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XRの無限の可能性を示すカンファレンス──AWE視察から見えてきたもの

2023.11.13
XR技術の黎明期であった2010年にスタートし、以後毎年開催されてきたXRカンファレンス「AWE(Augmented World Expo)」。今年の5月31日から6月2日に米カリフォルニア州サンタ・クララで開催されたAWE2023には、博報堂DYホールディングスマーケティング・テクノロジー・センターの3人のメンバーが参加しました。カンファレンスではどのようなテクノロジーが紹介され、どのようなメッセージが発信されたのでしょうか。XRの未来を示したAWE2023について、視察したメンバーたちに語ってもらいました。

目黒 慎吾
博報堂DYホールディングス
マーケティング・テクノロジー・センター
上席研究員 / テクノロジスト

三浦 慎平
博報堂DYホールディングス
マーケティング・テクノロジー・センター
研究員 / テクノロジスト

平沼 英翔
博報堂DYホールディングス
マーケティング・テクノロジー・センター
テクノロジスト

AIがXRを加速させていく

──2023年のAWEに3人で参加したとのことです。まず、このカンファレンスの概要をお聞かせいただけますか。

目黒
AWEはXR業界で世界最大規模のカンファレンスで、開催されるのは今年で14回目になります。講演・セミナー、展示、アワードの大きく3種類のコンテンツで構成されていて、世界中から、IT企業、スタートアップ、規格団体、大学・研究機関、通信インフラ企業、ハードウェアメーカーなどの関係者が毎年参加しています。近年では、建設、医療、自動車など、いわゆるIT関連ではない企業の関心も高く、今年の参加企業は300社、参加者は5000人を超えました。もちろん、日本からも多くの方々が参加しています。
今年の AWEを捉える上でのキーワードの1つが「R.I.P.METAVERSE(さようならメタバース)」でした。生成AIの登場でテクノロジーの世界では一気にAIの注目度が高まり、人材や投資もAIにシフトしている。結果、メタバースの勢いが減じているように見える。メタバースは終わってしまったのだろうか──。そのような現状を表現したキーワードです。

AWEの創設者でもあるオリ・インバー氏は、カンファレンス冒頭の講演でいくつかの視点からその見方に反論しました。現在のXRのマーケット規模は約5.4兆円で、ユーザーは世界でおよそ12億人にのぼっている。AWEにもフォーチュン・グローバル5000にランクインしている企業の関係者がたくさん参加している。それだけを見ても、メタバースやXRが終わったとは到底言えない。それがインバー氏の見解でした。

さらに彼は、XRに対するネガティブな意見の典型を6つ挙げて、それぞれに対する反証を提示しました。例えば、「XRを活用するためのハードウェアがなかなか汎用化されない」という意見があります。これに対しては、「ハードウェアは劇的な進化を遂げている。普及するのはまさにこれからである」というのが彼の反論でした。また、「XR用のグラス型デバイスはデザインがクールではないので誰もかけないだろう」という意見に対しても、「デバイスのデザインはどんどん洗練されてきている。英国の貴族が傘を日常生活に取り入れるようになるまでに200年かかっている。それよりもはるかに速いスピードでXRデバイスは人々に受け入れられていくだろう」と話していました。

著作『スノウ・クラッシュ』で"メタバース"の名称を生んだSF作家ニール・スティーヴンスン氏(右)とオリ・インバー氏(左)

もう1つ、とくに重要だと思われた論点が、先にも触れたAIとの関係です。XRはAIにどう伍していくのか。それについてインバー氏は、「AIは戦う相手ではない。むしろ、AIがXRを加速させるのだ」と語りました。例えば、空間にパース線を引いていくと、そのパース通りの3Dモデルと空間が生成される ソリューションがあります。同じように、テキストからバーチャル空間に3Dを生成する研究も進んでいます。これらは、まさにXRと生成AIを組み合わせたテクノロジーです。

つまり、XRはAIのインターフェースの1つになりうるということです。ChatGPTはAIのインターフェースを文字ベースの対話システム(=Chat)にしたことによって爆発的に普及しました。今後、AIが認識したものや生成したものをVRやARで「視認」させていく仕組みが確立すれば、XRはChatGPT以上にビジネスや人々の生活に浸透していく可能性がある。それがインバー氏のメッセージの核心でした。

──「生活者インターフェース市場」の拡大を提唱している博報堂DYグループにとっても、たいへん重要な論点と言えますね。

目黒
そのとおりです。マーケティング・テクノロジー・センターでは、まさにXRを「次世代顧客接点」と捉えてこれまで研究を続けてきました。わが意を得たり、という感じでしたね。

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