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若手!クリエイターが挑む!ソーシャルテーマvol.3
世代を超えて働き方を考えるきっかけに。テレ東BIZ「おつかれ、一年目の自分。」キャンペーン

2023.05.26
クリエイティブの力で世の中に新しい視点をもたらし、社会課題の解決に挑む博報堂の若手メンバーにフィーチャーする連載企画。今回は、テレ東BIZ「おつかれ、一年目の自分。」キャンペーンを担当した堀池駿介と槇野結が登場。ソーシャルテーマとして「働き方」に向き合い、世代間の新しいコミュニケーションが生まれるきっかけになることを願って制作したという本キャンペーンについて、ふたりの想いをききました。

テレ東BIZ「おつかれ、一年目の自分。」とは

入社一年目の社会人の本音とテレ東BIZで配信されたニュースを「僕らの毎日は、経済につづいている。」というタグラインでつないだ広告キャンペーン。2022年の12月に東京メトロ日比谷線の日比谷駅ホームをジャックした。モデルとしてテレビ東京の新人アナウンサーや一年目社員を起用。「社会人一年目の忘れられない出来事」を募集するハッシュタグキャンペーンでは、2週間の募集で1,500件を超えるツイートが寄せられた。

生活者の意識を変える「広告」で、社会課題に向き合いたかった

―コピーを担当した堀池さんは2022年入社のまさに一年目社員だったそうですが、そもそもコピーライター志望で博報堂に入社したのですか?

堀池:コピーライターになりたいというより、社会課題を解決したいという想いで就職活動をしていました。社会課題を解決するためには、サービスをつくって提供するような事業会社の選択肢もあると思うのですが、僕はファーストステップとして生活者の認識を変えることに携わりたかったんです。広告って、「言われてみたらたしかにそうだよな」という気づきをくれる存在ですよね。自分では言語化していなかったことが広告という形で示されることで、これまでの認識を変えるひとつのきっかけになる。やはり「言葉にする」というのが認識を変える手段として強いと感じました。僕が配属されたチームのリーダーは「社会と向き合うクリエイティブ」を得意としているクリエイティブディレクターで、「言葉を軸にアイデアを考えなさい」という教えを胸に一年目を過ごしてきました。

―槇野さんも学生時代から社会課題に関心をもっていた?

槇野:美大の頃はイベントで出た廃材を使って作品をつくったり、知的障害のある方の社会参加をサポートするために作品を共創する活動をしたり、日本の伝統工芸の継承についての作品などを作って活動などをしていました。社会の課題とデザインの関わりに興味を持っていたので、会社でももっと社会課題に関わるような仕事がしたいと思っていたところ、入社4年目の昨年、堀池と同じチームの配属に。配属初日にこのプロジェクトがスタートしたんです。

―テレ東BIZのキャンペーンはどのようなお題からスタートしたのでしょう?

堀池:オリエンは「テレ東BIZを若者に」というシンプルなもの。そのキャンペーンを日比谷駅の交通広告で展開するということだけが決まっている状態でした。

槇野:まずテレ東BIZをいかに定義づけするか、かなり議論しましたよね。

堀池:そうですね。わかりやすい短い動画で経済のことを学べるというのがテレ東BIZのいいところ。これって自分たち新入社員にとってすごく便利なサービスだなと思ったんです。社会人になった瞬間、経済のことは知っていて当たり前という状況に置かれるじゃないですか。通勤時間や隙間時間にパッと見るだけで、分かりやすく経済情報が得られる。新入社員に寄り添うサービスだよというメッセージにしようと思ったとき、ふと気づいたのが、これまで高校生や就活生を応援する広告っていろいろあったのに、新入社員になった瞬間誰からも応援されてないな…ということ(笑)。もう大人でしょみたいな、ちょっと距離を置かれる感覚があったんです。じゃあ、新入社員の本音を汲み取って、それを言語化することで気持ちに寄り添ってみようと考えました。

世代を超えた「共感」と「発見」で、働き方を考えるきっかけに

―実際メッセージをつくるうえで意識したことは?

堀池:僕自身が入社一年目だったのでシンプルに書きやすいというのはあったと思いますが、コピーを書くうえで意識したことがふたつあって。ひとつは、普遍的に共感されるものを書こうということ。もともと全ての社会人が新入社員だったわけで、その頃から変わらない一年目の気持ちを表現したいと考えました。そのうえで、2022年入社だからこそ感じる本音を書きました。いまの新人ってこんなことを考えているんだという上の世代にとっての発見がないと、ただの共感だけで終わってしまうし、その発見をしてもらうためには、まず共感がないと受け入れてもらいにくいと思ったんです。

槇野:たとえば「ライバルにも友達にも恋人にもなる関係を、同期と呼ぶ。」は普遍的に共感してもらえる内容ですし、「働きたい人のための働き方改革って、ないんだろうか。」は、今年の新入社員だからこそわかる!と共感できるコピーですよね。

―世代間にあるギャップを埋めていきたいという狙いはありましたか?

