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「博報堂はもっと自由でいい」を叶えたい
博報堂人物図鑑 第3回/博報堂ケトル プラナー 南俊輔

2023.01.30
上司、先輩に限らず、部下や後輩であっても、「この人のここが素晴らしい!」と、リスペクトしている人が社内には必ずいるもの。本企画は、博報堂社員だからこそ知っているオススメしたい博報堂のスゴイ人をリレー形式で紹介していきます。
第3回の推薦者は、前回登場したビジネスプラナー 鈴木陸矢。推薦するのは博報堂ケトル プラナーの南俊輔です。

■鈴木からの推薦文
南さんは、ここ一年間とあるブランドにベタづきでずっと一緒に仕事をさせてもらいましたが、非の打ち所がないクリエイティブディレクター(CD)だと思いました。
まずはストラテジックプラナー(ストプラ)出身ということもあり、クリエイティブに入るまでの前段整理や戦略規定がとにかく瞬速かつ的確。得意先と相対して議論している時、特にその輝きが増します。
そして、もちろんそれをクリエイティブに落としてジャンプさせる力も一級品です。ソリューションとしてのクリエイティビティがずば抜けていると思います。
どんなに難しく、非常に困難な局面でも、「それでも南さんなら…きっとなんとかしてくれる…」と某バスケ漫画のワンシーンを彷彿させるほど、いつだって解法を切り拓いてくれます。
そんな、もうこの人1人いたらなんでも仕事勝手に進むんじゃない?的な全方位能力を持っている南さんを前に、ひとりのビジネスプロデューサーとして何を価値として発揮できるか、日々身が引き締まる思いになります。そんな素敵な刺激をくれる南さんとこれからもお仕事できたらいいなあと思っています!

■広大なサブカルチャーの海から広告業界の存在を知って

——推薦くださった鈴木さんとは2022年2月に某企業の案件でご一緒されてからのご縁とのこと。入社のタイミングも鈴木さんは2017年、南さんは2016年とほぼ同期なんですね。そもそも広告業界に興味を持ったきっかけからお聞かせいただけますか?

南俊輔(以下、南):元々、学生のころから音楽や映画、文学とか、そういった文系のカルチャー全般が好きで、そこにズブズブにハマっていた、いわゆる“サブカルクソ野郎”ってやつなんです、僕。尊敬する人もたくさんいるんですが、中でも坂本龍一さんをリスペクトしていたので、坂本さんのことを知っていくと必然的に糸井重里さんの存在も知ることになる。すると「コピーライターって仕事があるのか」という流れが生まれて、業界に興味を持つようになりました。

——なるほど。糸井さんをはじめ、ほかに広告業界でリスペクトしている人はいますか?

南:やっぱり箭内道彦さんの存在は大きいですね。高校の時にNHKのトーク番組の「トップランナー」で箭内さんを知って。箭内さんといえばタワーレコードの「NO MUSIC, NO LIFE.」が超有名ですが、大好きなアーティストに会えて、いい大人だけど金髪でいて。かっこいいって直感的に思いました。

——そして、箭内さんが博報堂の方とお知りになって、会社の存在を意識するようになったと。

南:まさしくそうですね。「箭内さんみたいな自由にかっこよく働く大人を許容してくれる会社なんだ」、それに「僕みたいな人間でも野放しにしてくれそうだな」と。そこは僕にとって大きな決め手でしたね。一応今の派手髪ヘアスタイルも箭内さんをリスペクトしています(笑)。それに、絵本やゲームを作ったり、博報堂っていう本体だけではなくてクリエイティブブティックなどいろいろな会社があったり、そういう空気感もいいな、と思って第一志望で入社しました。

