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~銭湯を北海道の文化発信基地に~
「ふろカル」開校秘話 

2019.05.31
#地域創生#新ど研
新ど研がまちの銭湯を教室にしたカルチャースクール「ふろカル」を開校し、2019年4月7日に第一回を開催しました。
今回は発起人である北海道博報堂の滝田陽介と永井大地、「札幌銭湯」プロジェクト代表であり、札幌にある銭湯「福の湯」を経営される小西崇聖さんに、「ふろカル」への思い、今後の展望などについて語ってもらう銭湯対談を行いました。

「ふろカル」プロジェクト発足のきっかけ

滝田
新ど研(詳しくはこちら)でプロジェクトのクリエイティブディレクションや企画を担当している滝田です。僕は、マーケティング担当ではないので、定量的な調査ではなく、実際に現場に赴いて人の話を聞いてみたり、取材してみたりと、「フィールドワーク」的な活動に注力しています。その一環で、例えば銭湯を調べていたときに、今回ご一緒させていただいた小西さんとの出会いがあって、そこから「ふろカル」が始まっている、というような形です。
僕はもともと近所の銭湯によく行っていて、来ている人は高齢者が多いなという印象がありました。でも、最近は僕のようなもう少し若い世代も行ってるんじゃないかなと。銭湯に関する取り組みをリサーチしていたところ、東京の銭湯では結構活発に情報発信やイベントなどが行われていることがわかりました。北海道ではまだあまり行われておらず、数少ない銭湯に関する取り組みの中で目立っていたのが、小西さんがやられている「札幌銭湯」というプロジェクトでした。まったく面識がなかったので、まずはコンタクトを取らせていただいたというのがきっかけです。

―札幌銭湯(http://sapporosento.com/)をどのような目的で始められたのでしょうか?

小西
銭湯の数が右肩下がりになってきている中で、銭湯は個人経営の方が多く、銭湯側からのお客さんへの情報発信がとても少ないのが現状です。私の実家が銭湯というのがあったのと、事業としてウェブサイトの制作会社も経営していることから、何かできないかと考え、スタートさせたのが「札幌銭湯」です。札幌にある様々な銭湯を取材したりして紹介しています。

先ほど、滝田さんからここ数年起こっている銭湯ブームについてお話がありましたが、東京や京都をはじめとして銭湯関連の話題がぽこぽこっと花火が上がっていたので、札幌でも盛り上げたいと思ったのも、「札幌銭湯」を始めたきっかけの一つです。

滝田
小西さんへコンタクトを取らせていただいた時点ではまだフィールドワークの段階で、銭湯を運営される方の現場の声をまず伺うところから始めました。銭湯は大切な地域の資産なので、一緒に何かやりましょうと話がまとまり、そこから企画を進めました。

―ふろカルは、主に、滝田さんと永井さんで企画されたのでしょうか?

滝田
そうですね。僕と永井は、世代が少し違ったりするので、お互いに意見を出し合いつつやっていきました。

永井
新ど研でマーケティングを担当している永井です。
僕は、元々北海道の都市部ではないところに住んでいたので、周りに銭湯がなかったんです。大学で京都に住むことになってから行くようになりました。小西さんからお話があったように、やはり銭湯カルチャーは東京と京都がすごく盛んで、面白いなと感じていました。音楽やファッションなども1970~90年代のものが見直されて、若者の間で新たな解釈がされリバイバルしていると思うんですけど、銭湯もその一つではあるのかなと思います。昭和的な文化が体感できますし、個人経営されているまちの銭湯ならではの良さがあるなあと感じていました。京都に住んでいた時に、そんな銭湯ブームを体感していたので、今回、滝田から銭湯の話をされて、札幌でもすごくポテンシャルがあるなと感じ、是非やりたいと思いました。

滝田
「ふろカル」は、簡単に言えば、銭湯のロビーや脱衣所を教室にしたカルチャースクールです。講義内容や講師選定は、新ど研が行っていて、僕や永井、新ど研メンバーが関心のある分野で企画をしています。札幌オオドオリ大学の皆様には、主に集客やイベント運営に関して協力いただいています。

近所を楽しくして、生活をより豊かなものに。

―すでに各地の銭湯では、例えば音楽イベントなど様々な形でイベント開催されているかと思いますが、「ふろカル」は、銭湯を「カルチャースクール」という学びの場所にされています。そこには、どのような想いがあるのでしょうか。

滝田
もともと僕らには、北海道は、非日常ではなく、日常をもう少し楽しくできるだろう、という想いがありました。一番身近な近所を楽しくしていくと、きっと生活そのものがより豊かになっていくんじゃないかな、という考えがあったんです。近所の中で情報発信のハブになる役割といったら、やっぱり銭湯や学校ということになると思うんですけど、銭湯は、元来地域の人々のコミュニケーションの場として活用されてきた場なので、そこに学びの要素を組み合わせたら、より豊かなものになっていくんじゃないのかなと考えて、カルチャースクールを開催する形にたどりつきました。メインターゲットの一つは、これからの銭湯を支えていく若い世代です。

小西
滝田さんがおっしゃる通り、銭湯はやっぱり地域コミュニティーの交流の場みたいな存在かなと思っていたので、そこが教室になるというのは、僕もスムーズにお話をお伺いすることができました。何かやりたいなっていうのは札幌銭湯でも常々思っていたんですけど、なかなか自分たちだけではできなかった。ブレーンとなる方々も連れてきていただいて、そういった点でもとてもうれしかったですね。

―4月7日に第一回を開催されました。テーマは「じわじわはじめる、ものづくり」。なぜこのテーマからはじめられたのでしょうか?

