こんにちは。ヒット習慣メーカーズの楠田です。
2023年も1か月を過ぎようとしていますが、いかがお過ごしでしょうか。
ここ数年続いていることではありますが、この1か月でもすでに世の中にSNSを通じた炎上ニュースを目にした方が多いかと思います。実際に、Googleトレンドで「炎上」を見ても、年々伸長しており、継続的に注目をされていることがわかりますよね。
様々な事象が炎上しやすい状況であることからか、世の中の潮目が少しずつ変わってきています。これまで、SNSやコミュニティは、オープンに情報を共有できることに価値があったと思うのですが、それが、少しずつクローズド化、内輪化してきているのです。そこで今回は、この現象を「コミュニティの内輪化」と名付けて、ご紹介していきたいと思います。
まずは、「SNSの裏アカウント」です。
こちらは、ヒット習慣予報 vol.244『裏アカ消費』 でも触れられていますが、オープンで発信しているSNSアカウントとは別に非公開の裏アカウントを持ち、そこで自分の仲間、内輪で共有したいことを発信。みんなにオープンに発信したいことは、オープンの本アカウントで共有する、というような使い方です。ただ、芸能人が、裏アカウントで発信したつもりが、本アカウントで共有してしまったことで、炎上してニュースになるなどということもあり、多少のリスクがあるかもしれません。
そこで、出てきているサービスが「内輪で楽しむリアルタイムSNSサービス」です。
どのようなサービスかというと、一日の中でランダムに通知が来て、そのお題に沿った内容を2分や3分などの制限時間以内に投稿する、というサービスです。その投稿が1日経つと消えますし、そもそも共有が自分たちで作った仲間グループだけ。なので、たとえば、中学生や高校生グループに同日通知が来てその場で撮影して、てんやわんやするのを楽しんだり、大学生グループだと、参加できる人だけ参加して、その様子を楽しんだりする、といった感じです。これは通常のSNSと異なり、いいね、などもないので受け手の反応を気にする必要もなく、内輪の盛り上がりをより楽しむことができるサービスのひとつとして、注目を集め始めているようです。
そして最後は、「旅先宿の一棟貸し」です。
これは、ここまでのSNSと少し毛色が異なる話なのですが、旅行先として、他の人と接触する可能性がある宿泊先などを選択するのではなく、自分たちだけで占拠できる一棟貸しが注目を集めているようです。民泊サービスなどの浸透も影響していると思いますが、一棟貸しにより、隣室の人から迷惑をかけられたり、逆に迷惑をかけたりすることも少なくなる。そんな理由からも、一棟貸しを通じて、自分たちだけの空間をより楽しむようになってきていると感じられます。なんなら最近は、旅の目的がその行き先の観光地ではなく、その一棟貸しになっていることもあり、ずっとその空間の中にとどまり、内輪だけで盛り上がることも楽しんでいるようです。
では、なぜこのような「コミュニティの内輪化」が注目を集め始めているのでしょうか。その理由は大きく2つあると考えています。1つ目は、冒頭にも少し触れていますが「炎上リスクに対する備え」です。これまでは、芸能人や著名人の炎上が中心でしたが、SNSの発達もあって、個人でも炎上リスクが高まってきています。それに対して、炎上したくないという気持ちも強くなり、そうならないように事前に対策しておきたい、という気持ちがあると感じます。そこで、内輪だけで盛り上がって、外に漏れないようにしようとしているのではないでしょうか。そして2つ目は、「リアリティの共有欲求」にあると思います。オープンにしているSNSだと、いいねが欲しくて、つい写真を加工したり、ハレの日だけ共有したり、外で人と会うときも、いつもより少し着飾ってしまったり、かっこつけてしまったりすることがよくあると思います。でも、本当の自分を知ってほしかったり、どうしようもないだらしない友達の姿を見たかったり、しょうもないことで笑いあいたい、という気持ちもあると思います。繕った世界ではなく、リアリティのある世界での共有を求めるからこそ、内輪で楽しめるようにしたいという思いがあるのではないでしょうか。その結果として、サービスも、どんどんシフトしているように感じます。
最後に、「コミュニティの内輪化」にどのような可能性があるか、新たなビジネスチャンスを少し考えてみました。
コミュニティの内輪化について調べていると、久しぶりに大学時代の友達と内輪ネタで盛り上がりたいな、と思ったので、この後連絡とってみようかな、と思います。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
2011年 博報堂に入社。
入社以来、マーケティング職に従事し、お得意先や世の中の課題と向き合う。基本、テレビっ子。ドラマと、阪神タイガースをこよなく愛し、阪神の勝ち負け次第で翌日の気分がちょっと違う虎吉。