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「告白」が最も多いのは何月?つらすぎる2本の波形連動(連載:デジノグラフィで読み解く〇〇vol.18)

2023.03.02
#デジノグラフィ#トレンド#生活総研
ネット上には多様な生活者の声があふれています。中でも、ブラウザ検索のキーワードとして打ち込まれた文字列には、生活者自身の思考が素直に投影されています。あの細長い検索窓には、生活者が疑問に思っていること、分からないこと、悩んでいることが、時として検索ワードというより心情を吐露する文章になって打ち込まれているのです。
本連載では、そんな検索ビッグデータに現れた生活者の移ろいゆく心を様々な博報堂社員の視点でご紹介していきます。ベースになっているのは、博報堂生活総合研究所が提唱する、デジタル上のビッグデータをエスノグラフィ(行動観察)の視点で分析する手法「デジノグラフィ(https://seikatsusoken.jp/diginography/)」の考え方です。
ビッグデータ分析、というとなんだか肩に力が入ってしまっていけません。リラックスした気分で、データの向こう側にある現代社会を生きる生活者の日々に思いを馳せられる半分エッセイのようなコラムを連載でお届けします。
※本コラムは、Webメディア「NewsPicks」の「トピックス」に掲載された記事の転載です。

酒井崇匡
博報堂生活総合研究所 上席研究員

「告白」
心の中に思っていたことや秘密にしていたことなどを隠さないでありのまま告げること。 (コトバンク より 2023/2/21参照)

突然ですが皆さん、「(恋の)告白」って自分からしたことありますか?

ヤフー株式会社が提供するデータ分析ツール「DS.INSIGHT」で「告白」という単語を含む検索データを調べると、「告白 タイミング」や「告白 女から」といった様々な恋の告白に関する検索がされています。また、そのような検索の多くは、10~20代の男女が検索者の8割前後を占めています。

実は、先ごろデータを公開した生活総研の「生活定点」最新の調査では、「いくつになっても恋愛をしていたい 」という意識が10年前まで全年代で最も高かった20代が、全年代で最も低い値まで減少する、という衝撃的な結果が出ています。
若者の恋愛離れも極まってきた感がありますが、「告白」関連の検索データは恋に悩む若者が決して消滅した訳ではなく、まだ確かに存在していることを示しています。

美しく連動する2つの波形

そしてその中でも、月毎の検索ボリューム推移がきれいに連動している2つの検索クエリ(検索窓に入力された語句の組み合わせ)を見つけてしまいました。
それは、「告白 セリフ」と「告白 断り方」です。
下のグラフを御覧ください。悲しくなるぐらいきれいにシンクロしながら推移しています。

「告白」というワード自体はそもそも恋愛以外でも使われる言葉なので、必ずしも「恋に悩む人たちが検索している」とは言い切れない部分があります。
ただ、この2つの検索クエリに関しては、ここまで綺麗に波形の連動が出ており、かつ“告白のセリフとその断り方” という明確な因果関係のある内容です。
そのため、

「告白 セリフ」の方はこれから恋の告白しようとしている人が、
「告白 断り方」の方は恋の告白を受けたばかりの人が

行っている検索がほとんど、という可能性はかなり高そうです。

「告白」が多いのは年末と年度末

そう考えてあらためて先程の波形を見ると、見えてくるものがあります。まず、ある程度明確な季節性があり、毎年12月と3月に検索ボリュームが上昇している、ということです。やはりクリスマスのある年末と、卒業・進級シーズンでもある年度末は告白業界(?)も繁忙期のようです。

2022年は6~7月にも検索ボリュームの上昇が見られており、他に比べると比較的10代の検索が多いようです。ちょうど6月は体育祭が多くの高校で行われる時期であり、今年度は行動制限が解除されて久しぶりの開催となった学校も多いでしょう。活躍するクラスメートを見て、それまでただの友達だったけど急に意識するようになって…みたいな展開もあったりなかったりするのでしょうが、検索データだけでは原因はよく分かりません。(急に投げやりですみません。そういう経験が乏しかったもので…。) 6月の山が一過性のものなのか、新たな季節性として定着するかどうかは、来年度以降の動きを見ていく必要があります。

