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ヒット習慣予報 vol.303『ハイブリッドラン』

2024.02.13
#トレンド

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの石井です。

みなさんは日常的に運動していますでしょうか?私は、毎年恒例の正月太りをしてしまったので、2024年に入ってからランニングや筋トレを意識的にするようにしています。以前は、ジムに入会して室内で運動をしていたのですが、屋外で運動する方が気持ち良いので、今年は、外で走ったり公園で筋トレしたりするようにしています。しかし、その運動習慣を続けることは難しく、今までにも何回も挫折しているので、今年は頑張って継続的に実施していきたいと思っています。
最近は、世の中的にも健康志向やダイエット意識の高まりもあって、休日や平日の夜などに公園や市街地でランニングを楽しむ人の姿を見かけることが日常になってきました。
Googleトレンドで「走る」というワードを調べてみると、検索ボリュームが右肩上がりに徐々に伸びており、走ることに対しての意識が強まっていることがわかります。

「走る」の検索数推移

出典:Googleトレンド

そんなランニングですが、これまでのスタイルから少し進化したランニングを行う人が増えているようです。私がそうであるように、走る行為は、身体的にも精神的にもかなり負荷がかかり、継続させるのが困難であるという声が多い中、単に走るだけではなく、新たな楽しみ方を加えて走ることで、ランニング習慣を継続させるハイブリッドなランニングが注目されています。
今回、ご紹介する「ハイブリッドラン」は、ランニング習慣を定着させるために、走るという行為以外の楽しむ目的を設定し、その目的を遂行しながら走るという新しい社会の兆しに着目しました。ここからは、具体的な動向を一つずつ紹介していきたいと思います。

まずは、「旅ラン」です。旅ランは、旅行の際に現地で行うランニングです。競わず、タイムを計測せず、自由に美しい風景やお店、観光スポットなどの目的地を巡るランニングです。気の向くまま、または気の合う仲間と旅するように走るなど自由度を高め、目的地までの寄り道を楽しむことができるランニングになっています。走った後は、温泉や美味しい郷土料理を堪能し、一石二鳥の楽しみ方をしているようです。走りながら、気になる場所や出会いがあれば、自由に立ち止まり、訪れた街の意外な魅力を発見していく。そんな気ままに走れるのが旅ランの魅力の一つです。旅行先で、ただ観光に行くよりも、旅ランするほうが、その街の景色や観光スポットが心に残る旅行になるようです。そして、旅ランの楽しさを一度知ると、出張や旅行をするときは必ずランニングシューズを持参して、その土地を走って巡る習慣がついたという人も多いようです。

次は、「シャワーラン」です。シャワーランは、雨の日にあえてランニングを行うランニングです。これまで、ランナーにとって雨は敵とみなされており、雨の日は、健康面や安全面的にも走ることを断念する人が多く、雨季に入ると、走るタイミングをとることが困難になり、継続していたランニング習慣も雨に妨げられる人が多くいました。しかし、最近では、あえて雨の中を走り、雨に濡れて走ることを楽しむ人が増えているようです。雨が降ることで気温が下がり、ランニング中の体温の過剰な上昇を防いだり、雨によって湿度が上がることで、普段以上に楽に呼吸が行えるため、通常のランニングよりも快適に走ることができます。そして、何よりも雨を浴びながら走るという、非日常的な行為が特別感を生み出し、気持ちの良い気分で走れることが、人気の理由の一つとなっているようです。また、シャワーランは、雨の日でも休まず走ることができるため、ランニング習慣を継続的に続けることができることも魅力となっています。

最後は、「プロギング」です。プロギングとは、スウェーデン語の「plocka upp(拾う)」と英語の「jogging(走る)」を合わせた造語で、ジョギングをしながらゴミを拾う新しいランニングです。ジョギングをしながらごみ拾いを行うことで、身体と心、そして街をきれいにするという、社会貢献を目的としたSDGsなランニングスタイルです。ランニングをすることが、自分のためだけでなく、街のためにもなるという社会貢献のマインドがより継続的なランニング習慣につながっているようです。また、適度な運動はストレス解消にも効果的ですが、そこへごみ拾いという社会貢献が加わることで、通常のランニングよりも爽快感が高まることが人気の理由の一つとなっています。プロギングの際は、トング等は使わず、軍手とスポーティーな格好で行うことで、ごみ拾い感を無くすことでポジティブに楽しむことができます。そして、プロギングは有酸素運動のジョギングに、ごみを拾うためのしゃがむ動作が加わるため、通常よりもカロリーの消費量がアップし、ダイエットや筋トレの効果を増幅させるようです。

いくつか事例を紹介してきましたが、なぜここまで「ハイブリッドラン」が盛り上がっているのでしょうか。理由として、これまでランニングは、多くの人が自分の健康のために「やらなければならないもの」として認識していたと思いますが、旅行や雨、ゴミ拾いなど通常のランニングでは味わえない特別な爽快感や非日常感が、ランニングに対する意識を前向きなものに変え、ランニングが「やらなければならないもの」から「やりたいもの」に変化したことで、新たなランニング習慣として、定着し始めているのではないでしょうか。また、健康意識が高まる中、物価の高騰でトレーニングジム等の屋内運動施設の値上がりを受けたことにより、屋外で効果的な運動を模索する人が増え、外でしか味わえないランニングスタイルを楽しみ始めているのではないでしょうか。

最後に、「ハイブリッドラン」のビジネスチャンスについて、少し考えてみました。

「ハイブリッドラン」のビジネスチャンスの例
■走りながら勉強するリスニングアプリの開発
■花見×ランニングイベントの開催
■ランニング仲間と繋がるハイブリッドランプラットフォームの開発
など

今年こそは、しっかりとランニングを続けたいと思っていますので、田舎者の私は、都会の街を走る都会ランを楽しんでみたいと思います。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

石井拓弥(いしい・たくみ)
九州博報堂 / 博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局
ヒット習慣メーカーズ メンバー

2021年九州博報堂に入社し、統合プラニング職に従事。
2023年から博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局に所属。
アウトドア派。旅行が趣味で、1番好きな国はハワイ。老後はハワイに住みたいと思っている。

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