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ヒット習慣予報 vol.271『他人とシェア買い』

2023.06.13
#トレンド

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの石井です。

突然ですが、みなさんは友人や家族とお金を出し合って一緒に商品を購入した経験はありますか?僕は、会員制倉庫型卸売店が好きなので、よく友人と買い物に行き、大容量の食品や日用品を一緒に購入してシェアすることが多々あります。普段行くスーパーやショッピングセンターでは、見かけないような大きな商品がたくさん陳列してあるので、ワクワクして無意識に手を伸ばしてしまいますよね。ただ、友人や家族と欲しい商品が一致しない限り、一緒に購入することができませんし、そもそも友人や家族がいないタイミングでは、シェアするショッピングはできないので、少し不便な買い物ではあります。また、他にも家族割など、複数人のグループで購入すると割安になる商品・サービスも世の中には多く存在しますが、こちらも身近な人との購入が必須条件となっています。

しかし、近年は、友人や家族などの顔見知りではない赤の他人とも、共通の商品への購入希望がマッチしている相手とネット上で繋がることができ、その赤の他人と同じ商品を「シェア買い」するという新しい商品購入の形が注目を集めているようです。

そこで、Googleトレンドで「グループ購入」を検索してみると、近年、検索ボリュームが右肩上がりに徐々に伸びていることがわかります。

出典:Googleトレンド

今回、ご紹介する「他人とシェア買い」は、商品の購入において、友達でも家族でもない赤の他人がネット上で集まり、それぞれがお金を出し合い、共通の商品をシェアして購入するというユニークなショッピングの形が広がっているという新しい社会の兆しに着目しました。ここからは、具体的な動向を一つずつ紹介していきたいと思います。

まずは、SNS上で食品や日用品が割安で購入できるシェア買いです。
最近、SNS上で繋がった「シェア買い」仲間と共同で商品を購入することで、お得に買い物を楽しめるサービスが注目を集めているようです。ショッピングの流れとしては、SNS上で好きな商品を選んで、商品を購入すると、シェア買いグループが作成されます。グループに必要な人数が24時間以内に集まり次第、お得なシェア買い価格で商品を購入することができます。お取り寄せグルメなど、ちょっと贅沢な品もシェア買いで安く手に入れることができるようです。格安で商品を購入できる代わりに、それぞれの商品の目標人数が集まるまでは購入できませんが、シェアメンバーが集まるのをワクワクしながら待つのも「シェア買い」における楽しみの1つとなっているようです。もちろん、購入希望している商品のリンクをSNS上でシェアし、同志を募ることも可能です。
普段は身近な人がいない限り、なかなかシェアする買いものはできませんが、SNS上で同一の商品を欲している人と繋がることで、普段よりも容易にシェア買いができるため、その「繋がる容易さ」がシェア買いの注目をさらに加速させていくのかもしれません。

次は、ネット上で高価な投資用美術品が共同で保有できるシェア買いです。
最近、共同で出資し合い、アート作品の投資ができるネットサービス利用が注目を集めています。人気が高く、資産性にも注目が集まるようなアート作品は、ほとんどの人にとって高額かつ入手困難で、個人ではなかなか購入することができないものです。逆に、リアルでシェア買いしてしまうと、維持管理の役割などが大変であり、リアルでのシェア買いはハードルがかなり高いと言えるでしょう。しかし、このサービスは、プロ監修のもとで選定されたアート作品の一部の価値をオーナー権として少額から購入し、ネット上で共同保有することができるようです。また、ネット上での保有のため、ハードルとなっている維持管理も不要となっています。私も、アートや投資に興味を持っていましたが、高価ということもあり、手を出すことができていない状況でした。しかし、低価格のシェア買いによる共同保有ということであれば、素人の私でも分かりやすく、手の出しやすいもののように感じます。
また、オーナー権の保有率によって様々な優待を受けることができ、都内某所で開催されるオーナー限定展示パーティーに招待されたり、個人に合わせた都内アートギャラリーツアーの提案を受けられたり、審査と条件付で作品レンタルが可能になったりと、アートが好きな方にとっては、この優待も魅力の一つとなっているようです。
これまで、アートの購入や投資は、個人で行うものという考え方が一般的でしたが、ネット上でのシェア買いによる資産の共同保有という形が徐々に広まりつつあるのかもしれません。

最後は、夢のある別荘を共同で購入できるシェア買いです。
最近、数十名のオーナーがネット上で繋がり、共同で別荘をシェア買いするサービスが話題になっています。別荘を1棟まるごと所有するとなると、購入や維持にはそれなりの費用がかかり、生活者にとっては、かなりハードルの高い買い物です。しかし、このサービスは1年の内、日数を限定して購入できるため、初期費用や維持費は自分の所有分しかからず、非常に合理的でコスパの良い買い物となっています。また、年間維持費によってメンテナンスや修繕、水道・光熱費の全てを管理事務局が全て賄い、掃除やベッドメイキングまで任せられるので遊びに行くだけという、維持のハードルが低いことも人気の理由の一つとなっているようです。
さらに、このサービスでは、会員がそれぞれ持っている所有権を期間満了時に一括売却し、その売却益を持分割合に分配するサービスが用意されているため、財産の役割もきっちり果たしています。
これまで、豊かな自然を求める外出や二拠点生活が注目されている中で、別荘を持ってみたいと思っていても、現実的なものではありませんでした。しかし、購入ハードルの高かった別荘でも、同じ夢を持つもの同士がネット上で集まり、シェア買いすることによって、低価格で夢の別荘を手に入れることができるのです。このように、個人の力では手の届かない高価すぎる買い物でも、ネット上で繋がり、シェア買いによる共同購入という形をとるという考え方が今後拡大することで、個々の夢を叶えていく人が増加していくかもしれません。

いくつか事例を紹介してきましたが、なぜここまで「他人とシェア買い」が盛り上がっているのでしょうか。
理由の一つとして、シェア意識の浸透が挙げられるかと思います。カーシェアやモバイルバッテリーのシェアなど、モノを借り貸しするシェアリングエコノミーが世の中に広く浸透したことで、これまで自分ひとりでモノを所有することに価値を感じていた生活者が、だんだんと個人所有における価値が希薄化し、シェアに対しての意識が徐々に高まってきたのではないでしょうか。
また、世の中的に円安などによる物価高騰や高齢化に伴う資産形成の思想拡大も相まって、お財布に優しい買い物をしたいという意識が拡大し、合理的にネット上で商品のシェア買いや資産のシェア買いをするようになってきていると考えます。
そして、たとえ友人でも家族でもない赤の他人でも、ネット上でシェアして買うという行為自体が、仲間意識も相まって、生活者にとっては、楽しく喜ばしい行為と感じ始めているのではないでしょうか。

最後に、「他人とシェア買い」のビジネスチャンスについて、少し考えてみました。

「他人とシェア買い」のビジネスチャンスの例
■高級車・スーパーカーのシェア買いサービスの展開
■漁船のシェア買いによる釣りサービスの展開
■畑のシェア買いによる共同農家サービスの展開
など

個人的にシェアという行為は非常に好ましい行為なので、積極的にシェア買いを増やして、少しでも節約できたらなと思います。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

石井 拓弥(いしい・たくみ)
九州博報堂 / 博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局
ヒット習慣メーカーズ メンバー

2021年九州博報堂に入社し、統合プラニング職に従事。
2023年から博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局に所属。
アウトドア派。旅行が趣味で、1番好きな国はハワイ。老後はハワイに住みたいと思っている。

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