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友だちともっと仲良くなりたい。全世代共通の根源的な思いを叶えるのが、位置情報共有サービス|シン密圏レポートリリース記念#2

2024.07.04
博報堂と博報堂DYグループのSIGNINGによる、生活者発想で経営を考える人間経済学プロジェクト「HAKUHODO HUMANOMICS STUDIO」。位置情報シェアに着目し、現代における親密さを捉え直す「シン密圏レポート」について、レポートの共同研究パートナーであり、位置情報共有サービス「whoo your world(以下whoo)」を運営する株式会社LinQの原田豪介さんと語ります。若者だけでなく、あらゆる世代に広がる可能性を秘めた位置情報共有サービスによって広がるコミュニケーションとは?
調査結果や「シン密圏」の定義について語った#1はこちらから
HAKUHODO HUMANOMICS STUDIO「シン密圏レポート」はこちらから

株式会社LinQ 代表取締役CEO 原田 豪介 氏

株式会社SIGNING ストラテジスト 牧之段 直也

位置情報の共有は手段にすぎない。大事なのは「友だちと仲良くなれる」こと

-シン密圏レポートのユーザー調査ではwhooのユーザーコミュニティに協力いただいたということですが、はじめにwhooを立ち上げたきっかけから教えてください。

原田: whoo の前にNinjarという匿名の質問アプリをつくっていたのですが、そのユーザーから「位置情報共有アプリをつくってほしい」という声をもらうようになりました。Zenly*の終了が発表されたタイミングだったこともあって、毎日100件くらい届き続けるんです。僕らはZenlyに対するリスペクトもありましたし、はじめはやりたくないなと思っていたけど、そこまで言われるとつくらなきゃいけないのかなって(笑)。
*フランスのZenly社が開発した位置情報共有サービス。2023年2月にサービスを終了。

-そこまで熱望された理由はなんだと思いますか?

原田:10代の若者にとって欠かすことのできない存在だったんだと思います。位置情報を共有するというのは手段にすぎず、大事なのはそのアプリを使うことで「友だちと仲良くなれる」ということ。位置がわかるとコミュニケーションのハードルが下がるんですよね。近くにいるかわかるから誘いやすい。実際whooを入れてから友だちと遊ぶ回数が増えたと言ってくれる子も多いです。友だちと仲良くなりたいというのは、若年層だけでなく、全世代共通の思いのはず。みなさんいつこの価値に気づいてくれるのかな、と思ってます(笑)。

牧之段:位置情報共有という言葉だけが一人歩きすると、若者がやっているエクストリームな行動のように見られがちですが、今回のレポートで伝えたいのは、全世代に共通する根源的な欲求を満たす可能性があるということ。
SNSが発達したことによって物理的な距離感が曖昧になり、どこにいるか、どんな価値観を持っているかもわからない人たちとのつながりの中で、メンタルヘルスへの悪影響が各所で指摘され始めているのも事実。 そんな現代を生きる人たちにとって、実際に会える半径数キロ以内にいる友だちの価値ってすごく高くなっていると思うんです。それはあらゆる世代に共通するし、いまだけでなく、これからの時代にどんどん広がっていく価値観なんじゃないかなと思います。

原田:世代の話でいうと、ユーザーから「おばあちゃんと使いたいから、シニア向けスマホでも使えるようにバージョンを落としてほしい」という声をもらって、そんな使い方があるんだと目から鱗でした。どこかに行っちゃったら心配だから、見守り用に使いたいというんです。こういう活用法もあるんだと、位置情報共有の可能性が広がる発見でした。

位置情報共有サービスは、ありのままの自分でいられる&リアルな体験が生まれるSNS

-位置情報を共有することは、ほかのSNSコミュニケーションとどう違うと考えますか?

原田:位置情報を共有することは、ありのままの自分でいられることだと思っています。ありのままの自分でいようって、トレンドワードのように言われることですが、ソーシャルメディアが発展すれば発展するほど、そうできなくなっている。反応をよくするためによりよいコンテンツを目指したり、過度に加工したり。本来SNSっていまの自分を映し出すものだったはずなのに、いまは昨日のパーティーの写真を今日アップしたり、本来の使い方とは変わってきていますよね。それって本当にありのままだったんだっけ?とモヤモヤします。

牧之段:数ヶ月前に行った海外旅行の写真を活動記録的にアップロードし続ける人も多いですよね。今回のレポートをまとめて思ったのは、これまでのコミュニケーションアプリでは、ユーザー同士がお互いの行動はわかっても次のアクションにつながらない。位置情報を共有すると、その先に出会いやリアルな体験が生まれていることが大きな違いではないでしょうか。それは、「いまのありのまま」を共有し合っているからこそ生まれることなんだと思います。

どちらが上でも下でもない。事業者とユーザーのフラットな関係が生む信頼関係

-今回の調査結果を見て率直な感想は?

原田:位置情報共有という言葉だけがフィーチャーされると、怖いとか、なんかイヤというイメージが先行してしまうんですよね。僕ら自身も、このサービスって若者しか使わないんじゃないかと不安に思うことがあったんですが、今回のレポートではじめて位置情報共有について言語化されたことで、やっぱり大人にも価値を感じてもらえるじゃん!と思えてすごくポジティブな気持ちになりました。どうしても毛嫌いする人が多いけど、このレポートを読むと、これまで使っていなかった人の意識変容が手に取るようにわかります。

-位置情報を知られることへの不安が先立って、楽しむというところまで意識が向かないのかもしれません。不安を払拭するためにアプリ開発で気をつけていることはありますか?