■大好きな“無駄”を駆使して、戦略からクリエイティブまで横断できる人になりたい

——南さんは現在博報堂ケトルの所属ですが、入社時から籍を置いている第一プラニング局からの出向とのこと。入社当時のお話も伺えますか。

南:正直、当初は「僕がやるならコピーライターしかないでしょ」と思っていました。それはコピーを書くことに自信があったわけではなくて、それ以外の職種のことを知らなかったんです。でも、実際に研修を受けてみると自分が戦略とか何もわからないことに気付かされました。たとえば商学部出身ならまだマーケティングのいろはくらいは分かっていたんでしょうけど、そんな下地もない。僕、意外と真面目なところもあるんで「このままノリでコピーだけ書けてもダメだ」と思って、希望してマーケティングや戦略立案が学べるところに行かせてくださいと志願しました。

——それが第一プラニング局だったわけですね。

南:そこはいわゆるナショナルクライアントを担当する部署だったんですが、ありがたいことに上司も比較的放任主義の方で、好きなようにやらせてもらえました。とはいえ、そこはまぁ社内でも一番お堅い場所で。最初「スーツを着てきて」と言われたときは「え、そういう会社じゃないですよね?」って早々にスーツを着るのは拒否しました(笑)。

——南さんらしいエピソードです。それからもストプラとしてお仕事をしてこられたわけですが、ご自身の中で大きな転換点になったようなエピソードはありますか。

南:以前ある自動車メーカーのキャンペーンに携わらせていただいたときのことです。当時僕はまだ下っ端のプラナーとしてチームに参加したんですが、そこで企画書とは別に、クリエイティブの参考資料になればいいなと思って、年表のようなものを作ったことがありました。クライアントのプロダクトの歴史だけでなく、いろいろな車にまつわる“車史”的なものを時系列でまとめて、そこに同じ時期にどんな漫画が誕生したとか、全く別文脈の文化年表のようなものをくっつけてみたんです。

——それこそ、博報堂ケトル的なアプローチですね。

南:今思えばそう感じます。僕も(博報堂ケトル創設者の)嶋浩一郎さんみたいに「無駄なもの」が大好きだし、そこに価値があると思っているタイプの人間です。なのでこの年表も、一見意味のないことかもしれないけれど、何かしらクリエイティブのヒントになるのではと思って作りました。すると、これがすごく気に入ってもらえて。その年表のタイトルが、そのままCMのコピーになったことがあったんです。

——それはすごい経験ですね。カルチャー好きな南さんだからこその発想と言いますか…。

南:初めにそういった戦略を考える場所を選んだのは、最終的にクリエイティブをやるためのステップとしての選択でした。なのでこの経験をきっかけに、「マーケティングだけやればいい」「戦略だけやればいい」という思考回路に陥るのではなく、より強く「常に領域を横断していけるような人間になっていきたい」と思えるようになりましたね。

■瞬時に“解”を導き出すために、ひたすら続けた“写経”

——鈴木さんからも「ストプラ出身ということもあり、クリエイティブに入るまでの前段整理や戦略規定がとにかく瞬速かつ的確」という推薦文をいただいています。ご自身の中で、ストプラ時代に培えた能力はどのようなものだと思いますか。

南:ストプラの仕事ってシナリオとか全体のストーリーを作ることだと思います。経験の中でその基礎体力をつけることができたとは思います。オリエンを見た瞬間に課題が何かがわかって、企画書の骨子が頭の中で構築できるように訓練されますから。今でも、プレゼンの流れやコアアイディアまでのストーリー作りで不安に思うことは基本ありません。そうなれたのも、近くにいた先輩の存在もありますね。

——と言いますと?

南:自分が尊敬する先輩方が、とにかく答えを出すのが早いCDの方ばかりだったんです。「きっとこの企画はこういう切り口がいいよね。だからタレントさんはあの人をアサインできるといいな」といった会話が、もうオリエンの帰りのタクシーの中で繰り広げられている。その速さは僕も絶対体得したいと思いました。

——そのために何か“訓練”をされたりしましたか?

