小島 武仁氏
東京大学大学院経済学研究科 教授
東京大学マーケットデザインセンター センター長
秋本 義朗
博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ
ミライの事業室 第一事業開発グループ グループマネージャー
諸岡 孟
博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ
ミライの事業室 ビジネスデザインディレクター
諸岡
これまで民間企業とアカデミアの連携は、理工系、情報系、医療創薬系といったいわゆる理系分野での取り組みが主流でした。しかし、2021年度から運用がはじまっている国の「第6期科学技術・イノベーション基本計画」では、人文科学や社会科学など文系分野の知の積極活用も進めていく方針が掲げられています。近年、文理融合や学際領域などのキーワードが飛び交っていましたが、これから理系文系の境界が薄れていく流れはいっそう加速していきそうですし、もちろん僕らの取組でも人文科学・社会科学との掛け算をいろいろ仕込んでいこうとしています。その一環として、今回は経済学の一分野である「マーケットデザイン」を専門とされている小島先生の研究室にお邪魔しています。今日は、そのマーケットデザインと僕らの新規事業との掛け合わせについていろいろお話をできればと思っています。
小島先生の研究室でまず目を引くのが、壁一面のホワイトボードを埋め尽くすものすごい量の数式の数々!これは壮観ですね。小島先生はもともと学生時代に理系から経済学に進学されたと聞きました。
小島
そうなんです。学部では数学を専攻しようと思っていたのですが、あるとき友人が貸してくれたゲーム理論の本との出合いがきっかけで経済のおもしろさを知り、そのまま経済学部に進学しました。その後ハーバード大学の大学院に進学し、アルヴィン・ロス教授の下でマッチング理論の研究をスタートしました。
諸岡
小島先生とマッチング理論の出合いを演出されたアルヴィン・ロス教授は、その後2012年にノーベル経済学賞を受賞されていますね。ロス教授や小島教授の研究分野は、まさに経済学のホットトピックだと感じています。そのことは、スタンフォード大学で教授職だった小島先生が東大からラブコールを受けて東大教授に就任した際、東大がUTMD:東京大学マーケットデザインセンターという機関を新たに発足したことからも明らかです。
小島
日本に帰るか迷っていた時期もありましたが、東大が親身になって対応してくれまして、おかげさまで妻(高木悠貴先生)とともに東大で働くことができています。