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ヒット習慣予報 vol.319『冠婚葬祭キャッシュレス』

2024.06.18
#トレンド

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの石井です。

みなさんは現金を日常的に持ち歩いていますか?私は、最近もっぱらキャッシュレスな生活を送っており、ほとんど現金を持ち歩いておりません。主にQRコード決済のできるアプリを活用して、支払いを行い、友人とのお出かけや食事の精算の際も、気兼ねなく1円単位で精算できるので非常に便利に感じています。世の中的にも、さまざまな決済方法が生み出され始め、それぞれが自分に適した決済方法を探りながら、キャッシュレスの道へと進んでいるのではないでしょうか。
Googleトレンドで「決済」というワードを調べてみると、検索ボリュームが右肩上がりに徐々に伸びており、「決済」に対しての関心が強まっていることがわかります。

出典:Googleトレンド

多くの決済方法が世に出始め、キャッシュレス化が進む中、日本の良き文化である冠婚葬祭のシーンにおいても、キャッシュレス化が進んでいます。
今回、ご紹介する「冠婚葬祭キャッシュレス」は、これまで冠婚葬祭のシーンにおいては、現金かつ、新券を袋に包み、相手にお渡しすることが正とされてきた中で、効率化を第一とし、現金ではなく、電子上のお金で相手へ贈るという新しい社会の兆しに着目しました。ここからは、具体的な動向を一つずつ紹介していきたいと思います。

まずは、「キャッシュレスなご祝儀」です。結婚式の際に必ず準備するご祝儀は、本来であれば、当日新券を素敵なご祝儀袋に包んで、袱紗から取り出して、受付の方にお渡しする。もしくは現金書留で郵送するのが、一般的なマナーとされています。しかし、ご祝儀もオンラインでやり取りできるサービスが普及し始め、すべてがオンラインで完結できるという利便性が評判となり、近年ご祝儀をキャッシュレスで贈る人が増えているようです。このメリットとして、新券、ご祝儀袋、筆ペンなどの必要なアイテムが不要になり便利というだけでなく、受付で渡したはずなのに受け取っていない状況に陥るトラブルや現金を受け取った後、紛失してしまったというトラブルなどを防ぐことも大きなメリットとされています。そして、なにより新郎新婦にとっても、トラブルが発生するリスクを減らすことができ、お金の管理の心配をする必要がないため、結婚式におけるご祝儀のキャッシュレス化が進んでいるようです。

次に、「キャッシュレスな香典」です。亡くなった人の霊前に供えるための金銭や品物を贈る香典ですが、その受け渡しをオンライン上で行うようになってきているようです。具体的には、葬儀会社がECサイトで香典や供物などを登録・販売し、そこに対して、葬儀前に参列者がECサイトでクレジットカードを使って購入する仕組みになっています。その後は、葬儀会社から喪主に、参列者のリストとともに、香典分の現金が銀行に振り込まれ、当日の参列時には、ECサイトで事前発行した二次元バーコードを受付時にタブレットで読み取り、参列者の情報を登録するため、喪主・参列者ともに非常に便利だということで、香典をキャッシュレスで支払う人も徐々に増えているようです。冠婚葬祭の中でも香典は、クレジットカードで購入するというスタイルが馴染みづらいものではありますが、昔からの日本の文化よりも効率化が重視され、葬儀の際の香典でもキャッシュレス化が進んでいるようです。

最後は、「キャッシュレスな出産祝い」です。出産の際に、大役を終えた母親に対して労いを込めて贈るお祝い金やギフトとされている出産祝いですが、最近、その出産祝いをデジタル上で効率的に行っている人が増えているようです。出産祝いを贈ったことがある人 の悩みとして、「何を贈っていいかわからない」「いつ会えるかわからない」などが挙がっており、逆に、今まででもらって嬉しかった出産祝いは何か?の問いに対して、多くの人が「現金・ギフトカード」をあげています(※)。そこで、出産祝いのお祝い金として、送金サービスを利用することで、のし袋の購入・書留での送付の手間が省けるだけでなく、遠方にいたとしてもしっかりと気持ちを伝えることが可能になっています。

いくつか事例を紹介してきましたが、なぜここまで「冠婚葬祭キャッシュレス」が盛り上がっているのでしょうか。理由として、コロナ禍で身近な家族や友人と気軽に会えない状況が続き、冠婚葬祭の際に直接お祝い金やお香典などを渡すことが困難になったことがきっかけとなり、日本の良き文化とされていた、「新券を素敵な袋に閉じ直接渡す」という行為を見直し、お金を贈るという本質はそのまま、新券を包んで直接渡すという非効率的な部分を改善することで、授与者と受領者がウィンウィンな関係を築くことができるようになったことが大きいのではないでしょうか。
また、キャッシュレス決済が世の中に普及し始め、「現金を渡す」ということの物理的価値が減少しているため、受け取り側も冠婚葬祭時のキャッシュレス対応を許容することができ始めているのではないでしょうか。

最後に、「冠婚葬祭キャッシュレス」のビジネスチャンスについて、少し考えてみました。

「冠婚葬祭キャッシュレス」のビジネスチャンスの例
■ご祝儀袋のNFTの開発
■開封演出を楽しむことのできるお年玉配布アプリの開発
■ネットで送金するとご祝袋に入った状態で届くご祝儀代行サービス
など

私自身、昨年結婚し、年内に式を行うので、ご祝儀はキャッシュレスなシステムを導入したいと思います。

※参考
【出産祝い】もらって本当に嬉しかったもの・困ったものは?先輩ママに聞いてみました
アニヴェルセル株式会社 omotteマガジン

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

石井拓弥(いしい・たくみ)
九州博報堂 / 博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局
ヒット習慣メーカーズ メンバー

2021年九州博報堂に入社し、統合プラニング職に従事。
2023年から博報堂 生活者エクスペリエンスクリエイティブ局に所属。
アウトドア派。旅行が趣味で、1番好きな国はハワイ。老後はハワイに住みたいと思っている。

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