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ヒット習慣予報 vol.80 『アクティブ帰宅部』

2019.07.16
#トレンド

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの濱谷です。
7月も3週目に差し掛かり、小学生や中学生、高校生はもうすぐ夏休みですね。以前も書いたように、僕は高校生と中学生の従兄弟がいるのですが、2人が1ヶ月以上の夏休みに入ると思うと羨ましい…!社会人の夏休みって、短いですよね。

そんな今週のテーマは、「アクティブ帰宅部」です。中学生のスポーツと言えば、部活動が想起されますが、部活動以外にも、様々な場所でスポーツを楽しむ習慣です。

まず、ジムに通う中学生が話題になっており、SNS上で、「部活動を辞めて、楽しくジム通いをしている」と投稿した母親に対して、2万以上のいいね!がついています。このお母さんのインタビュー記事によると、中学生の息子が、部活動で先輩との人間関係に悩み、土日も練習がつまって勉強もできない状態になってしまったので、部活動を退部。ジムに通い始めると、安全だし、周囲も良い人で、好きなタイミングで運動できるので、元気が戻ってきたようです。上記の投稿へのコメントを見てみると、「部活動を否定するわけではないが、いろんな選択肢があるのはいいことだと思う」や「楽しく体を動かせて有難い」、「希望が持てました」など賛同の声が多数みられました。部活動以外にスポーツができる場所を探している人がこんなにも多いことが意外でした。

続いて、地域でのスポーツです。最近、中学生が、地域住民とスポーツする動きが出ています。市や町の体育館や、学校の体育館を借りて、地元の小中学生や地域住民が集まり、みんなでバレーボールや卓球、バドミントンなどのスポーツを楽しんでいるようです。その受け皿として、文部科学省(スポーツ庁)も「総合型地域スポーツクラブ」という、身近な地域でスポ-ツに親しむことのできる新しいタイプのスポーツクラブの設置を推進しています。
地域でスポーツをしている人は、部活動のような勝利至上主義でなくて良いことや、学校の友達関係のしがらみなく地域住民と交流しながら、自分のペースでスポーツができることに魅力を感じているようです。さらには、複数のスポーツを楽しめる、という声もありました。確かに、部活動は単一スポーツになってしまうことが多いですが、複数のスポーツをしたいというニーズは大きそうですね。

最後に、中学生が親と一緒にスポーツクラブに通ったり、スポーツ大会に出たりすることも増えています。小学生以下の子どもが親と一緒にスポーツをすることはたくさんあると思いますが、僕が中学生の頃は、親と一緒にスポーツ大会に出るって、なんか恥ずかしくて出来なかった記憶があります。マラソン大会に出たりテニスクラブに一緒に通ったりしている人のコメントを見ると、「親子で一緒にできて嬉しい」などポジティブな投稿に溢れていました。

博報堂生活総研の「こども20年変化」調査結果では、部屋に親が入ってくるのを嫌がらなくなったり、家族に言っていない秘密がなくなったりと、”どんどん近づく親子の距離”が1つのトレンドとして発表されています。あと、 LINEグループを作って、常にやり取りをしている親子も多いですよね。

小中学生の意識変化

出典)博報堂生活総研「こども20年変化」(調査対象:小学4年生~中学2年生、2007年は小学5年生~中学3年生)

このように、親との距離が近づいていることで、親と一緒にスポーツをすることを恥ずかしがらなく/嫌がらなくなっていると思われます。

僕は中学・高校と充実した運動部生活を過ごせたな、と思っているので、アンチ部活動派ではないのですが、部活動以外にスポーツをする選択肢が増えるのは良いなと思いました。

では、なぜ「アクティブ帰宅部」習慣が増えているのでしょうか。
まずは、部活動に対して、辛いと思っている人が、一定数いることが挙げられます。中学生&部活動と一緒に投稿されているワードを見ると、「(練習日や決まりが)多い」、や「忙しい」といったワードが上位に挙がっています。

「中学生&部活動」と同時に投稿されているワード(形容詞)ランキング

出典)博報堂TopicFinder

次に、「自分らしく生きること」を尊重する文化が出てきていることも影響していると考えます。今は、LGBTに対する偏見がなくなっていたり、男性でも家事/育児を重視したり、働き方も個人の志向を尊重するようになっていたりと、従来の慣習やルールにとらわれず、自分の意思に沿って生きる風潮になってきています。このような中で、中学生自身も、それを見守る親世代も、部活動という慣習やルールにとらわれずに、自分のやりたいようにスポーツをすることを良しとするようになっていると考えます。

さて、今までのヒット習慣予報と同様に、「アクティブ帰宅部」にも色々なビジネスチャンスがあると考えます。

◎「アクティブ帰宅部」のビジネスチャンスの例
■ジムが、中学生を対象にした、平日夕方割を設定したり、回数券を作る
■親子限定のダブルス大会(テニスや卓球など)を開催する
■自宅で、子どもだけでも簡単にできるトレーニングキットを開発する
など。

部活外スポーツ習慣が拡がる中で、行き過ぎた指導や不要な慣習がなくなるなど、部活動の在り方も今後変わってくるのかもしれないですね。いずれにせよ、部活動でも部活外スポーツでも、スポーツを楽しむ人がもっと増えてほしいと思いました。

濱谷 健史(はまたに・けんじ)
第三プラニング局
ヒット習慣メーカーズ メンバー

2010年 シンクタンクに入社し、2014年 博報堂に中途入社。
ヒット商品やヒット習慣を作りたいと願いつつ、日々マーケティング/コミュニケーション立案に取り組む。2000年代のドラマ好きで、おすすめは「僕の生きる道」と「華麗なる一族」。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

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