垂水 友紀
博報堂買物研究所 所長
ECモールで、どのような商品を購入することが多いですか?
さらに、同じタイミングで購入しがちな、商品の組み合わせは何ですか?
1990年代の併売分析の象徴事例として、「ビールとおむつ」がありますが、それに倣い“令和時代の知られざる併売行動”を明らかにするために、楽天市場のビッグデータを解析することで導き出そうというデジノグラフィ研究をご紹介します。
リアルの売場ではメンズとレディース商品はフロアが分かれていますが、 楽天市場のようなECモールではそういった物理的な隔たりがなく、シームレスな買物ができます。そこで、何か新しい購買行動が発見できるのではないかと考え、今回は楽天市場でメンズとレディースに分かれている商品618ジャンルの併売行動に着目しました。
見えてきたのは、同一ジャンルの男女ペアルックの購買。しかも、ペアルックというとTシャツとかアウターをイメージしがちですが、実際はナイトウェアやスニーカーなどの“おうち”と“足元”などがメインで、しかも買っているのは40代夫婦が多かった、という分析結果でした。
「ペアルック購入」の商品イメージ
今回はさらに追加調査として、実際にペアルックで購入している人たちにインタビューして、その理由を深堀りしてみました。
まず、ナイトウェアをペアルックにしている人の声を紹介します。
(男性:44歳、女性:35歳の夫婦)
ワコールの睡眠科学のナイトウェアを1年半前から夫婦お揃いにしています。ECサイトで購入しました。夫婦でお揃いにしてみたいと思っていたのと、先に自分が使って良かったので夫にも勧めました。着心地が良く、汗をかいても不快感がないのがお気に入りのポイントです。ナイトウェアを同じブランドにしたことによって、夫婦のコミュニケーションは少し増えた気がします。
(男性:39歳、女性:40歳の夫婦)
スリーピージョンズのナイトウェアを10年前から夫婦で着ています。お互いにデザインが気に入って、ECで購入しました。ペアにした理由は、外でお揃いははずかしいので、家中でお揃いにしました。夫婦のみが同じで、子供は違うブランドです。
(男性:37歳、女性:36歳の夫婦)
4年前からジェラートピケを夫婦で着ています。おそろいにしたのは、友人から新婚祝いでもらったのがきかっけです。可愛くて着心地もいいので、気に入っています。また、今後も同じナイトウェアのブランドがいいなと思います。
ナイトウェアのお揃いには「良いものは共有したい」「仲良しだからお揃いにしたいけど、外は恥ずかしいから家中で」というインサイトが見えてきました。
また、自分たちで買う以外に、結婚祝いなどのギフト需要なども見られました。ギフトでは、質が良く自分で購入するより高価格なブランドを選ぶ事が多いかと思います。これは、楽天の購買データ分析の平均金額からも明らかで楽天平均よりもペアで購入するほうが「単価が上がる」傾向がみられました。ペアで購入する事で、ギフト需要も含め、ちょっといいものを購入している事の表れだと考えられます。
ナイトウェア・ルームウェアの楽天全体とペア購買の購入単価の比較
※2021年内に対象ジャンルを楽天で購入した全てのユーザーの購入単価の平均
次に、スニーカーをペアルックで購入している人たちにも、理由を聞いてみました。
(男性:44歳、女性:44歳の夫婦)
ナイキをお揃いにしています。そのブランドを買うようになったのは、主人が好きなブランドなので、わたしも買うようにしました。ナイキで、自分でオリジナルのスニーカーが作れると聞いたので一緒に作りました。
(男性:78歳、女性:79歳の夫婦)
夫婦で同じブランドのメーカーのスニーカーを買って履いて毎日散歩をしております。買ったのは、ニューバランスで、理由は、着用した時に軽くて、素材が非常に柔らかくて足にフィットしやすいので散歩に適したスニーカーだからです。
スニーカーのお揃いをしている夫婦も、ナイトウェアと同様にとても仲が良さそうです。特徴としては、スニーカーはお互いの感性を表現出来たり、 “散歩“という共通の趣味に最適なものを購入したりと、「好きの共有」ツールになっている要素がより強い傾向にありました。また、ナイトウェアは女性が選び、妻から夫へのおすすめが見られましたが、スニーカーはその逆で、夫が選んだものに、妻が賛同して購入することが多かったのも傾向としてあげられます。
ナイトウェアもスニーカーもお揃いにしている夫婦は、自分で「夫婦仲が良い」と公言出来る夫婦が多く、にわとり卵の関係かもしれませんが、お揃い効果として、絆アップに一役かっていそうです。
夫婦仲をアップさせたい人は、周りから分かりやすいTシャツなどは、ハードルがあるかと思いますが、隠れて出来るおうちペアや、さりげない足元ペアから始めてみるのがおすすめです。
※詳細な結果を知りたい方はこちらのリリースもぜひご覧下さい。
https://www.hakuhodo.co.jp/uploads/2022/09/H20220928C.pdf
生活者の買物体験をより良くしていくために、ショッパー・インサイトを起点に、ソリューション開発や対外的に研究発表を行っています。