堀池:全体を通して、働くことについて考えるきっかけになってほしいという想いがありました。10年前に入社した新入社員といまの新入社員の価値観が違うというのはみんなわかっていること。じゃあ、どう違うの?ということをちゃんと理解できていないと思うんです。「ハラスメントになるかもしれないから」とか「リモートワークだから」といって、コミュニケーションに消極的になっている部分も多々ありますし、そうやってコミュニケーションが減ると、「いまの若い子は」とか「先輩たちは」といった偏見だけで、それぞれの世代を語ってしまう気がしていて。そうやって、世代間の価値観のギャップはどんどん広がっていくと思うんです。勝手な印象で決めつけている部分を、本当にそうなのかな?って考えるきっかけになればいいなということが、コピーを書くとき意識したポイントでした。

槇野:いま社会の大きな流れとして働き方改革が進められていますし、若い子はワークライフバランスが大事でしょう?と決めつけられがちですけど、わたし自身はもっと働きたい!って思っているし、先輩たちとも飲みに行っていろんな話をきいてみたい。若い世代にもいろんな人がいるよ!ということが伝わるといいなと思っています。

堀池:多様性と言いながら、そこはまだ全然多様じゃないんですよね。これからはきっと、もっと働きたい人は働けるし、仕事を抑えたい人はそうできるし、選べる時代になっていくと思うんです。いまはその過渡期なんだと思いますが、いろんな考えの人がいるという認識をつくるきっかけになればいいなと思ってつくりました。

―コピーとニュースを組み合わせるというアイデアはどのように生まれたのですか?

槇野:この媒体は日比谷駅のホームをジャックするというもので、ホームの端から端まで乗り換えの人が歩いて見てもらえるような環境でした。12本の広告をカレンダーのように時系列で展開できればいいなというアイデアが当初からあって、それを新入社員の本音という企画と融合してクリエイティブに発展させています。

堀池:20個くらいのテーマを決めて、それに沿ってコピーとニュースを組み合わせていく作業をしました。膨大な数のニュースがあるので、かなり大変でしたね(笑)。

東京メトロ日比谷線日比谷駅ホーム

―実際、キャンペーンの反響はいかがでしたか?

堀池:Twitterすごかったですよね。

槇野:びっくりしましたよね。実は当初のオリエンでTwitterで話題になる企画がいいというお話もあったんです。でも私たちが提案したアイデアは、おもしろいね!いいね!みたいにバズる種類ものではなかったはず。でもクライアントのご担当者からハッシュタグキャンペーンをやりたいという声があって実施してみると、思った以上の反響があって驚きました。自分が一年目だったときどうだったとか、いまどう感じているかとか、みんな発信したかったのかもしれないですね。「おつかれ、一年目の自分。」という言葉と企画が強かったのかなと思います。

小さい気づきを大きなうねりへ。その先の方法論は無限にある

―おふたりの社会課題に向き合いたいという想いが、早速仕事で実現できているのでは?

槇野:チャンスはチャンスの顔をせずにやってくるんだなと思いました。社会課題を解決したいというオリエンをもらうわけでなくても、ブランドが持っている性質と社会課題が結びつけば、そこに向けたアプローチをすることができる。それは大きな学びでした。堀池が入社半年くらいではじめた企画だったので、いい意味で固定概念なくアプローチしたこともよかったんだと思います。全方位的に考えていたもんね。

堀池:むずかしい経済用語をギャル語で書いてみようとか…。はじめはいろんなこと考えていましたよね(笑)。学生の目からみると、広告会社の仕事ってスーパークリエイターみたいな個人の裁量が重要な仕事だと思っていたんですけど、やっぱり人との関係性のなかでチームでつくりあげるものなんだと実感して、すごく学びがありました。テレ東BIZの会員数もTwitterのフォロワーも増えたようで、結果につなげることができてよかったです。

―この経験を踏まえて今後チャレンジしたいことは?

堀池:人々の向いている方向をちょっと変える“きっかけづくり”がしたいと思って博報堂に入って、実際それができる仕事であることがわかりました。そのうえで、どうやって実際のアクションに変えていくかにチャレンジしたいですね。同じ「働き方」に向き合うにしても、今度はもっと、文化として根付くようなコンテンツをつくれたらいいなと思います。自分の所属チームのリーダーを見ていて思うのが、アウトプットのかたちは広告だけにとらわれなくていいんだということ。本を書くことかもしれないし、ドラマやアニメのコンテンツをつくることかもしれないし、なにか新しいサービスをつくることかもしれない。広告はきっかけであって、その先の方法論に制限がないんですよね。それを実践できる会社だなと思っています。

槇野:博報堂って、ほんとうに小さい「それわかるわ」みたいな共感から、ものすごく大きい企画にしていく人が多いですよね。みんな世の中観察が大好き(笑)。

堀池:すごく受け手目線を重視していますよね。言いたいことを言うというより、人が言ってほしいことから考えるという社風。今回は自分が新入社員だったのでそのままの気持ちを書けばよかったけれど、これからはいろいろな人の目線になって制作できるようになれば、博報堂のいいクリエイターになれるんだろうなと思っています。

堀池駿介
コピーライター

2022年博報堂入社。コピーライターとしてαクリエイティブ局に所属。マス広告以外にも、企業のタグライン開発から新規事業開発まで幅広く担当。

槇野結
アートディレクター/デザイナー

2019年博報堂入社。αクリエイティブ局所属。 若者向け〜全世代向けまで、幅広いターゲットに向けた多様な案件を担当。

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