
嶋 浩一郎
株式会社博報堂 執行役員
兼 株式会社博報堂ケトル 取締役・クリエイティブディレクター
横山 昴
株式会社博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局
アクティベーションディレクター
嶋:ショート動画は、スマホを開くとついつい見てしまうよね。
横山:ついついどころじゃなくて中毒ですよ。僕はショート動画を愛しすぎて、生活に必要な全ての情報をショート動画から得よう!と覚悟をきめて1年間修行してみたんですよ。結果、まわりの話題についていけない35歳になりました。これが、ショート動画に全振りした男の末路です(笑)。
嶋:まあ、とにかく自分で試してみるってのは偉いわ(笑)。ショート動画はアテンションが強いコンテンツだと思うのだけど、生活者はショート動画に何を求めているの?
横山:さまざまな見解があると思いますが、刺激を求めています。ショート動画は情緒的な価値でワクワクし、機能的な価値で腹落ちをするという一連の流れを短時間で楽しむことができる。ユーザーは数十秒の尺の中に「驚き」や「興奮」、さらには「学び」や「納得」を求めているんですよ。
嶋:なるほど、「驚き」と「学び」の2要素か。とはいえ、タイムラインの中で瞬時に消費されるのがショート動画じゃない。長期に渡って印象に残る動画っていうのはありうるのかな?
横山:うーん、そうですね。印象に残す方法は2つあります。
1つ目は、印象に残すために同時に5つの興味を刺激し“コンテンツになる”ということです。たとえ広告であっても、視聴価値のあるコンテンツになることでガードを下げることができ、印象に残りやすい。オリジナルのチェックシートに書き込みながら企画をしています。

そして、もう1つが動画を“反芻”させること。
ショート動画は、一度視聴されたコンテンツでも違った形でフィードに流れることで、もう一度視聴されます。
僕は数回にわたってユーザーがコンテンツを消化、吸収していくサイクルを反芻と呼んでいるのですが、一度、印象に残った動画は見入ってしまう確率が高いので、複数の動画でどうやって反芻を生み出すかを大事にしています。
嶋:なるほど。その反芻をうまく活用できたら長期にわたるコンテンツになっていくわけだね。なんだか、そこにヒントがありそうだな。
横山:ある消費材の事例なんですけど、情緒と機能の両方から、半年以上継続的にコミュニケーションを展開して、「最近よく見るブランド」として認知されるようになった例もあります。結果、TikTok売れをしただけでなく、そのブランドのファンの定着に成功したんです。
嶋:なるほど。繰り返して、情緒的な価値と機能の説明を見ることで、ブランドに対する理解も深めたんだね。
横山:ところで、ショート動画ってゴロゴロしながら視聴して、コンテンツを何度も見てって、牛になっちゃいますよねー。夕ご飯を食べたあとに横になってみるショート動画がこれまた格別なんです。
嶋:うーん、昴くん。それは個人の感想だね。