今回は、日本ではまだあまり馴染みのないストリーミングサービスの形態であるFASTについて前編・後編に分けて取り上げます。
FAST(Free Ad-Supported Streaming TV)は無料広告付きストリーミングサービスで、CATVに加入してテレビを視聴するスタイルから、CATVを解約し(コードカッティング)ストリーミングでコンテンツを視聴するスタイルが増えてきている米国で最近注目されています。これまでストリーミングといえばNetflixを筆頭にSVODが主流でしたが、近年のサービスの多様化、そして人々の出費に対する意識の変化により、SVODでも多少の広告が入るAVODをハイブリッドで提供したり(昨年Netflixが開始した広告付きプランなど)、FASTのように完全に無料で広告付きで提供するサービスなどが出てきています。
改めてストリーミングサービスのタイプSVODとAVOD、FASTの関係を整理すると、
‐SVOD(Subscription Video On Demand):契約して視聴する定額制動画配信サービス。有料で基本的に広告は入らない。
※SVODの多くは広告付きの安価なプランをハイブリッドで展開している。
‐AVOD(Advertising Video On Demand):契約して視聴する広告付き動画配信サービス。
‐FAST(Free Ad Supported TV):契約なしで視聴する広告付き動画配信サービス。
となります。
FASTは、ニュース(ナショナル、ローカル)やオリジナルコンテンツもありますが、ラインアップの多くは少し昔のコンテンツ(テレビシリーズや映画)をライセンスし数多く取り揃え、タイムテーブル形式で提供しています。視聴者はSVODのように見たいコンテンツを探して視聴するという行為をすることなく、従来のテレビ視聴同様に流れているコンテンツを視聴することができます。テレビ画面上でタイムテーブルが確認できるといった馴染みのあるインターフェースや、多数のチャンネルから成るサービスとなっている点が特徴で、CATVに加入していない、あるいは最小限のSVODの契約しかしていない視聴者を中心にCATVの代わりとして受け入れられています。「FAST is new cable」(FASTは新しいCATV)と言われることもあります。
このFASTに参入しているプレーヤーは、ネットワークやスマートTV事業者、その他プレーヤーと多様です。
次回「FAST(後編)」では、それぞれの実際のサービスについてお話します。

