こんにちは。ヒット習慣メーカーズの永井です。
長い夏のせいか、仕事に勤しみすぎたせいか、気がつけば2023年も残り3ヶ月。私事ですが、今年は働き方が変わったり、入籍したりと非常にバタバタな一年で、現在新たなライフスタイルの適応に試行錯誤中なのですが、家に帰れば料理上手なパートナーがいつも手料理をつくってくれていることには感謝の念に堪えません。とはいえ、忙しさを言い訳にするわけにもいかず、自分も時折キッチンに立ってはみるものの、すでに料理の腕は錆びきっており、料理というより調理なものばかりになってしまう始末。いつの日か美味しいものを作ってパートナーを驚かせたいという小さな野望を抱きながら過ごしています。
世の中には私のような思いを持つ人も少なくないかと思いますが、そんな方に朗報があります。それが「半手作り」料理。料理をイチから手作りするのではなく、惣菜など出来合いのものを少しばかりアレンジして、本格的な料理に変貌させる、生活者の新たな料理習慣です。
下記のGoogleトレンドにあるように、「冷凍食品」や「惣菜」など出来合いのものの検索数が上昇しています。日本は伝統的に、家庭の食事は内食が主流でありましたが、ここ最近では中食需要が非常に高まっているのがわかります。とはいいつつも、時短や手間抜きのためにすべてを出来合いにしてしまうのはどこか後ろめたさを感じるものですが、その中で新たに生み出されたのが「半手作り」になります。
冷凍食品と惣菜の検索数推移
そこで今回は、「半手作り」をテーマにいくつかの具体例をご紹介します。
まずひとつが、惣菜のアレンジです。
スーパーなどでパック売りされている惣菜に手作りソースをちょい足しするのが定番化してきており、さらに最近では惣菜をあえて崩して、卵とじや巻きずしの具材にするといった、見た目もまるっきり変貌させる半手作り料理がレシピサイトで人気を集めています。揚げ物やポテサラなど難易度は高くないが意外と時間がかかってしまうものを揃えているのが惣菜コーナーの良さであるので、半手作りで時短にもなり手作り感も味わえるのがうれしいですね。
次は、コンビニの冷凍フルーツの活用です。
料理上手な友人に教えてもらって気づいたのですが、最近はコンビニエンスストアの冷凍フルーツが充実しています。実際に冷凍棚を覗いてみると、かなりのバリエーションが展開されており、自家製デザートやスイーツに活用されているようです。ここ最近値上がりが著しく、足が早いのがフルーツの難点ですが、好きなときに好きな量だけ使えるという使い勝手のよさはありがたいですね。
最後は、お菓子の食材化です。
SNSを見てみると、お菓子をご飯のように食べる人が増えているようです。かくいう私も学生時代、パイ菓子をパンのごとく主食として食べていたのですが、SNSでさらに詳しく調べてみると、スナック菓子をサラダのトッピングとしてかけたり、炊き込みご飯の具材やマッシュポテトにしたりするなど手作り料理のアクセントとして、出来合いのお菓子を活用しています。手作りする労力はあまり変わりませんが、自分では作れないお菓子を食材化することで、料理がよりリッチな味わいになるようです。
さて、いくつか事例を紹介してきましたが、なぜ「半手作り」が注目されているのでしょうか。
ひとつは、家庭料理の簡便化に対する反動的な欲求と考えます。人はあえてちょっとした手間をかけることでその行為や対象に愛着を持つとされ、これは不便益と言われています。マーケティングの世界でも、合理化なものばかりで溢れると、逆に不便なものがヒットすることがよくありますが、毎日のごはんが出来合いのものだと便利である反面、味気なさを感じるのも事実。エフォートレスさを保ちつつ、ちょっとした創意工夫で自分らしさや手触り感を感じたいという欲求も高まっているのだと思います。
もうひとつは、食のエンタメ化です。コロナ禍でも家族みんなで楽しむホットプレート料理が人気を博したり、以前紹介したvol.275『ビジュいスイーツ』のように楽しむための食が注目を集めており、食というものが美味しいだけではなく、他者と楽しくコミュニケーションを取るためのある種のエンターテイメントになりつつあります。「半手作り」も、ラクしてただ美味しいものをつくるのではなく、料理自体を少しでも楽しみたいという生活者の意識の表れでしょうか。食べる人のためのレシピではなく、作る人のためのレシピが求められているのかもしれません。
最後に、「半手作り」のビジネスチャンスについて、少し考えてみました。
今回、半手作りについて調べる中で、こんなものまで簡単に作れるのか!というレシピが多々あり、次の週末はパートナーにドヤ顔で料理したいと思います。(このコラムが読まれないことを祈りながら)
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
2018年北海道博報堂に入社し、マーケティング職に従事。2021年から博報堂生活者エクスペリエンスクリエイティブ局に複属。多拠点居住が夢。ここ最近は実証実験と称して、北は北海道、南は沖縄までさまざまな場所でワーケーションを試みている。