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滝口 勇也
博報堂 上席研究員/クリエイティブファシリテーター
松口 悠氏
株式会社スティーブアスタリスク デザイナー
林 竜太郎
博報堂 ストラテジックプラナー
藤田 啓輔
博報堂コンサルティング シニアコンサルタント
── はじめに、ボボットウを開発した背景やネーミングに込めた思いについて教えてください。
滝口
ボボットウは、これまで実現が難しかった数百〜数万人規模の社員数を抱える企業の「全従業員」に対してのインタビューを可能にする、生成AIを活用したインタビュープログラムです。ビッグデータの時代と言われて久しい一方で、企業の経営層が一番知りたい自社の従業員の「本音」や「仕事への思い」を引き出すこと、そしてそれらを人材戦略や経営に活かすことはまだまだ難しい状況です。そんななかで、インタビューという手法に着目し、その可能性を追求して開発されたのがボボットウです。
私自身、仕事でたくさんのインタビューをする機会があるのですが、単にインタビュイーから情報をヒアリングするのではなく、相手の懐に入っていきながら「その人がどういう世界観で物事を見ているのか」、「どういう風に自らを捉えているのか」というところまで迫っていけるのが、インタビューのすごさだと思っています。企業においても、従業員へのインタビューをもっとやりたいという考えはあるものの、やはり全従業員に対し、一人ひとりにインタビューを行うのは現実的にものすごく大変ですよね。それが、昨今注目される生成AIを使えば実現できるのではと思い、具体的にサービスの開発に取り組んできました。
林
3年前くらいに立ち上げた「インナーファンシップブランディング」という、従業員(インナー)の自社に対するファン心(ファンシップ)をブランディングに生かすソリューションが、ボボットウの土台になっています。同ソリューションの事例として、大手ファストフードチェーンで働く従業員の方々へ「自社の商品のどんなところが好きか」や「商品へのこだわりや魅力」などをインタビューしたものがあります。
それをわかりやすくまとめ、店頭ポスターや映像にしたところ、社内の反響が非常によかったんです。
そこから「全従業員に同様のインタビューを実施できないか」と打診を受けたのですが、さすがに全従業員となると人数も多く、実現は難しいという判断に至りました。このような原体験をもとに、生成AIを活用することで従業員の人数関係なくインタビューが可能なボボットウの開発を進めてきました。
滝口
ネーミングについては「心にボボっと火をつけ、仕事にボットウする」という言葉から連想してコピーライターと考えました。インタビューを通して、その人が本当に没頭できることや、情熱を持って取り組めることを引き出していくソリューションなので、それを表現するサービス名にしたかったんです。
── ボボットウの主なサービス内容はどのようなものでしょうか?
滝口
私がこれまで行ってきた数百のインタビュー経験をもとに、導入企業に合わせた形でインタビューフローを作成し、大人数の従業員にデプスインタビューしていく流れになっています。特長的なのは、AIキャラクター「ボボまる」がインタビュアーを務めることですね。人相手や単にシステム上で話すよりも、AIのキャラクターの方が愛着や親しみを持ちやすいですし、従業員からの本音も引き出しやすいと考えたからです。また、インタビューした内容は「個人レポート」、「部署レポート」、「全社レポート」という形で3種類のレポートにすることで、従業員の仕事に対する思いやこだわり、興味・関心などを可視化できるようにしています。