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クライアントの夢を一緒にプレイする「RPG型パートナーシップ」|Next Creativity Map Vol.16 高瀬雄大

2024.11.21
企業のコミュニケーションやマーケティング課題に、さまざまな「得意技」でクリエイティビティを発揮する博報堂のクリエイターやマーケター。連載「Next Creativity Map」では、クライアントの課題に寄り添い、解決、変革へと導くランドマーク人材にスポットを当て、その「技」を解き明かします。第16回は、統合プラニングディレクターの高瀬雄大。人の夢にフォーカスし、「RPGを一緒にプレイするように」クライアントに向き合うという高瀬。その仕事術とは?

とにかく走り続けた入社1〜2年目。世界を広げるため「人と会うこと」を意識した

-高瀬さんは2014年に新卒入社ということですが、博報堂を志望した理由は?

高瀬:僕はあまり就職活動をしていなかったのですが、はじめて行った合同説明会で一番学生が集まっていたのが博報堂だったんです。人気の会社なんだなと思って。その後OB訪問を重ねて、最終的に博報堂が第一志望になりました。

-入社してからはどんなキャリアを重ねてきたのですか?

高瀬:はじめに配属されたのが「博報堂買物研究所」。マーケターでありながら、プラナーやクリエイターの近くで仕事をすることが多い環境でした。その頃はまだ試験的なセクションで、とにかくいろいろな業務に携わっていました。商品開発から、店頭に展開する広告の企画まで、「なんでもやってみな!」と背中を押されて、色々な先輩に付いて「型」を教えてもらっていた時期。3年目で現在のマーケティング部門に異動になりましたが、若い頃にそういう経験できたことはすごくありがたかったですね。とにかく走り続けていました。

-入社直後からかなり精力的に仕事をしていたのですね。

高瀬:そうですね。でも一方で、自分の世界が仕事とその周辺の限られた範囲に狭まってしまった気もして、これはまずいなと。もっと人に会おう、人の話を聞こうと思って積極的に交流を持つようになったのが4年目くらいからでしょうか。僕、ある性格診断でものごとの議論を大切にするタイプと診断されたんです。とにかく人と話すのが好き。友達と食事に行ったり飲みに行ったりするのが本質的に好きだったので、なるべく機会をつくるように意識しました。

夢に向かっている人と一緒にいることが楽しい。「人の夢」フォーカスで仕事をするように

-人と会って話をすることで、仕事につながる気づきがありましたか?

高瀬:当たり前ですが、世の中にはいろんな人がいるんですよね。ぶっ飛んだ才能を持っている人、とにかく熱量があって突き進んでいるけど、まだ何者にもなっていない人。そういう人に出会うと、シンプルにおもしろいと思うし、僕のなかで心が動くものを感じるんです。
もともと、僕自身にはあまり夢がないんです。最初に就活の話をしましたが、めちゃめちゃなりたいものがあるわけじゃない。でも夢を持って突き進んでいる人を見るとすごいなと思うし、ちょっとうらやましい気持ちにもなる。おもしろい人とたくさん出会って、その人の夢を叶えるために僕には何ができるだろうと考えるようになりました。

-人の夢を叶えることを仕事にしたいと考えた?

高瀬:そうですね。僕は子どもの頃からひとつのことを突き詰めてやり抜くタイプというより、90点のレベルに最短で辿り着くことに喜びをおぼえるタイプ。自分自身の夢を追い求めるより、いろんな人のいろんな夢を応援することのほうが向いているし、誰かの役に立てるかもしれないと思って、人の夢にフォーカスで仕事をするようになりました。あとはシンプルに、仕事もプライベートも関係なく、夢に向かっている人と一緒にいることが、自分の人生にとって楽しいことだと思えたんです。

クライアントだけでなく、広告に関わるすべての人の「夢」をマッチングさせる

-人の夢にフォーカスした仕事というのは具体的には?

