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事故のない世界を目指す。共創する自動車保険「&e」

2024.03.21
#生活者インターフェース市場
テクノロジーの進化によって全てのモノがつながることで、新しい体験やサービスの可能性がうまれる「生活者インターフェース市場」。この新しい市場における博報堂の取り組みの一つが、イーデザイン損保の「&e(アンディー)」のパートナー業務だ。「&e」は「事故時の安心だけでなく、事故のない世界そのものを共創する」というコンセプトのもと、IoTセンサーで取得した運転データなどを活用した取り組みを行う新しいコンセプトの自動車保険。このサービス設計の根幹から並走している。イーデザイン損保 取締役社長 桑原 茂雄氏と、博報堂の東谷光敏と坪野愛に、「&e」で生活者とのインターフェースが増えることにより社会や生活者にどのような存在意義を提供していけるのか伺った。

「事故のない世界をつくる」という保険自体のコンセプトチェンジ

桑原
「&e」は、さまざまなテクノロジーと保険を組み合わせたサービスで、お客さまの自動車にIoTセンサーを積載してもらい、このセンサーとスマートフォン向けのアプリを連携させて利用します。

事故が発生した場合には、センサーが衝撃を自動検知。アプリから1タップで事故連絡が完了します。さらに、検知した衝撃やスマートフォンのGPSデータをもとに、事故前後の車両の速度、衝撃、損傷などのデータを事故担当者が把握し、事故の早期解決に役立てることやお客さまの不安を軽減するためのサポートができます。

また、急ブレーキ、急ハンドル、急加速などの情報をセンサーが計測し、運転の安全性を評価する「運転スコア」を算出します。お客さまは自身の運転傾向を確認でき、危険行動の有無などを把握し、運転を改善するための自己学習ができるサービスです。

社長に就任した2018年当時に感じていたのは、自動車保険は自分から進んで購入したいものではないし、どれも同じようで分かりにくい。このままではCM出稿量と価格だけの勝負になり、生活者との距離が遠いままになってしまうと危惧しました。そこで、「お客さまが進んで加入したくなる自動車保険」を目指そうと考えました。クルー(社員)と論議を重ねた結果、「事故の後に役立つ保険」に留まらず、豊富な事故対応の経験を生かして、「そもそも事故が起こらない世界をつくるべきだ」という考えのもと、事故のない世界を目指す自動車保険「&e」が誕生しました。

急ブレーキ、急ハンドル、急加速などセンサーが検知した情報から運転の安全性を評価する「運転スコア」が算出される

東谷
「&e」はお客さまのお車にIoTセンサーをつけてもらい、センサーから得られた運転データを通じてお客さまが様々なサービスとつながり、そのデータを分析することで、生活者にとってよりよいサービスが提供できる。まさに博報堂が考える生活者インターフェース市場の広がりを感じられる取り組みです。

坪野
「&e」のマーケティング戦略の検討にあたり、私たちは目標契約数を達成するためのご提案から始めたのですが、桑原さんは「契約数は考えなくていい。まずは、“事故のない世界”に共感してくれる、信じてくれる仲間に加入していただくことを最優先に考えよう」と明確におっしゃっていました。既存のネット保険とは全く異なるサービスになる、という強い覚悟を感じました。

桑原
獲得単価がどうとか、既存のネット損保の攻め方ではなくまずは保険自体をコンセプトチェンジして、「事故のない世界を目指す」というところに共感してもらうのが第一歩ですから。それがないのに獲得単価とか言っていたら、結局従来と変わらない戦い方になってしまう。

イーデザイン損害保険株式会社 取締役社長 桑原 茂雄氏

東谷
まずは共感してくれる仲間をつくる方法を考えることと、お客さまに提供するサービス体験を磨きこむことこそが最優先だと、意識を変えて挑む必要がありました。

イーデザイン損保さんへの向き合い方も抜本的に変えなければいけないと感じました。「プレゼンしてフィードバックから2週間後に企画書を」というような従前の仕事の進め方では、その間に状況は変わりますし、本質的な論議ができず「&e」自体も良くならない。そこで、日々のやりとりをよりスムーズに行えるよう、博報堂チームがいつでも本社に伺える環境をつくってもらうことで、立ち話やチャットで、桑原さんに壁打ちする感覚で提案を行えるようになりました。今は、博報堂のメンバーが常に2-3人ほど、クルーのみなさんと並んで働いています。みなさんとの日々の会話から仕事をつくっていく、エージェンシーとしての働き方がすごく変わったので非常に感謝しています。

株式会社博報堂 チーフビジネスプロデューサー 局長代理 兼 部長 東谷 光敏

生活者発想の博報堂が提案したコミュニケーションプラン

坪野
「事故のない世界を目指す」というパーパスだけ掲げても生活者との距離は遠いままです。仲間になっていただくには、「本気でやっている」「自分にも価値がある」と感じてもらうことが重要だと考え、お客さまに限らず、もっと広く、パーパスに共感いただける産官学と一緒にプロジェクトを行う「Safe Drive With」というスキームを提案させていただきました。

これは単なる広告コミュニケーションでなく、クルーのみなさんがつくったパーパスを<表現する場>という価値もあると思います。実際に始動すると、クルーの方から「この会社と組んでこういうアクションをしましょう」というアイデアをいただくようになりました。エーザイ社との安全運転と運転寿命をのばすための取り組み「のうKNOW」や、子どもの交通事故をテーマにした「もしかもプロジェクト」など、現在では「Safe Drive With」のプロジェクトは170件(2022年10月時点)まで増えています。

