こんにちは。ヒット習慣メーカーズの村山です。
毎回このコラムの執筆の順番が回ってくることで時間の経過のはやさを感じることが習慣化してきましたが、気づいたらもう11月も中盤、、あと1ヶ月ちょっとで2020年が終わる、、という衝撃。今年も残すところ1ヶ月強、今年33歳なのでゾロ目の年の年末(謎の節目)を迎えることに少し感慨深さを感じる今日この頃です。
謎の節目の年末なので自分の過去を振り返ってみたのですが、私は建築学科を卒業してこの会社に入社しており、空き家の活用について卒業論文を書いたことを思い出しました。当時からアーティスト・イン・レジデンスという様々な創作活動をするアーティストの方々に空き家を貸し出し街の活性化を行う取り組みが活発に行われていたのですが、2020年現在コロナ禍を受けて再び地方の「遊休資産」である空き家の活用に注目が集まっているようです。そんな、社会の変化を受けて眠っている企業や街の「休んでいる資産」をちゃんと「働く資産」として利活用していく新しい潮流が今回のテーマ「遊働資産」です。「遊働資産」にはもちろん、空き家だけではなく様々な事例が存在します。当たり前が当たり前でなくなる社会において、新しいものを作り出すのではなく、あえて既にある資産を改めて利活用していくことに可能性がひろがっているのではないでしょうか。
「空き家」の検索数推移
まずGoogleトレンドで「空き家」というワードで検索してみたのですが緩やかに検索数が上昇していることがわかります。実際に空き家活用サイトの閲覧数も伸びているようで、買い手が現れなかった空き家の買い手が見つかるなどの長年動きが鈍かった市場に動きが見られ始めています。理由としてはヒット習慣予報vol.133「職住両得」でも述べられていたようにリモートワーク化が加速したこともありますし、地方での密を避けた生活への需要や都心一極集中の解消に向けたワーケーションの推進もあげられるでしょう。さらに自治体による支援も充実してきているだけでなく、自治体専用のアプリやウェブサイトも登場し、より便利に気軽に検索/検討できる環境も整ってきていることも追い風となっているようです。移住を考える人のキッカケとして地元の過ごし方を教えてくれる「農家民宿」にも注目が集まっています。都心で暮らしてきた人々が何も無いと思っていた地方ならではの遊びや楽しみ方を、まずは民宿に宿泊することで事前に体験し理解を深める拠点として機能しているようです。
空き家のような地方の遊休資産だけでなく、もっと遊び心のある「遊働資産」を生み出す動きもみられています。コロナ禍で入場者数が減ってしまった地方の遊園地です。資金繰りが困難になってしまい施設の目玉となるような新しいコンテンツの導入も難しい中で、逆にお金をかけないアイデアで“望まずに休んでしまった資産”を復活させたようです。例えばメリーゴーランドに扇風機を設置してあたかも爆速で進んでいるような錯覚を引き起こす体験だったり、観覧車を真っ暗にしていつもと違う感覚を楽しんでもらう体験だったりと、どれもアイデアに富んでいて遊び心にあふれるアップデートがされており、客足も徐々にもどってきているようです。
眠っている施設を遊び心のある「遊働資産」にした事例だと、2年ほど前にオープンした廃校の小学校を水族館として復活させた事例も印象的でした。電車も高速道路も通らない過疎の街が、プールや跳び箱のような小学校の施設をそのまま活かしながら様々な生物を展示する一風かわった水族館によって見事に集客に成功した事例は、とても素晴らしいアイデアでした。最近のコロナ禍でも、同様の見事なアイデアを発揮した観光バスの事例がありました。コロナ禍で稼働していなかった観光バス60台をつかって巨大迷路を使った事例です。こどもから大人まで様々な人たちが普段はできないバスの中をゴール目指して進んでいく体験を楽しんだようで、まさに手元で休んでいる資産をそのままにするのではなくアイデアで「働く資産」として復活させた好事例だと思います。
ここまでいくつか事例をご紹介してきましたが、「遊動資産」の潮流が広がっている理由を考えてみると、最も大きいのはやはりコロナ禍における様々な制限だと思います。何不自由なく通常の生活が送れていた以前と違う「不自由」が、逆に足元に隠れて見えなかった資産への気付きを促し新しい価値を与えるキッカケになったのだと思います。なんでも検索できる時代に、検索して知ったつもりになっていた「遊休資産」にこそ次の時代の豊かさをつくる価値が潜んでいるのかもしれません。
最後に、「遊働資産」のビジネスチャンスについて、少し考えてみたいと思います。
僕もなかなか物が捨てられない性格で家が常にごちゃごちゃなのですが、なにか「遊働資産」になるものがないか探してみようと思います。
PR戦略局から、19年に統合プラニング局に異動。車からお菓子に至るまで様々なクライアントの情報戦略、企画立案に携わる。毎日きまった街のきまった飲み屋に入り浸っていた生活を経て、知らない街の知らない店に飲みに行きたいなとリサーチ活動を実施中。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。