高瀬:タレントでクイズプレイヤーの伊沢拓司さん率いる「QuizKnock」、および運営会社の(株)batonは、ふくらPさんとのプライベートな付き合いから仕事の領域へ広がっていったひとつの例ですね。いまは、博報堂と一緒に、博報堂のクライアント向けのサービス開発を行えないかなどの検討もしていますし、それだけでなく、僕自身がbatonのミッション、ビジョン、バリューの策定や発信に携わってきました。

*「QuizKnock」を運営する(株)batonのHPより

僕らの仕事は、CMひとつとってもクライアントがいて、広告を制作する人がいて、広告に出演する人がいて、本当にたくさんのプレイヤーが関わっている。それぞれの立場の人が、それぞれ自分の夢を叶えるために仕事をしているわけです。
広告会社というとクライアントの夢のためだけに尽力していると思われがちですが、それでは120点の仕事はできません。調査会社やPR会社、キャスティングされる出演者さんなど、関わるすべての人の夢がマッチングして、はじめて100%の力が出せる。どこかの熱量が欠けた時点でマイナスなんです。それを見極めることのできる環境が博報堂の強みですし、これからの仕事の価値になると思っています。

いろいろな物語で経験を積み、ほかの仕事に生かす。同時進行でRPGをプレイする感覚

-クライアントの夢を叶えることを前提としながら、関わるすべてのプレイヤーの夢をマッチングさせるということですね

高瀬:そうしないと、僕自身が楽しめないんですよね。この仕事のなかでどの役に入るとチームのパフォーマンスが最大化するか 、それを自然と考えています。僕のなかではRPGみたいな感覚。Aという物語、Bという物語、Cという物語、いろんな物語にキャストとして入っていて、それぞれの物語で経験値を積んだら、それがほかの仕事にも役に立つ。そういう仕事がリアルタイムで同時進行しているのがおもしろくて、この仕事を続けているんです。

-物語によって高瀬さんが演じる役割も変わってくる?

高瀬:僕の肩書きは IMC(統合型マーケティング)ディレクター となっていますが、その「統合」というのが本当に多岐にわたっています。マーケターとしてチームに入ることもあるし、キャスティングだけすることもあるし、クリエイティブとしてカメラマンをアサインすることもある。社外の専門家からレクチャーを受けて、その道のプロと話ができる程度に専門知識を身に付けて仕事に生かすということもやっています。それが自分の趣味につながったりして、本当に仕事と遊びがマージしていく感覚なんですよね。そうやってスキルを身に付けていくことが個人的にも楽しい。
統合的にプランニングするというより、統合できる自分が入ることで、仕事が前に進むようにディレクションする、という感覚かもしれないです。

-そのためには多岐にわたる知識や経験が必要になりますよね?

高瀬:だからこそ、熱量のある人に、その人と同じ熱量で付いていっている。スキルの一部を分けてもらっているような感覚です。それには、とにかく走り続けた買物研究所時代の経験が生きているのかもしれません。

ひとつの夢を叶えたら次の夢へ進んでいける時代。次の夢を提示できる人でありたい

-クライアントの夢を知ることはできても、周りのプレイヤーの夢を知るのはむずかしいことでは?

高瀬:その辺に転がっているわけでもないし、自分から聞かせてくれるわけでもないので、たしかにむずかしいですね。こちらから関係性をつくりにいって、話をきかないといけない。でも、それが楽しいんです。
僕の実家はご飯屋さんで、もともと食べることが大好き。いろんな人とご飯を食べるなかで徐々に関係性が広がっていきました。おいしいご飯を食べて仲が悪くなることってないですよね(笑)。食べることが好きなので辛いと思うことはないし、知り合った人がまた別の人を紹介してくれるといった数珠繋ぎで、いろいろな人に出会うことができます。熱量の高い人がまわりにいると、自分の熱量も高くなる。それは僕の人生にとってもすごく楽しいことなんです。
そんな感じだからこそ、僕は仕事という言い方をしたくなくて「夢」という言葉を使っているのかもしれません。好きなことをやっている時間ってあっという間に過ぎますよね。でもそれが日々の作業になった途端に「仕事」になっちゃう。熱量の高い人といる時間はあっという間に過ぎるので、そういう人との時間がいくつ重なっても頑張れるんです。

-たくさんの人の夢に向き合っていくなかで、「夢」について思うこと、気づきがあったことはありますか?

