こんにちは。ヒット習慣メーカーズの江です。
春節は中国で最も大切で伝統的な祝日。毎年延べ30億人の大移動とも言われるほど帰省をする人や海外旅行に出かける人が増える時期ですが、今年はあるコミュニケーションアプリ上でも新型肺炎関連の話題一色。不要不急な外出を控える中、いつも親戚や友人皆でワイワイ過ごしているのに、各々自分と向き合う時間が意外な形で訪れました。あるコミュニケーションアプリ上で親戚や友人知人らの投稿内容をチェックしていると、今までにないライフスタイルを各自暗中模索する様子がうかがえます。
さて、今回のテーマとして取り上げたいのは消費の「小衆イズム」です。
中国では、「大衆」の対義語として、「小衆」という言葉がよく使われています。なぜ「小衆」という言葉に着目したかというと、帰省や出張などの機会で年に2回以上のペースで中国に帰っているのですが、ここ数年、お店やECサイトで聞いたことのない「小衆品牌(マイクロブランド)」を目にすることが急増したなと実感したのがきっかけです。中国の新世代の生活者は、もはやただ単に高価な高級ブランドや標準化された大衆ブランドだけをこぞって買い求めることは少なくなり、適正価格でしかも自分らしさを体現できる商品を選ぶ時代に向かっているのではないかと考えます。そんな「小衆品牌」を求める生き方、考え方を「小衆イズム」と名付けました。
ここでBaidu指数の推移をみますと、「小衆品牌」への関心が年々高まっていることが読み取れます。
ではなぜ、中国において「小衆品牌」の台頭とともに「小衆イズム」を持つ人が増えてきたのでしょうか?その理由を考えてみました。
1つ目の理由は若者の自己表現方法の多様化です。中国では、「小衆品牌」を好む若者があれこれ個性を表現したいというニーズに対して、人気のショートビデオコミュニティアプリやソーシャルECアプリなど、一人ひとりのために、多種多様な舞台が用意されています。彼らは周りから一目置かれる存在になりたいという願望があり、それが「小衆品牌」の躍進をもたらした要因のひとつです。
2つ目の理由はKOL(Key Opinion Leader)の「小衆品牌」化です。今はよりストーリーのある商品が選ばれやすい時代です。共感できるストーリーがあれば、商品は自然に売れていきます。SNSで若者に絶大な影響力を持つKOLが多数いる中国では、ストーリーを語るための最良の手段は、KOL自身がブランドになることです。化粧品のカテゴリーにおいては、海外の高級ブランドが依然として人気が高いのですが、KOLの影響を受けやすい若年層ほど、国内外問わず知名度の低い「小衆品牌」でも信頼するKOLに紹介された商品であれば買う人が多いようです。
最後に、「小衆イズム」のビジネスチャンスを考えてみました。
現在、新型肺炎の早期終息を願って毎日を過ごしています。大衆が一致団結して災難に立ち向かえば、きっと小衆が輝いて活力に満ちあふれる中国の元の姿に戻る日がそう遠くないと強く信じています。
2017 年博報堂に中途入社。
近いようで遠い中国のヒット習慣から仕事のヒントを探す日々。
中国で一番辛いと言われる故郷の湖南料理をこよなく愛する、生粋の「辛党」。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。