南:基本はひたすら企画書を写経していました。手書きで何枚も何枚も写経していくと、その人の思考回路がトレースできて、要素を分解していくと「なるほど、こういう視点があればアイデアって輝くのか」というパターンが大体見えてくる。それをひたすら頭に刷り込むんです。自分の中に引き出しをたくさん作っていくようなイメージですね。そしていざ自分が企画書を書くときに「あ、今回はZパターンでいこう」とすんなり書き始められるんです。

——そういう意味では社内一の“企画書マニア”かもしれませんね。

南:かもしれないです。それに、先ほどお伝えしたように僕は無駄な知識が大好きなんですよね。直接的に仕事に関係なくても、一時期は研究者になろうと思っていたくらい人文科学といったアカデミックなことも好きだし。ストプラ時代に培った経験とか、企画書の写経で得た“引き出し”の作り方に加えて、僕の無駄な知識がかけ合わさったとき、新しいパワーみたいなものを生み出せるタイプだとは思います。

■個人商店的な会社だからこそ、“外”とつながり続けたい

——2020年秋からは、博報堂ケトルに出向されています。

南:ケトルは今、第二創業期と言われていて、いわゆる初期のメンバーがほとんど卒業して、僕のような新しいメンバーが多く入ってきているフェーズにいます。ケトルとしては、会社が謳っていた「手口ニュートラル」が博報堂全社的なものになり、ではこれからどうしていくか、というのが僕らの課題です。コミュニケーションだけに止まらず、商品を作ったり、銭湯を作ったり、そういう“なぜそれをつくるのか”というところを拡張させて、新しい火種を作っていきたいと考えているところです。

——南さんはその中で、どのようなケトラー(ケトルの人)になっていきたいとお考えですか。

南:ケトルってかなり個人商店的なカルチャーなんです。メンバーはいろいろなプロジェクトに参加しているし、僕自身もケトルの人とだけ仕事をしていたり、したいわけではない。むしろ逆で、もっと外の人と仕事をしたいと思っています。ケトルの中で何を学ぶかというより、ケトルのアセットを使ってどういう新しいことをするか。さらにはアセットをどう作っていくか。もちろんそういうことをやっているメンバーはいるので、そうした人たちを真横で見ながら、僕なりの動きをしていきたいですね。

——具体的にはどのような動きを考えていらっしゃるのでしょう。

南:先述した通り、ケトルは個人商店的な組織なので、僕もCDでもありプロデューサーでもあり、経営者でもあると思っています。だからこそ、外の人とどんどん会ってひたすら種を撒き続けることが必要かなと考えているんです。仕事じゃない繋がりから仕事が生まれることもあるし、そうして生まれた化学反応はきっと面白いはず。直接的なメリットはすぐに出ないかもしれないけれど、そうした経営者的な動きはしていきたいですね。

——ありがとうございます。最後に、南さんが博報堂を「こんな会社にしていきたい」という思いや、博報堂の中で「こんな存在になっていきたい」という思いがあればお聞かせください。

南:今、世の中のスピードってめちゃくちゃ早くなっていると思います。かつては広告会社も一端のCDになるには何年も修業が必要だったし、そうした経験を積む時間が大事なのは間違いありません。でも、会社の外を見てみれば10代で起業している子なんてたくさんいる。変化を恐れて昔の慣習に則っていても世の中に置いていかれるだけだと、正直僕は思います。だからこそ、僕も箭内さんみたいになれるなら明日にでもそうなりたい。年齢やバックグラウンド関係なしに、そうした存在が社内にいた方がずっと面白いじゃないですか。僕自身が社内でそんな人間になれたらいいと思いますし、そんな僕を見て「こんなことやってもいいんだ!」と思えるような空気を作っていきたいですね。

<コラム>
▼仕事よりも夢中かも…私、今これにどハマりしています!
韓国のYouTubeを見ること。元々K-POP好きというのもあるんですが、韓国のYouTubeってクオリティが驚くほど高いんです。一般のユーザーのコンテンツだけじゃなくて、企業アカウントのオリジナルコンテンツもビックリするくらい見応えがある。そういうものを見ていると自分も「頑張らないと」と思えますしね。最近は見すぎてちょっと韓国語が分かるレベルになってきました(笑)。

取材・執筆=田代くるみ(Qurumu)、撮影=杉能信介

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