こんにちは。ヒット習慣メーカーズの永井です。
ここ数ヶ月、世の中的な旅行機運の高まりに乗じ、プチ旅行も兼ねて北は北海道、南は沖縄までいろんな場所でワーケーションする充実の日々を過ごしていました。とはいえ旅先から戻ると、やっぱり自宅が一番落ち着くなぁと感じるもので、最近はもっとスマートでおしゃれな家に住みたい!と思い立ち、賃貸情報サイトを眺める日々を過ごしています。マスク制限も緩和され、職場によっては出社前提に戻るなど働き方が再び変わりはじめ、自身の暮らし方も見つめ直している、なんて人も増えているのではないでしょうか。
そんななか今回のテーマは「ジャパンディな暮らし」です。私がここ最近血眼になって探している物件も、まさにこのジャパンディな暮らしができそうかの基準で見ています。聞き慣れない方もいるかと思うので簡単に説明すると、「ジャパンディ(Japandi)」とは、Japanese(日本式)とScandinavian(北欧式)をミックスしたインテリアスタイルのことを言います。
下記のGoogleトレンドを見てください。こちらは全世界の「Japandi」の検索数の動向を示していますが、コロナ禍真っ只中の2020年頃に新たなインテリアスタイルとして海外で注目され、その後、今日に至るまで上昇トレンドとなり、今では逆輸入的に日本で注目されています。
ジャパンディには明確な定義付けがあるわけではありませんが、いわゆる「和モダン」とは異なり、“海外から見た日本らしいテイスト”を取り入れた海外発のジャパニーズスタイルとも言えるかもしれません。 シンプルでミニマル、天然素材をふんだんに使い、アースカラーでナチュラルに統一された空間に、ちょっとしたアクセントとなる家具を置く。洗練されているけれど、どこか温かみがあるインテリアスタイルです。
具体的に見ていくと、若者を中心に注目を集めているひとつが「ウッドブラインド」です。天然木を使用しているウッドブラインドは、カーテンよりも直線的でスタイリッシュなデザインでありながら、天然素材の温かみを感じられる点が人気の秘訣のようです。ウッドブラインドの他にも、色味のアクセントとなる観葉植物や、日本の障子を彷彿とさせるリネンやコットンなど「織り」生地のロールスクリーン、有名デザイナーが手掛けた提灯をモチーフにした間接照明なども人気です。
また、このジャパンディ的な逆輸入の流れは、インテリア業界にとどまりません。
例えば、海外では「BENTO(弁当)」が流行りつつあるのはご存知でしょうか。これは北欧に限った話ではありませんが、パン文化が根づいているヨーロッパでは、コロナ禍をトリガーに日本のお持ち帰り文化が注目され、職場のランチタイムに手製弁当を持参する人も増えたり、都市部には駅弁店も増えてきているようです。日本でも弁当箱が外国人観光客のお土産として人気で、北欧的なクラフトでスタイリッシュな弁当箱も続々生まれています。
その他に、日本の銭湯文化で愛されている「手ぬぐい」も海を飛び越え、注目を集めています。特にサウナ文化が根付く北欧では、北欧らしい自然美を生かしたデザインが手ぬぐいに落とし込まれ、日本にある手ぬぐいとは異なった、新たな形になって広まりはじめています。
さて、いくつか事例を紹介してきましたが、なぜここまで「ジャパンディな暮らし」が注目されているのか。それは、日本文化と北欧文化が時代の要請によってうまく融合し、求められているからだと思います。
ジャパンディは、空間の雰囲気を大きく変えず、家具もなるべく買い替えないで長く使い続ける、というSDGsの考え方のインテリアスタイルです。色味を控えめにしながらも、職人の手によるクラフトを取り入れ、飽きのこない洗練された雰囲気を作っていくという日本的な要素が、もともと質素な暮らし方を好む北欧の国民性にもマッチしていたからでしょう。
さらに、北欧スタイルの特徴である「hygge(フーガ、家庭的な居心地の良さ)」と日本の「侘び寂び」が融合した空間やアイテムが、コロナ禍以降、ストレスフルで忙しい時代のなかで、ほっと一息つける静かな環境をつくるライフスタイルとして、世界中で求められているからだと思います。
最後に、「ジャパンディな暮らし」のビジネスチャンスについて、少し考えてみました。
私が住む北海道では、なかなかいい物件が見つからないので、うまくアイテムを取り入れながら、夢のジャパンディな暮らしを実現したいと思います。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
2018年北海道博報堂に入社し、マーケティング職に従事。2021年から博報堂生活者エクスペリエンスクリエイティブ局に複属。多拠点居住が夢。ここ最近は実証実験と称して、北は北海道、南は沖縄までさまざまな場所でワーケーションを試みている。