木村
「HAKUHODO MAMA UNIV.」が発足した背景として、一つはママ社員数が増加し続けていることがあります。現状では女性社員の3分の1がママ社員で、ここ数年の復職率はほぼ100%です。もう一つは、復職の形が多様化していること。かつてと比べ価値観や家庭環境などの背景が変化しており、多様な両立の仕方が求められてきている。そうしたニーズに対していかにスムーズな復職をお手伝いできるかというテーマがありました。
伊藤
これまでは4月の復職を目前にした3月に実施していたのですが、今年は10月での実施としました。(当初は8月での実施を予定していたが、台風の接近により、参加者の安全を最優先に延期)
というのも、一般的に保活のピークは10月前後に当たるため、保育園まわりの情報を提供し、復職に対するイメージを持っていただくにはその頃が適切だろうと判断したからです。もともと人事局労務部の方にも、「保活」について教えてほしいという問い合わせが結構来ていたんですが、我々も保活の専門家ではないのでお応えできないことが多かった。そこで、昨年10月から保育サービス会社のポピンズさんに、育児コンシェルジュという相談窓口としてご協力いただくようになり、さらに当イベントに合わせて「保活セミナー」もお願いしました。
木村
10月に実施した「HAKUHODO MAMA UNIV.」では、まず、すでに復職された方に復職後の働き方について紹介していただきました。その後、参加者への事前アンケートをもとに選んだ関心の高いテーマについて、先輩ママ社員とざっくばらんに話せる時間を設け、続いて「保活セミナー」、関連制度やサポート施策の紹介を行いました。全体でおおよそ3時間のプログラムですが、隣室に託児スペースも設置してあったので、集中して参加いただけた印象があります。託児サービスをトライアル的に活用するいい機会にもなったようです。
伊藤
こうしたイベントを通して、博報堂/博報堂DYメディアパートナーズの両立支援体制についてまずは知っていただければと思っています。特に近年拡充されてきた両立支援策はたくさんあって、たとえば病児保育料やベビーシッター利用料のサポート、2018年4月に新設された社内保育園の「はなさかす保育園」、時短制度やテレワークなどの施策もある。できるだけ早く仕事を切り上げたいという人も、育休前と同じように働きたい方も、自分のステージに合わせた働き方を選択できるし、会社としてもそれをしっかり支援するよ、ということをぜひ伝えていきたいと思っています。
児玉
私は出産したのが2005年なのですが、当時、復職後にそれまでいたストラテジックプラニング職に戻れるかどうかもわからず、育休中は会社との接点がぷっつりと切れてしまい、不安で仕方ありませんでしたね。当時、会社がどういったサポートをしてくれるかがわかればきっと安心できたでしょうし、こうしたイベントを通して育休中に会社に来るきっかけがあれば、復職に向けての心の準備もしやすかっただろうなと思います。私自身は復職後「博報堂こそだて家族研究所」のメンバーとして、ほかのママ社員の方たちと情報交換できる環境にいられたことで、精神的にすごく助けられました。そういう意味でも「HAKUHODO MAMA UNIV.」の役割は大きいと思います。「こういう場合はどうしていましたか?」と気軽に聞ける社内のママ友の存在――保育園のママ友とは違い、会社の環境についてよくわかったうえでのアドバイスをくれる存在というのは、本当に心強いものです。「HAKUHODO MAMA UNIV.」が、これからずっと続く子育てのなかで、ぶつかっていく壁を乗り越える同士をつくる場にもなればいいと思いますね。
伊藤
私は出産後、2017年3月に実際にこの「HAKUHODO MAMA UNIV.」に参加しました。自宅が会社から遠かったこともあり、正直最初は面倒だと思っていたんですが(苦笑)、参加してみたらすごく楽しくて。孤独感をおぼえがちな育休中に大人と他愛のないおしゃべりができて嬉しかったですし、ベビーシッターの利用体験ができたことが大きかった。安心して子どもを預けられるということがわかったし、何かあったときには利用してみようと思えました。偶然にも復職先が労務部になったわけですが、子どもが頻繁に熱を出したりして最初は苦労していた両立も、さまざまな施策を活用していく中で少しずつうまく回せるようになっていきました。そうした経験もふまえ、いまは両立支援担当という立場として、皆さんにとにかくさまざまな方法、支援策について伝えていきたいという気持ちでいます。
狗飼
僕自身は今年4月から人事局労務部に異動して、このプロジェクトに関わるようになりました。現在二十歳と十八歳になる子どもたちが幼少のときは、保活なんていう言葉は存在しませんでしたから、正直いまの状況に驚いています。ただ、「人が資産」「粒ぞろいより粒違い」を謳っている博報堂/博報堂DYメディアパートナーズの人事としては、そんな社員の皆さんがキラキラと、生き生きと働ける環境を大切にしないといけない。本イベントのアンケートに、「他社の人に話したら“支援が手厚い会社だね”と驚かれた」といったコメントもありましたが、そうしたことから博報堂/博報堂DYメディアパートナーズで働くモチベーションを得ていただくことも大事だと思っています。
仕事の考え方に家庭や育児の価値観が掛け合わさることによって、より多様な視点が生まれることになります。ママだけではなく、ママの周辺にいる人たちも、そうした視点を共有していけるようになればと思いますね。そうすることで、会社としてもすごく強くなれるんじゃないかと考えています。
児玉
現在はHAKUHODO MAMA UNIV.という名称ではありますが、今後は男性の育休取得率も上がってくることも考えられるので、男性も参加しやすいような施策にしていこうという動きもあります。育児は女性だけの話ではありませんからね。
木村
本当にそうですね。
今後の方針についてはまだ探っているところですが、それぞれの家庭で、それぞれの家庭環境に応じた復職のイメージをじっくりと考えるような場をつくれないかなと考えています。できればパートナーの方と一緒に。
児玉
家庭内には見えない家事や育児が山積していますが、その状況は家庭によって全く異なります。これをしっかりと可視化し、パートナーと共有をしながら、共に乗り越えていく道筋を立てるお手伝いをすることで、それぞれの家庭ごとの「両立」――多様な働き方を支援できればと考えています。