山本 洋平 第三ブランドトランスフォーメーションマーケティング局 局長代理
林下 雄也 第三ブランドトランスフォーメーションマーケティング局 部長
井上 良 第三ブランドトランスフォーメーションマーケティング局 ストラテジックプラナー
2023年1月。3年ぶりの本格的なリアル開催となったCES。有名なCESエントランスを飾るLGディスプレイ展示も復帰し、コロナ禍前のあの熱狂が戻ってきたのではと大きな期待を持って会場入り。しかし、ブースを見渡すと、ロシアによるウクライナ侵攻・コロナ・経済不安・米中関係など社会情勢が起因してか、勢いのある企業は少なく、中国企業もほとんど見受けられなかった。特に今回大きな影響を与えていたのが、CESの母体であるCTA(Consumer Technology Association)が、国連の支援するヒューマンセキュリティの団体「世界芸術科学アカデミー」とパートナーシップを結び、本アカデミーが推進する「Human Security for All」(HS4A)キャンペーンを支援すると宣言したことである。このHS4Aをテーマとしながら、人類にとって身体的にも精神的にもいかに安全性を担保できるかを念頭に置かれた技術展示が中心となった。
HS4Aへの参加表明もあり、技術のグローバル化の次のフェーズとして、”Human Security”の意識のグローバル化が図られた。その結果、全体的には強いビジョンを打ち出している企業や個性を感じられる企業も例年になく少なく感じられた。一言でいうと、「遠い未来ではなく、堅実で地に足のついたCES」という印象が大きい。それを象徴しているかのように、企業が打ち出すコンセプトも“future”という言葉はほとんど見受けられず、“better”が目立った。言い換えれば、生活者にとって本当の意味で生活をより豊かにする技術・製品に世界中が軸足を置いていると言えるのではないか。