2015.12.15
女性の上司や、女性の部下を持つ男性のみなさん。突然ですが、彼女たちのことを「OL」という一言で片づけたことないでしょうか?
あ、ありますか?あーあ、やっちゃいましたね。もしかしたら地雷を踏んじゃったかもね。
キャリジョ研が2014年に実施した調査によると、働く女性の約7割が「OLという言葉は今の時代に合わない」と言っていて、働く女性の約6割が「私はOLなんかじゃない」と言っている。「働く女性」といっても人生いろいろ。
男だっていろいろあるように、女だっていーろいろ、働き乱れるのだ。
今回は女性の働き方について「歴史」と「世代」の視点から見てみる。男性のみなさんにも、働く女性の習性をご理解いただき、職場仲間の女性とのコミュニケーションがさらに円滑になれば幸いだ。
働く女性の歴史をひもとくと、実に感慨深い。
これまでにたくさんの女性の諸先輩たちが、汗水を流して切り開いてくれた「女性が働く」という道を、その時代に思いを馳せて振り返ってみよう
1960年代に「オフィスレディ」つまり「OL」という言葉が登場した。会社に女性が進出し始めた。男だらけの職場で、男性社員のお茶を入れるのももちろん仕事のうち。おしゃれな制服も憧れのうち。時にチヤホヤされたり、時に邪見にされたり、時にセクハラにも耐えたかもしれない。女性の立場をどうにか確保しながら働いていただろう。そして時が来たら「寿退社」。(20代のみなさん知ってますか?「ことぶきたいしゃ」とは、結婚して退社することですよ、死語だけど)引き際の潔さはなんとも男前。全員が全員ではないが、そんな光景もよくあったのだ。
1986年に男女雇用機会均等法が制定される。男性と同等に働く、女性総合職の採用が始まる。80年代から「キャリアウーマン」という言葉が誕生し、憧れのかっこいい女性像としてドラマや雑誌で描かれる。男性みたいにバリバリ働くのよ。男には負けられないのよ。夜もガンガン飲んじゃうのよ。・・・そして90年代に入ってバブル崩壊。
1991年育児休業法、パートタイム労働法の制定。子育てしながら家計を助けるにはどうすべきか。働き方のバリエーションが広がる。2000年からさらに働き方が変わる。就職氷河期が落ち着くと、男性社会と思われていた商社や不動産などでも女性の比率が高まっていく。マンガ「働きマン」に象徴されるようなモーレツ女性社員がいたり、ドラマ「ハケンの品格」のように契約社員でバリバリ働く女性がいたり。一方、自宅でサロンを経営するセレブ主婦もいる。働く女性がどんどん元気になる。その矢先。2008年リーマンショック、2011年東日本震災。不景気から「派遣切り」が始まる。誰だって食いっぱぐれたくない。働く理由として、家計を支えることが重視される。そして「イクメン」「ワーキングマザー」など、女性が働き続ける家庭環境が重視され、「リケジョ(理系女子)」や「ノマド」など、性別や場所にとらわれない働き方も注目される。働き続ける女性が増える今、自分らしく続けられる働き方が求められている。
女性が社会進出をして半世紀以上。男性に対峙する時代から、自分らしさを追求する時代になった。性別にとらわれない働き方もあれば、逆に女性らしさを生かす働き方もある。生きてきた時代によって、女性の働き方やモチベーションは変わっていくのだ。
キャリジョ研では、いわゆる「F1層」といわれる20代〜30代前半女性を中心にターゲットを絞り、「女子会」のような座談会調査を行ったところ、働き方の価値観が異なる3つの世代があることが分かった。(調査は2014年に実施
① OVER 30 =30歳半ば前後。オーバーサーティ(通称オバサー)
② AROUND 30 =30歳前後。アラウンドサーティ(通称アラサー)
③ AROUND 25 =20代前半~20代なかば(通称ナカバー)
