の基礎交換に関わるカテゴリーが並びました。幸福の分母である「毎日を生きる基底」が安定しなければ、その上で多様に分子運動するひとりひとりの躍動・結合は、行方の定まらないものになってしまいます。生活者は刹那的な嗜好に関わる欲求をやや抑えて、普遍的な日常性を復興するために新しい幸福の分母構築へと動き始めているようです。
レポートでは、「幸福分母の改新要素」を、以下の5視点にまとめました。
「生命」確保
災害や気候変動を織り込んで、命を守ることに必要な新必需品を確保する。(2011年関心カテゴリー:防災商品、猛暑対策商品、蓄電商品など)
「身体」整備
機能進化や制度改定によって手に入る商品で、身体機能や健康を整える。(2011年関心カテゴリー:高機能肌着、トーニングシューズ、スイッチOTCなど)
「記憶」の読み直し
過去の情報や商品アーカイブから、今後残すもの・忘れないでいたいことを選択する。(2011年関心カテゴリー:ロングセラー商品、工場見学、和の伝承食)
「存在」の確かめ合い
あふれる情報の中で、アイデンティティを確認する。親和・貢献可能なテリトリーを見つける。(2011年関心カテゴリー:スマートフォン、facebook、高速モバイルデータ通信など)
「共生」継続
持続可能な共生に参加できる製品・サービスを取り入れる。(2011年関心カテゴリー:節電商品、次世代エネルギー自動車、太陽光関連商品)
エネルギー対策の方向確立には最低でも5年はかかるといわれます。個々の生活者も、「今年、エアコンを一台買い替えたから、我が家の節電対策は十分」とみなしている人は少ないはずです。現在起きている消費志向は、短期的な緊急時対応ではなく、中長期的に新しい生活の土台を築き直す、2012年以降へ向けた大きな底流の始まりとして考えられます。