高瀬:テクノロジーの進化やコミュニケーションの発達によって、一生かけてひとつの夢を叶えるだけの時代ではなくなってきたと感じています。たとえば、先ほど話したQuizKnockは「楽しいから始まる学び」をコンセプトに活動していますが、それを叶えられたら次の夢に向かっていける時代。ビジョンを叶えるサイクルが早くなっているので、一回成功して終わりではなく、また別の物語をはじめられるんです。そのとき「次はこの山を登ったらおもしろくないですか?」と提案するのが僕の仕事。賛同する人が一人でも多くいてくれたらうれしいし、今後はそういう仕事を増やしていきたいです。

まだ「夢になっていない夢」を見つけることが、次のクリエイティビティ

-次の夢を提案したり、夢になりうるものを発掘するためのコツはありますか?

高瀬:自分の夢を言語化するのってむずかしいですよね。僕らの仕事は人の思いを言語化することだと思っています。世の中に埋もれている夢はいっぱいあるけど、言葉にしないとわからない。「これがあなたのやりたいことでは?」と見つけられた瞬間が、新しい仕事が生まれる瞬間なんです。捻り出そうと思ってやっているわけではありませんが、たまたま夢が生まれる瞬間に立ち会ったという経験はありますね。

-それには高瀬さんのストラテジックプラナーとしてのスキルも役立っていますか?

高瀬:世の中に出るコピーではなく、マーケ流のコピーライティングとでも言うのでしょうか。ストプラのなかでも、コピーライティング的な仕事に力を入れているのは僕の特性かもしれません。企画書もほとんどWordでつくっているんですよね。絵を作り込むより、相手に伝わる言葉を選ぶことに注力したい。人の夢の言語化もそれに通じますし、そもそも「仕事」を「夢」と言い換えているのもその一部かもしれません。クライアントのやりたいことをちょっと言い換えるだけで、社内に浸透しやすいものになるかもしれない。その「言葉」が夢を前進させる原動力になっている気はします。

-高瀬さんにとっての仕事のやりがい、そしてNext Creativityとは何だと考えますか?

高瀬:本当に熱量や実力のある人は10年、20年かけてでも夢を実現させるはず。でもさきほどお話ししたように、僕個人、さらに博報堂というプラットフォームを使えば5年短縮できるかもしれません。そうしたら、その5年を使ってまた新しい夢にチャレンジすることも可能になります。
繰り返しになりますが、クライアントの夢と仕事に携わってくれるすべての会社の夢をマッチングさせて、やらされ仕事ではなく熱量高く仕事を達成させるのが僕の目指すこと。そのためにもいろんな経験を積んで、「パーティに呼びたい」と思われる人材でありたいと思っています。
夢というと大それて聞こえますが、要はその人の「やりたいこと」を見つけること。その熱量が高ければ高いほど多くの人が動かされるし、新しい市場だって生まれるかもしれません。まだ世の中には夢になっていない夢がいっぱいあるはず。それを見つけることが次のクリエイティビティだと思いますし、自分のやりがいです。

-最後に何か一言ありますか?

高瀬:誰もがうらやむピカピカの夢と、精鋭だらけのチームだけが”夢を叶える仕事”をできるとは思いません。まだ言葉にもなっていないモヤモヤを抱えた人、夢はあるけどあきらめかけてしまっているプロジェクトなど、少しでも思い当たる節があれば是非一度、お話聞かせてください。

高瀬 雄大
ストラテジックプラニング局  IMC(統合型マーケティング)ディレクター

2014年博報堂入社。博報堂買物研究所にて購買行動起点のマーケティング業務経験ののち、2017年よりマーケティング部門へ。経営・マーケティング戦略の策定/サポートから、企業コミュニケーションの立案、クリエイターとの協業による制作領域まで一気通貫したプラニングを実施。

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