こんにちは。ヒット習慣メーカーズの永井です。
私事ですが、長らく育児休業を取得しており、復帰1発目のコラムになります。
育休中、子どもから目を離すことが出来ないので、日中自宅で過ごす毎日。ずっと家にいると精神的に滅入ることもある中、リフレッシュアイテムとしてハマったのが香木であるパロサントでした。子どもが寝静まった後、ベランダで夜風にふかれながらオリエンタルな香りを嗅ぐのが毎日の日課で、この匂いを嗅ぐと今でもあの日々が思い出されます。
そんなこともあり、今回は「香り」に関する新習慣の兆しをご紹介できればと思います。コロナ禍で香水やフレグランスが注目されて久しいですが、下記のGoogleトレンドにあるように、「匂い」の検索数はここ最近でも上昇傾向にあり、「香水砂漠」とも称された日本に、ようやく香水/フレグランス習慣が定着し始めてきているようです。
コロナ禍真っ只中の2021年に執筆したコラムvol.159『付加香力』でも、巣ごもり生活をキッカケに広がりを見せている香りの新習慣をご紹介しましたが、ここ最近の動向を調べてみると、また新たな兆しが見えてきました。それが今回のテーマ「隠れアロマ」です。周囲への自己表現としての香水やフレグランスが一般化してきている中、自分向けにこっそりアロマを楽しむ新習慣です。
そこで今回は、リサーチの中から見えてきた新たな香りの兆しを具体例とともにご紹介したいと思います。
まずひとつが、持ち運んで「隠れアロマ」です。
香水やフレグランスといえば、お出かけ前に首元や手首に吹きかけるのが一般的な利用イメージですが、そうではなく、アロマオイルをペンダントに入れたり、精油の希釈水をミスト噴射できるケースに入れたりして、外出先でもアロマを利用する人が増えてきています。後輩の女性社員が市販のミストタイプのものを愛用していたので、話を聞いてみると、ひとに迷惑かけず化粧室でサッとかけられてリフレッシュでき、化粧崩れ防止にもなるのでいいとのことで、リフレッシュ文脈で使われているようでした。
次は、ファッションリングで「隠れアロマ」です。
今やファッションアイテムの定番となったファッションリング。そこに自分の好きな香りを染み込ませることができる「アロマリング」がにわかに注目されています。指輪に精油を数滴垂らし、染み込ますことで、いつでもお気に入りの香りを嗅ぐことができます。従来の香水のような身体にガッツリ香りを纏うのではなく、手元を動かしてほのかに香らせられる点が人気のようです。
最後は、挟んで「隠れアロマ」です。
ある日、読書好きの友人が見開いた本に自分の顔を埋めていて、いったい何をしているかと思ったら、なんと匂いを嗅いでいました。奇々怪々に思いながら話を聞くと、「ペーパーインセンス」と呼ばれる燃やして使用する紙のお香を、栞として普段から本に挟み、香り付けしているというのです。本を開くたびに、オリエンタルな香りで心身をリフレッシュし、読書の世界に浸れるのだそう。そして、その本を読み終えると焚き付けてお香として楽しむ、というのが彼の儀式とのことでした。SNSでも調べてみると、愛用のノートや手帳に挟んでいるという人が散見され、新習慣として広がっていきそうな予感がします。
さて、いくつか事例を紹介してきましたが、なぜ「隠れアロマ」が増えてきているのでしょうか。
ひとつは、リフレッシュ目的でのアロマ活用が定着し、多様化しているからでしょう。これまではファッションとしての意味合いが強く、香水市場ではハイブランドのものが好まれていました。しかし、コロナ禍以降、より自然派なブランドやプロダクトが人気を集めており、巣ごもり生活でのリフレッシュアイテムだったアロマが、屋外の様々なシーンや用途にも利用されるようになり、それに合わせて進化してきたからではないでしょうか。
もうひとつは、下手に他人に迷惑をかけたくない日本人の国民性もあるかと思います。「香害」という言葉もあるように、過度な匂いを毛嫌いする人は多く、ガッツリ香水を纏うことはまだ億劫だと思う人も多いことでしょう。かくいう自分も推しの香水はありますが、朝の通勤で満員電車に乗るときは、迷惑にならないように控えるようにしています。海外では日本ほど毎日シャワーを浴びないからエチケットとして香水をつけるとよく聞きますが、日本はその逆で、自分だけが楽しめる自己充足的な意味合いが強く、こっそりと楽しめるものが受け入れられているのではないでしょうか。
最後に、「隠れアロマ」のビジネスチャンスについて、少し考えてみました。
先日、自社商品を開発しているクリーニング店にお話を伺ったとき、最近は香水などの邪魔をしない無香料の洗剤が売れているとお聞きしました。今よりもっと香りのアイテムが増えてきたら、無香市場も広がっていくかもしれませんね。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
2018年北海道博報堂に入社。クリエイティブストラテジストを自称し、戦略からアウトプットまで考えるのが仕事。夢は多拠点居住。最近のマイブームは、すだちサワーとサバサンド。