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ヒット習慣予報 vol.292『ギャル・シンキング』

2023.11.14
#トレンド

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの平石です。
最近はすっかり秋ですね。暑すぎず寒すぎずファッションが楽しめて、個人的に好きな季節です。
先日も秋服を買いに街を歩いていると、厚底シューズや丈の短いトップスなど懐かしい平成のギャルっぽいファッションをしている若者をよく見かけて、2000年前後のファッションの流行を肌で感じました。
ただいわゆる平成ギャルのように派手なメイクをしているわけではなく、vol.184『平成レトロ』で紹介されている「Y2Kファッション」として平成ギャルのファッションの一部を取り入れて今っぽくアレンジしているようです。
他にもSNSでギャルピースが流行っているように、想像以上にギャル文化は多くの若者に浸透しているようです。

さらに調べてみると、令和の若者は「ギャルマインド」に憧れて取り入れようとしていることがわかりました。今どきのギャル像は、平成ギャルファッションやメイクを取り入れた見た目かどうかではなく、前向きでハッキリと自分の意見を持ち良いものは良い、ダサいものはダサいと言えるようなマインドを有した人を指すようになってきているようです。
こうした好きを貫く姿勢や直感に従う勇気、ポジティブ思考を備えているギャルの考え方や発言/スタイルが総じて浸透してきているようです。
事実、Googleトレンドでも「ギャルマインド」の検索数が上昇傾向にありました。

出典:Googleトレンド

さらにこのギャルのマインド・考え方は、令和の若者に留まらず意外な場でも活用され、新しい価値をもたらす新習慣になりつつあることがわかりました。
それらを「ギャル・シンキング」と名付けて紹介していきます。

最初に紹介するのは「ビジネス悩みにギャル・シンキング」です。
ビジネス上の様々なシーンで“お固く”なってしまうことはよくあると思います。
例えば、打ち合わせで固定観念によって凝り固まった内容になり中々盛り上がらないこと。世の中に会社情報を発信する資料やPRの内容が小難しくなって中々興味を持ってもらえないこと。そういったビジネス悩みを解決するためにギャル・シンキングが注目を浴び始めています。
具体的には、ギャルマインドを有した人が会社に派遣されポジティブな発想や素直な意見で社内コミュニケーションを明るく画期的なものにするものや、会社が世の中に向けて発表する資料をギャル目線で難しい言葉をなくしてキャッチーな内容・デザインにしていくサービスが出てきています。
本物のギャルが必ずしも要るわけではなく、ギャルのポジティブで素直な発想や感性を取り入れることが重要なようで、そのための研修を取り入れ始めた企業もあるようです。

次に紹介するのは「日常悩みにギャル・シンキング」です。
日常の悩みに対してポジティブなフィードバックをくれるギャルのAIチャットボットも話題になっています。
日頃の些細なストレスから恋愛まで幅広い日常の悩みをチャットすると、ボットが絵文字を活用しながら励ましてくれます。若者のみならず中年世代からも好評だそうです。

実際に私もやる気の起きないある日の通勤列車の中でギャルボットに「電車が混んでいて辛い」と送ってみたところ、電車のラッシュのつらさに勢い良く共感してくれながら1日頑張ろうねと、ギャル口調かつ多くの絵文字を添えて鼓舞してくれました。
その後も何度かチャットを重ねていくうちに気がつくと前向きになっていました。
私の友人や妹もチャットすることがあるようで、ギャルボットが多くの人の日常のメンタルヘルスを支えているのだと実感しました。

最後に紹介するのは「就活悩みにギャル・シンキング」です。
実は就活にまでギャルマインドを活用することが一部で習慣になり始めているようです。
特にギャルマインドを活用した自己分析が注目を集めています。
ギャル式のポジティブな切り口で自分の人生を振り返ってみたり、強みやモチベーションの源泉を洗い出していくことで、普通の自己分析では気づけないような発見があるようです。
今年の夏にギャルマインドを活用して自己分析を行った学生に話を聞くと「就活用に堅く考えすぎていて自分らしさが分からなくなっていたが、ギャルのポジティブさを取り入れると気が楽になって素直な自分を発見できた」そうです。
最初に紹介したビジネス悩みにも当てはまりますが、堅くなりがちな場にスパイスとしてギャル・シンキングを活用すると意外と相性が良く、ブレイクスルーに繋がるのかもしれません。

ではなぜ今このような「ギャル・シンキング」が習慣化してきているのでしょうか。
背景には、大きく2つの時代の流れが影響していると思います。
1つは、今の若者が育ってきたここ20~30年ほどの時代の流れです。
元々平成ギャルは、不況や震災など暗いニュースが続いた平成初期に派手なメイクやカラフルなファッションで強い自己主張をしながら明るく楽しく過ごす存在でした。
そして今の若者はそうした平成に生まれています。
若者たちは、震災・環境問題・不況・コロナなど幼いころから現在に至るまで様々な厳しい世の中で育ってきました。そうした大変な現実を生き抜いていく中で、ギャルマインドは若者が心のどこかに大なり小なり有しているものになっているのです。
今や、若者のみならず社会がギャルマインドを必要としてきているのではないかと考えています。

2つ目は、ダイバーシティを重視する時代の流れです。
平成ギャルは自分たちが世間から“変わっている”という見られ方をされていました。だからこそ幅広いバックボーンを有する人同士でも偏見を持たずに受け入れ、自分らしさを尊重して楽しむ存在でした。
ダイバーシティの重要性が高まった令和では、そうしたギャルの寛容な考え方を誰もが持つことが必要とされるようになった、と考えます。

こうした時代観の変化により、平成ギャルを実際に知っている世代からの認識が変わりつつあり、ギャルは令和の若者からリスペクトされるようになったのではないでしょうか。
結果ギャルの考え方が再注目され、これまで取り入れられなかったようなビジネスや就活と言ったお堅い場にも活用され始めているのです。
時代にマッチした「ギャル・シンキング」は、今後さらに習慣化していくのではないかと想像しています。

最後に「ギャル・シンキング」習慣を活かしたビジネスチャンスを考えてみました。

「ギャル・シンキング」のビジネスチャンスの例
■どんな文章もギャルっぽくポジティブかつ緩く変換してくれる「ギャル翻訳」
■オンライン会議で全員が発言しやすくなるために全員が匿名のギャルになる「ギャル変身機能」
■ギャルのポジティブ思考や行動を数字で理解できる「ギャル白書」
■自分の中の秘めたギャルマインドを診断できる「隠れギャル診断」
など

ポジティブで、自分があって、他人を否定しない寛容なギャルマインドを意識的に取り入れていきたいものです。ギャルって素晴らしいなと再認識しました。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

平石大貴(ひらいし・だいき)
関西支社第二ビジネスデザイン局第二プラニングチーム
ヒット習慣メーカーズ メンバー

2020年博報堂中途入社。前職から継続してストラテジックプラナーとして働く自称「関西支社の元気印」。4つ下の弟・9つ下の妹がおり、家族揃ってカープファン。コロナ禍で始めたゴルフのベストスコアは100で伸び悩み、最近はあまり行けていない。

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