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【第9回】宇宙産業”第四フェーズ突入”から見通す、社会課題型新規事業の糸口──東大・中須賀真一教授×博報堂ミライの事業室(前編)

2024.01.18
世界中で宇宙スタートアップの活動が盛んになり、私たちにとって宇宙はいっそう身近なものになりつつあります。博報堂ミライの事業室のメンバーが東京大学の先端分野の研究者と語り合う連載コンテンツの第9回は、日本の宇宙工学分野の第一人者であり、政府の宇宙政策委員なども歴任する中須賀真一教授との対話をお届けします。宇宙産業と新規事業の共通点、宇宙と私たちの生活やビジネスとのつながり、そして人類が宇宙を目指す意味──。「宇宙」をテーマとしたスリリングな対談が展開されました。

中須賀 真一氏
東京大学大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 教授

吉田 充志
博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ
ミライの事業室 ビジネスデザインディレクター

諸岡 孟
博報堂/博報堂DYメディアパートナーズ
ミライの事業室 ビジネスデザインディレクター

第一人者の中須賀教授が語る、宇宙産業の現在地

諸岡
中須賀先生は、日本の宇宙産業の発展に中心人物として長く携わってきています。これまでの歴史的経緯をどう見ていらっしゃいますか。

中須賀
これまでの宇宙開発の流れを4つの世代に区分するとわかりやすいと僕は考えています。第一世代は第二次世界大戦の前までで、この時代には宇宙開発はほぼ研究者の個人的な研究レベルにとどまっていました。第二次大戦後に各国が宇宙開発に注目するようになり、とりわけアメリカと当時のソ連が激しい開発競争を繰り広げました。この時代に開発を主導していたのは、民間企業ではなく国でした。この段階が第二世代です。

その後、1950年代になって、国が企業に投資して技術を育成し、企業から生まれた新しい技術を国が使うというスタイルが定着していきました。これが第三世代です。つい最近まで、宇宙開発はこのスタイルで進められていました。

一方、企業が自ら投資したり、ファンドからお金を集めたりして新しい技術を生み出し、それを国に提供するという新しいスタイルも広まってきています。企業が国をクライアントにするスタイルです。このスタイルをもって宇宙開発は第四世代に入ったと言えます。

諸岡
宇宙産業では民間主導というワードをよく目にします。第四世代をあらわすひとつの特徴なのでしょうか?

中須賀
まさに大きな特徴です。まず、企業がロケットを開発して発射までおこなわれるようになりました。ビジネスベースに乗るよう、市販部品などを駆使するケースも出てきています。そうした企業の取組の出現によって、打ち上げの頻度が増加し、打ち上げにともなうコストが低下してきています。

一方で100㎏以下の超小型衛星や500㎏以下の小型衛星の登場と技術革新により、多くの人が衛星開発に参加し、それでビジネスまでできるようになった結果、打ち上げる人工衛星の数も増加しました。

諸岡
小型の人工衛星と言えば、中須賀先生は超小型人工衛星の代表的プレイヤーです。空き缶を機体にする缶サットは中須賀先生の代名詞かもしれませんね。

中須賀研究室の詳細はこちら →→ https://www.space.t.u-tokyo.ac.jp/

中須賀
宣伝ありがとうございます(笑)人工衛星の分野にも最近企業プレイヤーが増えてきてくれてうれしく思います。挙がっていた民間主導というキーワードは、国からの働きかけなどにかかわらず企業による主体的な創業や参入、開発、サービス化が本格化しているという意味です。

吉田
アメリカではTESLA・X(旧twitter)のイーロンマスク氏や、amazonジェフベゾス氏などインパクトのあるプレイヤーによる宇宙産業参入が目立ちますが、国内でもスタートアップや大企業による創業や参入がここ数年で相次いでいる印象です。

中須賀
2023年6月には宇宙基本計画の改定が閣議決定され、宇宙産業の国内市場規模を2030年代の早い段階で8兆円にまで倍増させる(2020年比)方針が打ち出されました。宇宙を日本の成長産業に育てようと、日本政府も力を入れているのです。

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