こんにちは。ヒット習慣メーカーズの馬場です。
10月になり、徐々に秋めいた、過ごしやすい日も増えてきました。個人的には、秋というと「スポーツの秋」と「行楽の秋」というフレーズが思い浮かびます。ご存知の方も多いかも知れませんが、「スポーツの秋」は、1964年の東京オリンピック以降定着したと言われています。オリンピックのような大きなイベントと組み合わせることで、ヒット習慣を世の中に根付かせるという仕掛けは、ヒット習慣メーカーズでもぜひ実践してみたいと思います。
さて、今回は「スポーツ」ではなく「行楽」に関する新習慣である「旅先こもりきり」を取り上げます。
「旅先こもりきり」は、“周辺観光のために”宿に泊まるのではなく、“宿に泊まること自体”を目的とした旅行の形を指します。宿の中だけで旅の目的となる体験が完結するため、旅先では外出せず宿にこもりきって、その目的に没頭するスタイルの旅が人気を集めています。
実は、旅先で宿にこもるスタイル自体は、2000年代から旅行業界で「おこもり宿」や「おこもりステイ」として提唱されていましたが、最近になって人気が出てきているようです。googleトレンドで「おこもり」の検索数を見ても、2017年半ばごろから右肩上がりになっているのが分かります。
この「旅先こもりきり」には、いくつかの方向性があります。
例えば、宿自体が古民家を改築した物件であるといったような「文化的体験」を目的にしたパターン。これは既に、実践された方も多いかもしれません。神社やお寺に宿泊する“宿坊”もこの方向に近いかと思います。
ほかにも、宿をコミュニケーションの場として捉えるパターン。訪日外国人が多く訪れる宿では、広いラウンジが併設されており、宿泊客と日本人との交流の場を提供している例が増えています。中には、DJホールを併設し、週末に宿泊客以外も多くの人が集まるイベントを開催することで、宿泊客にとってより広い人との交流の場を提供している宿もあります。
さらに、宿にアトラクション性を求めるパターン。とあるテーマパークがアトラクション内に、球形の水上ホテルをオープンし話題になっていましたが、単体でもエンターテインメントとして成立する宿を求める人も今後増えてくるのではないかと思います。
いくつかパターンはありますが、いずれも生活者が本質的に旅行に求めていた“体験” が、わざわざ外出せずとも宿で完結できるため、いわば合宿のように、“体験”に没頭している構図になっていると考えています。
なぜ「旅先こもりきり」が増えているのかについても頭を巡らせてみました。
「コト消費」の増加に伴い、元来代表的な「コト消費」である旅行においても、これまで以上に「旅先でどんな体験をするか」が重視されるようになってきてるのではないでしょうか。その結果、旅行スタイルの一つとして明確な目的を設定した、自分ならではの旅を求める人もまた増え、宿にこもりきって目的に没頭する旅のスタイルが広がったのではないかと考えています。
また、訪日外国人も含めると、日本の観光客は増加の一途をたどっています。各観光地が賑わうのは素晴らしいことですが、私自身はあまりの人の多さにゆっくりと観光を楽しめないばかりか、ただ疲れがたまってしまった、という経験もあります。観光客が増加する一方、有名観光地の数自体は限られているため、どこも人が溢れてしまう。そんな状況で、より多くの人が旅行を満喫するためにも、宿自身が観光地化することで宿泊客だけの限られた人数で観光を楽しめる、そんなスタイルが人気を集めているのではないでしょうか。
最後に、「旅先ひきこもり」のビジネスチャンスも考えてみました。
私自身、今度某有名キャラクターをテーマにしたコンセプトホテルに宿泊する予定ですが、チェックインからチェックアウトまでホテルから出ずに世界に浸るつもりでいます。
皆さんも、新しい旅のスタイルを楽しんでみてはいかがでしょうか?
2016年 博報堂に入社。
入社以来、データマーケティングに従事。業務で培った知見を活かし、新たな習慣を生み出すべくヒット習慣メーカーズに参画。
この時期は、秋の紅葉巡り、冬の温泉旅館の旅行計画に忙しい。
今年は、秋・冬ともに旅先引きこもり型の旅行を企てられないか鋭意模索中。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。