
湊 雄一郎氏
blueqat株式会社 CEO
ムカルジー•サヤン氏
blueqat株式会社 研究員
加藤 博司
博報堂DYホールディングス
マーケティング・テクノロジー・センター 上席研究員
藤原 晴雄
博報堂DYホールディングス
マーケティング・テクノロジー・センター 上席研究員
──はじめに、量子コンピュータとは何か、基礎知識がない人にも理解できるようにご説明いただけますか。
湊
従来のコンピュータは、チップをどんどん小さくし、それをたくさん搭載することによって性能が向上してきました。しかしチップが極小になると、物理法則が変わって、それまでとはまったく異なるルールによってコンピュータを動かさなければならなくなります。そのルールに基づいて計算を行うのが量子コンピュータです。
──具体的に、どのようにルールが変わるのですか。
湊
従来のコンピュータはデジタルの法則、つまり0と1の組み合わせによって計算を行っていました。それに対して量子コンピュータは、「重ね合わせ」という量子の法則によって、0か1かを明確に区別せずに、まとめて計算することができます。それによって計算の手順が大幅にショートカットされます。
わかりやすく表現すると、「0+0=0」「0+1=1」「1+0=1」「1+1=2」という4つの計算式があった場合、従来のコンピュータは、それを順に計算していたわけですが、それを1種類の計算式にしてしまうわけです。それによって、これまではコンピュータを何百台も繋がなければ実現できなかったような膨大な量の計算を比較的短時間でできるようになるわけです。

加藤
量子コンピュータは、問題を解く方法の違いによって、「量子ゲート方式」と「量子アニーリング方式」の2つに分類されます。当初、量子アニーリング方式に注目が集まりました。これは、組み合わせ最適化問題に特化した計算機です。一方近年では、いわゆる汎用型量子計算機として量子ゲート方式に注目が集まっている状況です。まだまだ発展途上の計算機ですが、量子ゲート方式の計算アルゴリズムの中には、古典コンピュータ上の計算アルゴリズムを上回る性能を持つものがあり、今、我々はそこに注目しています。
