博報堂生活総合研究所 上席研究員
酒井 崇匡
第3回のフックワード(データを引き出すフックになる言葉)は「意味」です。
この言葉、検索界(?)の中では結構メジャーワードだと言ってよいのではないでしょうか。皆さんも分からない英単語などがあった時に「○○ 意味」と検索したことって一度や二度はありますよね?果たして日本人に最も多く意味を調べられているのは、どんな言葉でしょうか。
ヤフー株式会社が提供するデータ分析ツール「DS.INSIGHT」を使って、2019年~2021年の年間検索データの中から、「意味」を含む検索の上位10位をランキングにしてみましょう。
※「DS.INSIGHT」では統計化されたデータのみを扱っており、個人を識別可能な情報は含まれません。
2019年から一貫して検索ボリューム1位をキープしているのは「エモい」です。2016~7年頃には若者の間では既に使われていた言葉なので、未だに意味を調べる人が多いというのはちょっと意外です。ただ、「エモい」の持つ微妙なニュアンスは確かに分かり難いものがありますよね。実は対象を10代以下に絞った場合の2021年ランキングでも「エモい」はトップなんです。中高年だけでなく、若者の中にもこの言葉のニュアンスを測りかねている人は結構いるようですね。
「カオス」も「エモい」の下あたりで3年間ずっと上位に食い込んでおり、検索者は比較的50代以上の女性に偏っています。一体なぜ?という感じもしますが、この言葉の意味を検索した人は他にも「シュール」や「デジャブ」、「フルスペック」などのカタカナ言葉やニュースで話題になった事物の意味を多く検索しています。メディアで見聞きしたカタカナ言葉の意味をまめに調べる層、というのがいるようです。
最近になって上昇している言葉に目を向けると、コロナ禍によってメールやメッセージに書くことが増えたからでしょうか。「ご自愛ください」が徐々に順位を上げています。また、2021年は「SDGs」がユーキャン新語・流行語大賞にノミネートされましたが、それに関連して「サステナブル」の意味を調べる検索が大幅に増加。2021年は「エモい」に次ぐ2位となりました。
その年ならではの言葉も幾つか見られます。2019年は「令和」。2020年は「収束」などコロナ禍関連ワードと「ぴえん」。2021年は「あざとい」などです。「アバランチ」、「アンサング」などもそうですが、テレビ番組によって広がる言葉というのもありますね。
ここまで検索全体でのTOP10を見てきましたが、既に皆さんご存知の単語が多かったのではないでしょうか。では、10代以下の若者のみに分析対象を絞ると、どんな単語の意味が検索されているのでしょうか。
先程触れた通り、10代以下に分析対象を絞っても「エモい」が1位になりました。8位に「指輪の位置と意味」が入っているのも微笑ましいですが、幾つか聞き慣れない言葉も散見されます。2位の「リアコ」、7位の「143」、8位の「やりらふぃー」、10位の「fff」。それぞれどんな意味かわかりますか?TOP10には入りませんでしたが、「スパダリ」(27位)、「fjk」(73位)なども難問です。全部わからないよ、という人も大丈夫。なにせ10代の若者も分からなかった言葉ですから。ここはぜひ、彼らと同じように「○○ 意味」で検索してみてください。(もちろん、私も検索しました。)
2005年博報堂入社。マーケティングプラナーとして諸分野のブランディング、商品開発、コミュニケーションプラニングに従事。12年より博報堂生活総合研究所に所属。デジタル空間上のビッグデータを活用した生活者研究の新領域「デジノグラフィ」を様々なデータホルダーとの共同研究で推進中。行動や生声あるいは生体情報など、可視化されつつある生活者のデータを元にした発見と洞察を行っている。
著書に『デジノグラフィ インサイト発見のためのビッグデータ分析』(共著・宣伝会議)、『自分のデータは自分で使う マイビッグデータの衝撃』(星海社新書)がある。