この世代の特徴を説明しよう。
① OVER30(オバサー)は、モーターボート世代。
成長しつづける自分でいたい、という気持ちが強く「ステップアップ」したい世代。
仕事、上京、転職、結婚、出産、出世・・・など、成長がわかる社会的な記号を手に入れていく。言うなればエンジンを積んだ「モーターボート世代」。
自己実現・成長欲求というエンジンを積み、目標に向かって脇目も振らずにひた走る。それは詰め込み教育の賜物。バブルなお姉さんたちからすると、面白味のない地味な世代かもしれない。でも30代はバブルを知らないから、遊びも派手さも知らない。仕方ないのさ。まじめにまっすぐ前を向き、最善を尽くす。がんばり屋さんなのだ。
② AROUND30(アラサー)は、ヨット世代。
時代に応じて、自分の生き残る道を探し、自分らしさを「ピックアップ」する世代。
仕事をしながらも、あの趣味、この資格、その専門性。自分が生き残るための道を求め、あちこち歩き回る。言うなれば「ヨット世代」。その時の社会の風、周囲の風を読みながら、それを自分の動力に変えて進むヨットだ。オバサーに比べて上昇志向はない。なぜなら、どもの頃に見たニュースは、バブル崩壊、阪神大震災、サリン事件、児童殺害事件・・・とまさに90年代の世紀末。今後の世の中や将来が良くなるだろうという期待や展望が全く持てない世代。だからこそ、その時の環境に合わせて生き残る道を探りたい。大人からはオンリーワンを求められ、なにが個性なのかと自分を問い続ける。そうすりゃ私達はこの先もイイ感じ、これが私の生きる道。
③ AROUND20(ナカバー)は、ハトバ(波止場)世代。
安定志向で働き、いまの生活を少しだけ「アップデート」したい世代。
いまより社会的な地位の上昇を求めることもなく、新たな世界を見に行きたいわけでもない。大きな変化も好まない。今ここにいる場所や、地元や、仲間が好き。この日常生活を今よりちょっと快適にするために、少しずつ自分のまわりをアップデートしていく。それぐらいがちょうどいいのだ。
言うなれば「波止場世代」。波が少ない港の中にいて、まだ見ぬ沖には出ない。大人たちが世界をまわって集めた知識や渡来品を、波止場のベンチに座って、スマホで検索して、旅をした気分を味わう。しかも無料で。キーワードは安定・地元。本人たちは聞いたら嫌がるだろうが、ゆとり教育の影響もあるだろう。特に、リーマンショックと就職活動が重なった人は特に「大企業の終身雇用で安心したい」といういわゆる安定志向が顕著。
最後に、ナカバーのさらに下の世代、UNDER20はどうだろう。
まだ働いていない人が多いので、キャリジョ研としての調査はできていないが、ここは安定をベースにしながらも、自由な気分でいたい、言うなれば「カイト世代」(カイト=たこ)のようだ。親の手から伸びるタコ糸の長さの範囲で、海へ空へと羽ばたこうとする。バブル世代の親を持つ彼女らは、バブルを経験した親から、高価な子供服を買い与えられ、写真館で写真をとり、アイドルに憧れ、6ポケットで甘やかされた世代。食いっぱぐれそうになっても「なんとかなるっしょ」という漠然とした自信をもとに、自分らしい楽しい仕事を求める人も目立つようだ。男性の諸君、お分かりいただけただろうか。OLだなんてもう古い。働く女性は常に進化している。世代の差は、彼女たちの価値観の一片にすぎないが、仕事仲間の女性に改めて仕事の価値観を聞いてみると、知らなかった彼女の新しい顔が見えてくるかもしれない。
彼女たちの習性を知った上で、上司として仕事のゴール設定をしてみたり、接し方やアドバイスを少し変えてみたりするとどうだろう。これまで自分が思いつかなかったビッグアイデアも、彼女が意外と簡単に思いついちゃったりして。
illustration : Yurika Yoshida