年度末の「告白」は成約率が悪い

さらに言えば、「告白 断り方」の方は12月に比べて3月に大きく上昇する傾向が見られます。「告白 セリフ」の方でそのような傾向は見られないため、年度末の告白は成約率が悪いのかもしれません。
これはあくまでも仮説ですが、3月の卒業、進級に際して、告白する側も離れ離れになる前に…ということで勢いで告白する場合が多いということが考えられます。事前のナーチャリング(顧客育成)が不十分な中、当たって砕けろで告白しているとしたら成約率の低下もやむなし、といったところでしょうか。

2019年に比べて告白する人が減少?

波形の推移を見て、「告白 セリフ」を検索している人のボリュームは2019年の後半に一段減っていることに気づかれた方もいるのではないでしょうか。
これは2020年3月以前に起こった変化なので、コロナ禍は関係がなさそうです。ついでに言えば、どちらの検索クエリのボリュームもコロナ禍発生後に特に減少はせず、安定して推移しています。少なくとも「告白に悩む10~20代のボリューム」という観点では若者の恋愛ボリュームにそこまでコロナ禍は影響していない、という仮説も成り立ちそうです。

一方の「告白 断り方」の検索ボリュームが変化していないので、もしかすると世の中で行われる告白そのものの量は変化しておらず、告白する側の検索行動が変わっただけ、という可能性もあります。ちょうど20代ではマッチングアプリが普及し始めた時期でもあるので、その影響もあるかもしれません。

告白する側の男女比は6:4、断る側は3:7

ここからは少し視点を変えて、「告白 セリフ」を検索している人の男女比をご紹介しましょう。2021年にこの検索をした人全体では、概ね男性:女性=6:4 となっています。

10代以下は全体とほぼ変わらず6:4なのですが、20代だと7:3くらいに男性の比率が上がります。個人的には、20代になっても思っていたより女性から告白する場合は多いんだな、という印象を持ちましたが、皆さんの感覚ではどうでしょう。

一方の「告白 断り方」を検索する人はやはり男女比としては正反対になっていて、だいたい 男性:女性=3:7 というところです。

告白の成功率は56.0%?

また、そもそもの検索ボリュームについて見てみると、2021年に「告白 セリフ」を検索した人は31,300人いました。一方で、「告白 断り方」を検索した人は13,800人となっています。

最後のこの数字を使って、分析ではなく、一種の思考実験をしてみましょう。

もし告白する人は必ず「告白 セリフ」を検索し、告白されたけど断る人は必ず「告白 断り方」を検索する。それ以外の人は全て告白をOKする、と仮定します。
すると告白の成功率は、

(31,300人 - 13,800人) ÷ 31,300人 × 100 = 56.0%

となります。
実際には、当事者全員がこの2つの検索クエリを検索するわけではもちろんありません。また、「告白 セリフ」を調べても実際には思いとどまったりする人もいるでしょう。他にも色々なバイアスの存在を無視して仮定に仮定を重ねた式ですので、全く信頼はおけないのですが、妙に納得のいく値でもあります。

いよいよ3月の告白繁忙期が到来しました。恋する生活者に、幸多かれ。

酒井 崇匡
博報堂生活総合研究所 上席研究員

2005年博報堂入社。マーケティングプラナーを経て、12年より現職。デジタル空間上のビッグデータを活用した生活者研究の新領域「デジノグラフィ」を様々なデータホルダーとの共同研究で推進中。 行動や生声あるいは生体情報など、可視化されつつある生活者のデータを元にした発見と洞察を行っている。 新刊に『デジノグラフィ インサイト発見のためのビッグデータ分析』(共著) https://www.amazon.co.jp/dp/4883355101/ その他の著書に『自分のデータは自分で使う マイビッグデータの衝撃』(星海社新書)がある。

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