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「いつ」みんなが気にする“トキ検索” (連載:デジノグラフィで読み解く〇〇vol.6)

2022.11.24
#デジノグラフィ#トレンド#生活総研
ネット上には多様な生活者の声があふれています。中でも、ブラウザ検索のキーワードとして打ち込まれた文字列には、生活者自身の思考が素直に投影されています。あの細長い検索窓には、生活者が疑問に思っていること、分からないこと、悩んでいることが、時として検索ワードというより心情を吐露する文章になって打ち込まれているのです。
本連載では、そんな検索ビッグデータに現れた生活者の移ろいゆく心を様々な博報堂社員の視点でご紹介していきます。ベースになっているのは、博報堂生活総合研究所が提唱する、デジタル上のビッグデータをエスノグラフィ(行動観察)の視点で分析する手法「デジノグラフィ(https://seikatsusoken.jp/diginography/)」の考え方です。
ビッグデータ分析、というとなんだか肩に力が入ってしまっていけません。リラックスした気分で、データの向こう側にある現代社会を生きる生活者の日々に思いを馳せられる半分エッセイのようなコラムを連載でお届けします。
※本コラムは、Webメディア「NewsPicks」の「トピックス」に掲載された記事の転載です。

川上 茉衣
株式会社博報堂 第一BXクリエイティブ局 アクティベーションプラナー

「いつ」
その事のある、または、あった時が不定であることを表わす。(コトバンクより 参照2022.5.23)
https://kotobank.jp/word/%E4%BD%95%E6%99%82-433890

博報堂でアクティベーションプラナーをしております、川上です。普段はCMのコピーや動画の企画を考えたり、プロダクト開発や新規事業の立ち上げに携わっています。検索ブラウザに入力される言葉のビッグデータから生活者の心理や欲求を探るトピックス、「デジノグラフィで読み解く〇〇」。
「みんなが気にする“トキ検索”」と題して、本日は生活者がどんな“トキ”を検索しているのか探っていきたいと思います。

「あれっていつまでだっけ?」とふとしたことが気になることってありますよね。日々の締め切りだけでなく、母の日や父の日など毎年日付が変わるものなど、私は直前になって検索をして急いで親へのプレゼントを買い出しに行くのが毎年の恒例です。そこで今回はフックワードを「いつ」に設定してどんなことが調べられているかみていきます。

ヤフー株式会社が提供するデータ分析ツール「DS.INSIGHT」を使って、2021年1年間の検索データの中から、「いつ」を含む検索の上位100位を抽出。気になるものをピックアップしてご紹介していきます。
※「DS.INSIGHT」では統計化されたデータのみを扱っており、個人を識別可能な情報は含まれません。

トキ検索でみる四季の移ろい

日本には四季ならではの行事や催しが多くあります。そんな季節それぞれの文化に対する「いつ」の検索ワードが目立っていました。

「お盆 いつ」「七草粥 いつ」こういった検索がされるのは四季がはっきりしていて、季節の習慣や催しが人々の生活に根付いている日本ならではではないでしょうか。海外の別の国で同じように「いつ」で検索するとまた違った検索結果が出てくるかもしれません。

私は大学までずっと京都で暮らしていましたが、そんな私が夏前になると必ず検索するのは「祇園祭 いつ」でした。京都に長年住んできた私にとっては、祇園祭に行かないと夏を迎えられない!とすら思っていました。京都人にとって、祇園祭は夏のはじまりの合図のようなものなのです。たいていの場合、大学の期末試験の準備期間とこの祇園祭の期間がかぶってしまっていたのですが、それでも試験勉強の合間をぬって、毎年お気に入りの浴衣を着て、祇園祭が開催される河原町という大きな繁華街へと出向いたのがいい思い出です。

皆さんは思い出の季節や毎年かかさず行っている習慣はありますか?
生活者が検索する“いつ”に注目すれば、その国や地域の文化・価値観を浮き彫りにすることができるかもしれませんね。

トキ検索でみる子育て

もうひとつ目立っていたのが、子どもに関する「いつ」です。

「七五三 いつ」や「お宮参り いつ」「お食い初め いつ」など子どもに関する日本の伝統文化・慣習が検索されていますね。こういった古くから伝わる伝統文化であればあるほど、それを行うタイミングが少しでもずれてはいけない感が増します。自分のことではなく、その行事が自分の子どもに関する行事であればなおさら。昔からある慣習や伝統文化ほど、その時期やタイミングといった時の重みを感じやすいということが言えるのではないでしょうか。

ちなみにグラフにあがっている「母子健康手帳」は、どこの国が始めたものかご存知でしょうか。
実は、母子手帳は日本発だそうです。

これを機に、就職を機に実家を出る時に持ち出した自分の母子手帳を見てみました。身長や体重だけでなく、「滑り台が苦手だったが、3才前よりできるようになる。」などと母親の手書きの文字で自分の知らない自分が書かれていました。皆さんももし手元に母子手帳があれば、一度のぞいてみてはいかがでしょう。自分の思わぬ一面を発見できるかもしれません。

ビジネスシーンなどあらゆる場面で古くからの文化や慣習が時代とともに変わりつつある現代。そんな中、検索ワード「いつ」から見えてきたのは、今も変わらずに大切にされている日本の伝統文化や昔からの慣習でした。

時代とともに変わるもの、変わらないもの。変化の多い現代で何を変えて何を変えないのか。自分なりの判断軸をもって生きていくために、その判断材料としてネットにある様々な価値観の集積であるビックデータを活かすことができるのではないでしょうか。

川上 茉衣
株式会社博報堂 第一BXクリエイティブ局 アクティベーションプラナー

博報堂でアクティベーションプラナーとして、広告制作・新規事業・プロダクト開発をしています。

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