滝田
第一回目は、やっぱり北海道らしい要素のあることをと思っていたんです。第一回の講師のARAMAKIさんは、荒巻鮭の空き箱を再利用してプロダクトを作っている宮大工さんと楽器職人さんのユニットです。新ど研の取材で知り合ったのですが、北海道の産品を使って、新しい価値を生み出しているということで、第一回のふろカルに是非きてもらいたいと考えました。
講義では、ARAMAKIというユニットの成り立ちや、プロダクトの製作過程などをお話いただいたり、作品を展示して、触れながら受講者の方とセッションする、といったことを行いました。

永井
第一回を開催してみて、やはり、昨今の銭湯ブームに関心があったり、カルチャー好きな方々が集まったので、来場した方々から「今度こういうのやりませんか」というようなご提案も多数いただきました。一般のお客様20人と新ど研メンバーを合わせて30人ほどの規模で開催したのですが、情報感度が高く、すでに何かを企てている方が沢山来てくださったという印象です。次回以降の講師の方を紹介いただいたりもして、やはりコミュニティーを作るという意味で、「ふろカル」は役割を果たせているのかなと感じられました。

滝田
講義が終わった後に、お風呂では男女は分かれてしまいますが、全員で一番風呂に入るということにしているので、そこでも交流が生まれますね。実際に講師の方とコミュニケーションを取ってもらえるということと、講義後から開店してもらうので、そこからいつも銭湯に通ってきている地元の方々との交流なんかも生まれます。

―多くのイベントは最後まで参加者のみでクローズドに行われることもありますが、途中から一般のお客さんを入れよう、というのはどのような意図があるのでしょうか。

滝田
銭湯そのもののあり方として、やはり地域に開かれた場所であるべきだと思うので、ふろカルをきっかけに銭湯に来ていただいた方も実際のリアルな銭湯の空気感も感じていただけるし、まさにコミュニケーションが生まれる場として機能させよう、という意味合いで開けていただくことにしました。

小西
銭湯の常連のお客さんたちにも、今回は何をやってたの?と聞いてくださる方もいましたね。入っていくとおそらくいつもの銭湯の雰囲気と違うんでしょうね。貸し切りで開催すると会の雰囲気のままいくんでしょうけど、さっき言ったように日常の銭湯の雰囲気っていうのは常連さん、地元のお客さんがくることで出てくるので。まだ銭湯の使い方に不慣れな受講者の方は常連さんからルールを指導してもらったり、色々とあったようです(笑)。そこがまた一つの面白さなのかなと思っています。

―今後のふろカルの展望を教えてください。

滝田
北海道の他のエリアでも、それぞれのエリアの特色を生かした講義などを増やしていきたいですね。それぞれの地域に根付いたものや学びみたいなのがもっと生まれてくるだろうなと思いますし、札幌だけでなく、北海道全体で広げていけたらいいなとは思っていますね。
夏休みの自由研究やビジネスパーソン向けの地域活性に関するセッションみたいなことも検討しています。ターゲットを限定しすぎず、近所で手軽に学びが得られる場になっていけばいいなと思っています。

小西
やはり今銭湯に来ていない世代の方々に少しでも目を向けていただきたいなということがひとつあります。また、銭湯の経営者が高齢化しており、なかなか新しいことをはじめるには腰が重いと感じられている人も多いのが現状です。こうした色々な事業をやっていく中で、楽しいことをやっていて賑わっていると、この業界も明るくなってきたなという空気感が出てきて、札幌の他の銭湯さんや他の地域の銭湯さんも、皆さん元気を出して前向きに銭湯をやっていこうというような雰囲気づくりができていけたらうれしいなと思っています。

永井
今、SNSやインターネットが発達して、ウェブ上で人とのコミュニケーションやコミュニティーを作るのが簡単になっています。でもやっぱり銭湯にくると、人のぬくもりとか懐かしさみたいなものも感じられますし、密度の濃いコミュニティーが生まれる感覚がありますね。東京や関西に比べると、北海道の若者は、あまり新しい体験に積極的ではない人が多いと思うんですよね。「ふろカル」が、今後、多くの銭湯へ広がって、道民の新たな出会いのきっかけになればいいなと思っています。
また、新ど研として、これまで大規模なウェブ調査など定量的なことを多くやってきましたが、モノ消費からコト消費ということが声高に言われている今、定性的な体験価値が社会に求められていると思うんです。そのような時代に、新ど研として、北海道の銭湯から、人やまち、文化の接点をつくるような活動をしていきたいと思っています。

ふろカル 第二回は6月8日(土)に開催!
「ゆかたの味方~きっと着たくなる和装入門~」
着物スタイリストのCadbunny / Naho KUWAHARAさんを講師に迎える今回のふろカルは、「ゆかたの味方」と題し、江戸時代から続く銭湯と浴衣の文化を学びながら、これから花火・夏祭りシーズンを迎える初夏にふさわしいCadbunny流の浴衣の着こなし方を伝授いただきます。
詳しくは、こちらから。http://www.fulocal.net/

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