原田:まずwhooは友達以外とは使わないことを前提にしていますし、誰かが勝手に位置情報を見ることはできません。一時的に位置情報を隠しプライバシーを守る「ゴーストモード」もあります。そのうえで、利用規約やプライバシーポリシーなど、通常のアプリのように堅い文言でなく、できるだけ親しみやすい口調で伝わりやすく書くようにしています。ちなみに、ユーザーとのコミュニケーションはすべてタメ口。自分たちも人間だってわかってほしいんです。「ふざけんな!こんなアプリ使えねえ!」みたいなコメントも来るわけですよ。でも「そんなこと言わないでよ、僕たちも人間だよ」って言うと「そうだよね、ごめん」って返してくれる。ユーザーとの信頼関係を築くためにも、そういったコミュニケーションは大事にしています。

牧之段:whooのアカウント自体が「ちょっと年上のお兄ちゃん」みたいな感じなんですよね。従来の「事業者とユーザー」という関係性じゃない。

原田:ユーザーの初デートのプランをいっしょに考えてあげたりね(笑)。

牧之段:すごく新しい関係ですよね。よく企業とユーザーの共創と言われますが、それに一番近い形なんじゃないかと思います。

原田:事業者とユーザーって、どちらが上でも下でもない、フラットな関係だと思うんです。僕らはユーザーが使ってくれないと開発できないし、ユーザーは僕らが開発しないと使えない。どっちも大事だからいっしょにがんばろうよ、という関係を大事にしています。

人が移動した履歴は「生き様」そのもの。親しい人の生き様を知ることが価値になる

-いまは若年層を中心に使われていますが、これから上の世代に使ってもらうためにアプローチしようとしていることは?

原田:いまも「フリーズ」や「あいまい」といったゴーストモード機能はありますが、自宅が特定されたくないという人のために、家の半径500m以内に入ったら自動で消せるモードをつくるとか、エリアを限定して位置情報を共有するモードをつくるといった機能は検討しています。でもリアルタイムでの位置情報共有にこだわりがあるので、どうするかは検討中。
もうひとつやろうとしているのが、ディスカバー機能です。地図上で友達がおすすめしているランチの店が表示されたり、このあと雨が降りそうだとわかったり、いまいる場所に関する情報が発見できたら、よりよいコンテンツになると思っています。

牧之段:レポートでも「懐かしい未来」と表現していますが、自分の周りの人や信頼できる人からの「あの店よかったよ」 といった昔からある手触り感のある コミュニケーションにいま一度スポットが当たるといいですよね。人が移動した履歴って、嘘のないその人の生き様そのもの。親しい人の生き様を知れるってひとつの価値なのかなって。
はじめは位置情報の共有そのものに抵抗があった人も、実際に共有しはじめたらいつの間にかハードルを感じなくなり、こんなに遊べるんだという楽しさに価値を感じるようになっていました。そういった発見のプロセスそのものがサービスに対する信頼につながるし、プライバシーを共有することに関するハードルも下げてくれるんじゃないかと思います。

ブランドづくりやサービス開発に「シン密圏」を取り入れて、新しい価値の提供を

-導入としてはランチや飲みのような気軽なコミュニケーションから使っていくと面白さが実感できそうですね。ビジネス視点ではどういった活用が考えられそうですか?

牧之段:シン密圏は位置情報共有を新しいビジネスに活用しましょう、というデータビジネスへの展開だけの話ではなく、このレポートから見えてきた生活者の価値観を活用してほしいという思いで定義しています。人と人とのつながりを生み出したり、一緒に楽しめる体験を提供しているサービス、企業にとって、この概念はとても有効なもの。ブランドづくりやサービス開発に、いまの生活者が求めている親密さの概念を取り入れたら、これからの時代を捉える新しい価値を提供できると思います 。

原田:位置情報共有は友達と遊ぶために使うものなので、なにか2人以上の体験を提供したいサービスと相性がいいと思います。例えばカラオケに10人以上で来たらポテトサービスなんて、いいですよね(笑)。カラオケ屋さんはたくさん人が来てくれてうれしいし、ユーザーはポテトがもらえてうれしい。位置情報サービスと広告は親和性が高いですが、ユーザーにとって嫌な体験にならないよう配慮することは大事です。やっぱりユーザーがいいと思わないと、僕らも企業も損をする。ユーザーにとってちゃんといいものを届けることが第一だと思っています。

牧之段:一般的にユーザーから得られた位置情報をどう活用すればいいのかを考えることが多いと思いますが 、重要なのはそれをユーザーといかに合意できるか。そこに必要な透明性や信頼感の築き方において、お話いただいたwhooとユーザーの友達のような関係性はとても参考になると思います。

-最後に、このレポートをどんな人に読んでほしいですか?

原田:最近友だちと遊べてないな、と思う人は読んでみてほしいですね。もっと気軽に遊んだらもっと楽しいですよ、と言いたいです。

牧之段:位置情報を共有すると「近くにいて会いたいから、移動しないで待っててよ!」というようなコミュニケーションが自然と生まれる。位置情報共有は「ありのまま」を超えて「わがまま」になれる価値を持っているのかもしれません。

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株式会社LinQ 代表取締役CEO 原田 豪介 氏

1995年生まれ。株式会社ジラフにインターンで入り、そのまま新卒として入社。当時月間3億PVを誇るソーシャルサービス「Peing-質問箱-」のプロダクトオーナーを担当。2019年に株式会社LinQ創業。同社が手掛ける位置情報共有SNS「whoo your world」はリリースから約1年で1,500万DLを突破。

株式会社SIGNING ストラテジスト 牧之段 直也

2020年博報堂入社後、2023年よりSIGNING出向。幅広い世代にまで波及するZ世代の価値観に着目した「Z志向型」プランニングで、リアルとデジタルが融合する未来における社会やコミュニティのあり方を提案。

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