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ヒット習慣予報 vol.327『お泊まりヘルスケア』

2024.08.20
#トレンド

こんにちは。ヒット習慣メーカーズの上利です。

夏休みシーズン真っ只中ですね!私は先日人生初の富士登山にチャレンジし、天候にも恵まれ無事楽しく登頂できたものの、今は酷い筋肉痛でオフィスをそろりそろりと歩いています。
さて、夏休み、「休めて」いるでしょうか?遠くへ出かけて非日常感を味わうことも勿論リフレッシュになると思いますが、遊び疲れてへとへとで職場へ復帰…という方も多いのではないでしょうか。
旅行へ行くとなると、限られた滞在時間を楽しみつくそうと睡眠時間を削ったり、その土地の美味しいものが多すぎて食べすぎたり、ついつい身体に負担をかけてしまうこともありますよね。

そこで、今回は「休み方」におけるヒットの兆しとして、「お泊まりヘルスケア」を取り上げます。
「お泊まりヘルスケア」とは、忙しい毎日で溜まった疲れや不調を集中的にケアできる宿泊形式のヘルスケアです。近年こうした健康目的の宿泊プランを提供する宿泊施設が増えてきており、注目を集めているのです。
ここからは、健康の基本である睡眠・食事・運動の順に、「お泊まりヘルスケア」の例をご紹介していきましょう。

まずは、「睡眠」に着目した「スリープツーリズム」です。
睡眠に特化した部屋・宿泊プランを提供するホテルは以前から登場し始めていましたが、近年その勢いは増しており、睡眠データが計測できるホテルも登場するなど進化を遂げています。こうした宿泊プランでは、上質な寝具・パジャマといった睡眠環境が提供されるだけでなく、サウナ・運動などのアクティビティや食事まで、全てが良質な睡眠のために計画されたものとなっています。カプセルホテルではその特殊な形状を利用して睡眠データを計測できるプランもあり、360度から宿泊者の睡眠時の状態を計測したのち、健康状態に関するリポートやアドバイスまで提供されるようです。

次に、「食事」の観点から、「断食宿泊プラン」をご紹介します。
断食道場は昔からありますが、ヘルスケア文脈でプチ断食やジュースクレンズファスティングが流行して以来、ホテルでも断食宿泊プランが提供されるなど、人気が高まっています。(断食については、vol.188『あれこれファスティング』でも「16時間断食」をご紹介しました。)
断食宿泊プランでは、断食中に摂取するコールドプレスジュースや生姜湯、断食終了後の回復食が提供されるほか、軽い運動等のアクティビティやスパ・マッサージ等の施術も用意されており、辛くなく断食ができるようなプランが組まれています。アクティビティが充実しているおかげで、実際に空腹が気になる暇がなかったと感じる方もいるようです。自宅でのファスティングは家事や仕事等のスケジュールとの折り合いが難しいうえ誘惑も多いですが、こうした宿泊プランならばチャレンジできそうです。

3つ目には、「運動」を軸に、ボディメイクに特化した宿泊プランです。
パーソナルトレーナーによるレッスンと、筋力アップに最適な高たんぱく低脂質の食事メニューが提供されるもので、本格的に肉体改造に取り組める1週間ほどの長い宿泊プランもあるようです。ボディメイクは徹底した管理とパーソナライズ化が重要であることから、24時間まるごとプロのサポートを受けられるこうした宿泊付きプランにニーズが生まれやすいのかもしれません。

では、なぜこうした「お泊まりヘルスケア」が広まりつつあるのでしょうか?
主な理由として、日常生活でのヘルスケア実践の難しさが挙げられます。わざわざ「寝る」ためにホテルに泊まりたいと願うほど、現代人の生活は多忙を極める人々も多いようで、健康の土台である睡眠・食事・運動のための時間と環境を捻出することが至難の業となっています。

さらに、外出制限の緩和がこの状況に拍車をかけていると考えます。コロナ禍で人々のヘルスケア意識は大きく高まり、外出制限等で余暇時間も長かった時期は、思う存分ヘルスケアを実践できていました。しかし、外出制限が緩和され出社回帰、外出予定も増えた今、ヘルスケア意識は高まったままでありながら実践の時間が不足するようになり、人々はヘルスケアに時間を割き切れないフラストレーションを抱えているように思います。

今年実施された調査でも、コロナ禍と呼ばれた時期より睡眠の質が「下がった」と回答した割合は「上がった」と回答した割合よりも高く、睡眠の質が下がった理由として「外出が増えた」「運動する機会が減った」「通勤・通学時間が増えた」「夜の会食や外食が増えた」など、外出制限の緩和による要因が挙げられています。

出典:日本インフォメーション(株)調べ「~不眠大国ニッポンの最新睡眠事情~睡眠に関する調査」 https://www.n-info.co.jp/report/0061

こうした状況の中、宿泊形式でのヘルスケアが、日常のスケジュールにも振り回されず意志の強さ・弱さも問われずに、行ってしまえば誰でもできる手軽で確実なヘルスケア手段として選択肢に挙がってきたのかもしれません。

最後に、「お泊まりヘルスケア」のビジネスチャンスとして、下記のようなことを考えてみました。

「お泊まりヘルスケア」のビジネスチャンスの例
■24時間身体を外からも内からも温め続けて不調を改善する温活宿泊プラン
■ビジネスパーソンのための、食事やアクティビティを組み合わせた脳疲労回復特化宿泊プラン
■お泊まりヘルスケアができる宿泊プランの、福利厚生への展開

折角の休暇はお出かけしたい気持ちにもなりますが、日常生活で溜まった疲れや不調をお泊まりヘルスケアでしっかりリセットする夏休みも良いかもしれません。
まだまだ暑い日が続きますので、熱中症に気を付けて過ごしてくださいね。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

上利真悠子(あがり・まゆこ)
ストラテジックプラニング局
ヒット習慣メーカーズ メンバー

2022年 博報堂に入社。
舞台・映画・音楽を愛する万年インドア派のはずが、ひょんなことから富士登山にランニングと、アクティブな夏を過ごしています。

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