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ヒット習慣予報 vol.324『行動前スクリーニング』

2024.07.23
#トレンド

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの平石です。
いよいよ夏が到来しましたが、夏って行動するのが面倒じゃありませんか。
私は毎年春にやる気に満ちて新しいことを始めるのに、夏ごろに挫折してしまったり、ついついダラダラと過ごしてしまったりしてしまいがちです。共感する方もおられるのではないでしょうか。この夏こそは、新しい行動を始めたい・続けたいと密かに思っています。
さて、最近は新しく何か行動をする前に診断ツールなどを用いて“確度を上げる”習慣が広まってきているようです。Googleトレンドで「診断」と調べると、2010年頃から右肩上がりに検索数が増えていることが分かります。2018年のvol.23『診断ドリブンファッション』の頃にはすでに、ファッション領域における骨格診断やパーソナルカラー診断が注目されていましたが、その後もさらに伸びているのです。

「診断」の検索数推移

出展:Googleトレンド

こうした行動前の確度を上げる習慣を「行動前スクリーニング*」と名付けて紹介していきたいと思います。
*スクリーニングとは、条件に合うものを選び出すことを意味する言葉で、医学的・化学的な検査・実験による場合のほか、人の適性や能力を審査する場合にも用いられます。

最初に紹介するのは「恋愛前スクリーニング」です。
これは、恋活や婚活などで相手と自分の相性が悪くなさそうな人をスクリーニングするために性格診断などを用いる習慣です。
具体的には、今や一般的になったマッチングアプリでプロフィール上に自分の性格診断結果を記載する人が増えています。それにより会う前に相手の性格をある程度理解できるだけでなく、自分と相性の悪い診断結果の人を省くことができるため、機械的に連絡をとったり会ったりする相手を絞ることができます。そして最近では性格診断結果と相性以外の相手情報を極力排除したようなマッチングアプリも出てきているようです。
肩書きやルックスといった外的スペックよりも、内面を重視してパートナーを探したい人が増えているのかもしれません。

続いて紹介するのは「ダイエット前スクリーニング」です。
自分がどういったダイエットに向いているか、どういった食事をすると太りやすいのかなどを診断ツールや遺伝子検査キットなどで事前に知る習慣です。世の中には様々なダイエット法が溢れており、その効果は人それぞれだと思います。全てを試す時間はない中で事前にお金を出してでも統計的にスクリーニングする人が増えているようです。数年前から高価なパーソナルトレーニングに課金して正しいトレーニング方法や食事管理をする人は増えていますが、今回はあくまでも確度を上げるための統計的なタイプ分類によるスクリーニングであることが異なっています。
事実、私も以前糖質を制限するダイエットを行いましたが期待したほど効果が得られず挫折したことがありました。そこで友人に薦められ遺伝子検査を受けたところ、脂質を制限する方が痩せやすい体質であることや相性の良い食べ物がわかりました。今では脂質を摂りすぎないように心がけていて、以前よりも成果を得ることができています。

最後に紹介するのは「転職前スクリーニング」です。
これまでは条件や感覚で選んでいた転職先を、転職前に割と時間をかけて次の職種や業界、会社を統計的にスクリーニングすることで確度を上げることが新しい習慣になってきているようです。転職意向が高い人が性格診断や価値観アンケートで自分にマッチした仕事や働き方を模索しスクリーニングするのはもちろんですが、あまり転職意向の高くない人も同様の行動をする傾向にあるようです。年下の友人数名に話を聞くと「常に複数の転職サイトに登録して求人の合格可能性度合いを見ています」「今の仕事が嫌なわけではないですが他の選択肢も見据えておきたい」「自分の感覚で選んだ前職が合わなかったので統計的な診断に頼って転職した」といった声が聞かれました。転職先を主観以外の相性で選ぶことで、自分にマッチした次の職場に出会いやすくなるのかもしれませんね。

ではなぜ今このような「行動前スクリーニング」が広まってきているのでしょうか。
大きく2点の要因があると考えています。
1つは、行動の選択肢が多すぎることです。
現代人は、行動の選択肢が多すぎるからこそ「検証に時間をそこまでかけられない、選べない」状況に陥っているのではないでしょうか。今回紹介した恋愛ではマッチングアプリ上に多数の相手が出てきますし、ダイエット法は数えきれないほど出てきています。一方で今の若年層は“失敗したくない”気持ちが強いともいわれています。多すぎる選択肢を、検証できる範囲まで絞り込んで失敗する確率を低くするために、行動前スクリーニングが必要とされ、習慣になってきているのだと考えます。

2つ目は、共通の話題づくりのためです。
確度を上げるための性格診断や遺伝子検査は、シンプルにコンテンツとしてもおもしろく、受けた人同士で語り合うことやアドバイスし合うことができます。恋愛・ダイエット・転職と簡単ではないテーマだからこそ、共通点のある人と語り合いたくなるのでしょう。初デートでは「動物に例えてくれる診断結果はなにか」が鉄板トークテーマになることもあるそうです。また転職前スクリーニングについて聞いた後輩のうちひとりは「憧れの業界に転職したしばらく会っていなかった先輩がSNSに載せていた、性格診断結果が同じだったので思いきってDMした」ことが転職のきっかけだったと言っていました。まさに共通の話題があったからこそ生まれた繋がりだと思います。

最後に「行動前スクリーニング」習慣を活かしたビジネスチャンスを考えてみました。

「行動前スクリーニング」のビジネスチャンスの例
■家探しの条件に加え性格診断を事前に送ると、それに合った人を担当者にしてくれる「人の相性で選ぶ家探しサービス」
■逆に普段関わらないタイプの人と友達になれる「診断結果逆張りマッチングサービス」
■失敗したくないからこそ、あえて失敗経験を疑似体験できる「仕事・恋愛失敗体験ゲーム」
など

自分の直感も大事にしつつ、うまくスクリーニングもしていきたいですね。
これで僕も夏からの新行動を考えたいと思います。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

平石大貴(ひらいし・だいき)
関西支社第二ビジネスデザイン局第二プラニングチーム
ヒット習慣メーカーズ メンバー

2020年博報堂中途入社。前職から継続してストラテジックプラナーとして働く自称「関西支社の元気印」。4つ下の弟・9つ下の妹がおり、家族揃ってカープファン。コロナ禍で始めたゴルフのベストスコアは奇跡の93から停滞中。

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