小父内 信也氏
Asobica 取締役CCO
杉山 信弘氏
コミューン 執行役員CMO
奥山 貴弘
HAKUHODO EC+ リーダー
博報堂 ショッパーマーケティング事業局 局長代理
コマースDX推進グループマネージャー
島田 典明
HAKUHODO EC+ コンサルタント
博報堂 ショッパーマーケティング事業局
コマースDX推進グループ マーケティングプラニングディレクター
奥山
ECは「便利に買い物ができるチャネル」から、「人と人がつながる場」「生活者とのインターフェース」に変わりつつあると私たちは考えています。今回は、コミュニティやファンマーケティングとの組み合わせによってECがどう変わっていくか、その可能性を探っていきたいと思います。まず、「ファン」の定義について、ご意見をお聞かせください。
小父内
非常に重要な問いだと思います。ファンとは商品を買ってくれる人のことでしょうか。しかし、例えば「安い」というのがその人が商品を買う理由であるとしたら、次は他社のもっと安い商品を選ぶかもしれません。そういった購買者をファンと呼ぶことはできないと思います。私は、ブランドに対する「愛」や「熱量」がある人のことをファンと定義したいと思っています。愛や熱量があるがゆえに、ときには厳しいことも言ってくれる。それがファンだと考えています。
杉山
私は、「商品購入以外の行動を能動的に行う人」と定義しています。商品を購入していることを前提として、その商品を友だちや家族に紹介してくれたり、SNSでリコメンドしてくれたりする人がファンだと考えています。よくあるのは、「商品をたくさん買っている人」「商品にたくさんお金払っている人」がファンであるという誤解です。例えば、転売目的で商品を大量に買っている人は、その商品のファンではありません。逆に、あるアーティストのことがとても好きだけれど、お金があまりないから、年に1度の年越しライブには必ず行く。それ以外はサブスクリプションでアーティストの音楽を楽しむ──。そういった人は、使う金額に関わらずファンと言えると思います。
奥山
「ファンマーケティング」の定義についても、ご意見をお聞かせください。
小父内
まず、ファンとの関係性が事業の存続や成長に結びついているという点が欠かせないと思います。また、ファンとのコミュニケーションによってプロダクトやサービスが改善されるという視点も大切です。ファンの意見を聞いて、商品がブラッシュアップされ、それによってファンの皆さんに喜んでもらい、事業も成長する──。そんなサイクルを成立させることが、ファンマーケティングの理想ではないでしょうか。
杉山
ファンマーケティングとは、「ファンを対象とするマーケティング」ではありません。すでにファンになってくれている皆さんの能動的な行動を促し、それを事業活動につなげていく取り組みがファンマーケティングであると私は考えています。
島田
「ファンを対象とする」のではなく「ファンと一緒に行う」活動がファンマーケティングであると言ってもいいかもしれませんね。
奥山
ファンに、いわば「ブランドの協力者」になってもらうということですね。
小父内
ファンを「仲間」と表現するとわかりやすいですよね。ブランドをともに育てていく仲間ということです。
杉山
同感です。同じ方向に向いて進んでいく仲間と捉えると、イメージがわきやすいと思います。