これらの取り組みは、これまでの自動車保険が「事故のとき」にしか接点がなかったものが、もっと日常的に触れるサービスになったことを象徴しています。産官学が保有するデータや、アプリユーザーの運転データから危険エリアを抽出し、事故削減の取り組みに活用しており、例えば「もしかもプロジェクト」では、危険エリアにピンを立てた地図を無料公開したり、出張授業や飛び出し防止デバイスの開発をしたり、生活者との接点が広がっています。

株式会社博報堂 ビジネスプロデューサー 坪野 愛

東谷
アプリユーザーの運転データを分析することで、事故を予防する様々な可能性が広がります。事故が起こりやすい場所をシミュレーションしたり、アプリと連携した機能開発も検討中です。さらに、取り組みに共感してくださる産官学とタッグを組むことで、例えばウェアラブルデバイスで計測した心拍数・睡眠データ、天候データを運転データと組み合わせて、頭痛や気分の不調など運転に影響しそうな体調変化を察知する、というアイデアも生まれました。

博報堂は長年生活者の行動を見続けてきたので、様々なインターフェースで取得したデータを使い新たなサービスやソリューションを生み出すことができます。

生活者とのインターフェースが拡大し事故のない世界の実現が近づく

桑原
お客さまからの反応として、アンケートに「事故のない世界をつくる、というパーパスに共感しました」と書いていただくことが多くなりました。また「&e」のお客さまが事故を起こしてセンターに電話をくださった際に「事故のない世界に共感して入ったのに事故を起こしてしまい、お役に立てず申し訳ないです」と言われたこともあります。そんなお客さまが増えてきている実感がありとても嬉しいし、これこそが金融機関が生活者と向き合うべき姿だと感じるのです。金融機関はもともと機能をご提供するプロダクトアウトの発想なのですが、それを逆転させて生活者の発想でサービスを提供していく。自然にお客さまに受け入れていただくということが必要で、「&e」はそれができつつあるかな、という手ごたえがありますね。この先、お客さまの数を増やさないと事故のない世界の実現は叶わないので、我々のパーパスを強化してお客さまを増やしたい。そのプロセスを博報堂さんと一緒に進めているところです。

坪野
「&e」は当初30~50歳代くらいのアーリーアダプターを想定していましたが、ご高齢のお客さまもいらっしゃって「安全運転の意識が高まって感謝している」という旨のコメントもあったと伺いました。加入理由は様々かと思いますが、パーパスに共感してくださる方が集まっていることを実感しました。さらにこのパーパスに共感して入社するクルーも増えているそうですね。

桑原
そうそう。増えてきていますね。ちなみに「&e」を発売するときに「ミッション・ビジョン・バリュー」を再定義したのですが、これも言葉のチョイスからデザインまで博報堂さんと一緒につくったものです。

東谷
今、広告業界にいて思うのは、パーパスだけつくっておしまいになってしまっていることが多い気がします。大切なのはSayingよりDoingじゃないですか。Doを真剣にやっているのがイーデザイン損保さんで、日々切磋琢磨して本当にDoを示していると思うんです。

桑原
私は事故を取り扱う保険会社の人間ですけど、やはり事故がないほうがいいわけです。実現することはかなり難しいし、保険会社とお客さまの一対一の関係だけでは不十分です。様々な方がこの「&e」に参加していただいて、より多くのデータがたまる。あらゆるデータと掛け合わせることで、事故をなくすためのサービスを考えることができます。あらゆる業界の方々とうまく共創しながら事故がない世界を目指していきたいですし、やがては、自動車事故以外のリスクでも同様のことが展開できればいいなと思います。

東谷
みなさんが契約してくださるとデータがたまり、そのデータが社会から交通事故を無くすために役立っていきます。事故のない世界は一人ではつくれません。お客さまの運転データを軸に、街や行政、企業のデータなどを組み合わせて事故のない社会をつくる取り組みに挑戦しながら、広告代理店という枠を超えて、サポートしていきたいです。

坪野
私は、パーパスの実現とビジネス成長のベストバランスを模索しつづけたいです。特に子どもが生まれてからは、子どもの事故を本気でゼロにしたいと強く思うようになりました。「&e」の利用者、協力してくださる方が増えることでデータがたまり、事故のない世界を実現できると信じているので、まだまだ道半ばですが、諦めずに挑戦しつづけます。

※「日経ビジネス電子版Special」2024年3月13日に公開
掲載された広告から抜粋したものです。禁無断転載©日経BP

桑原 茂雄氏
イーデザイン損害保険株式会社 取締役社長

1989年東京海上火災保険(現:東京海上日動火災保険)入社。超保険(生損保一体型保険)の開発、商品・事務・システム抜本改革プロジェクト、米国法人CIO(IT責任者)、ビジネスプロセス改革部長を経て、2018年4月にイーデザイン損害保険取締役社長に就任。同社では、商品サービス・システム・カルチャーなどを含む全社的なトランスフォーメーションを手がけ、2021年11月に「共創する自動車保険&e(アンディー)」を発売。

東谷 光敏
株式会社博報堂 チーフビジネスプロデューサー 局長代理 兼 部長

IT/金融/大手通信/プラットフォーマー/消費財メーカーなど幅広い業種をプロジェクトマネージャーとして歴任し、マーケティング戦略づくりからエグゼキューションまで一貫したサポートを実施。
クライアントCxOクラスと常時接続を行うことで、事業の本質的課題に向き合い、型にとらわれない解決策を提示し、クライアントビジネスに貢献する。

坪野 愛
株式会社博報堂 ビジネスプロデューサー

2015年博報堂入社。ビジネスプロデューサーとして、インフラ/住宅設備/人材/化粧品など様々な業種を歴任し、マーケティング・コミュニケーション領域だけでなく、ESGやコーポレートブランディング領域も手掛ける。2021年よりイーデザイン損保を担当。

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