こんにちは、ヒット習慣メーカーズの吉田です。
今年最後の3連休も終わってしまい、悲しみに暮れながらこのコラムを書いていますが、皆さんは余暇の時間をどのように過ごすことが多いでしょうか。
自分の余暇の時間の使い方を思い返してみると、日々の疲れを昼寝で回復したり、平日できなかったことを取り返すように取り組んだりと、何かを回復することに余暇の時間を使うことが多いなと感じます。同じく回復に余暇を費やす人がいないか調べていくと、日常の中で様々なものを「リカバリー」している人たちが増えてきていることがわかりました。
実際に「リカバリー」という考え方が過去10年の間に、じわじわと上昇トレンドとなっているようで、現代人の多くが様々な「リカバリー」を生活の中に取り入れようとしていることがわかります。
そこで、今回は生活の中で様々な「リカバリー」を取り入れるこの兆しを、「なんでもリカバリー」と題しまして、実際にどのような「リカバリー」を生活の中に取り入れているのか、新しい事例をいくつか紹介したいと思います。
最初に紹介する事例は、「身体をリカバリー」です。
ここ最近、「リカバリーウェア」という、鉱物などを織り込んだ特殊繊維によって発生する遠赤外線で血行を促進し、疲労回復や筋肉のハリ・コリの軽減をしてくれるアイテムが健康意識の高い人たちを中心に注目を集めているようです。パジャマやスウェットといった、家の中で着るだけで疲労回復してくれるものから、運動時に使えるスポーツウェアタイプ、フォーマルさも併せ持っているスーツタイプなど、シーンに応じて使い分けられるほど、様々な種類の「リカバリーウェア」が登場しています。
着るだけで疲れを癒してくれるリカバリーウェア以外にも、履くだけで脚の疲労回復をしてくれる「リカバリーサンダル」というものも徐々に人気を集めており、身に着けるもので疲労回復をするという新しい習慣が徐々に浸透してきているようです。
続いて紹介する事例は、「充実感をリカバリー」です。
貴重な休みの日、昼過ぎや夕方に目が覚めてすべてのやる気をなくす…そんな経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。失った時間は帰ってはこないのですが、この本当はやりたかったことを早起きや夜更かしで時間を捻出して取り組むことで、1日の充実感をリカバリーする習慣が、若い人を中心に増え始めてきています。
夜更かしをして自分の余暇をリカバリーする行為を「リベンジ夜更かし」などと呼んだりもしますが、朝の時間を使ってリカバリーしている人たちも現れ始めているのがポイントで、時間帯問わず自分の生活の充実感をどのようにしてリカバリーするのかが、忙しい毎日を送る中で時間が足りないと感じている現代人にとっての大きな関心ごとになっているようです。
最後に紹介するのが、「コミュニケーションをリカバリー」です。
コロナ禍に学生生活を過ごした世代は、リアルでのコミュニケーションの機会が少なかった反動で、デジタル上ではなくリアルでのコミュニケーションをリカバリーしようとする傾向にあり、飲み会やゴルフなどリアルな交流ができるイベントに積極的な人たちが増えてきています。
また、現在アメリカの若い世代では、ランニングクラブが友達や恋人が見つかる場として注目されているようで、デジタル上でのやり取りに疲れた若者たちが、リアルでのコミュニケーションをリカバリーしようとする兆しは世界的なムーブメントと言えるかもしれません。
ここまで「なんでもリカバリー」な事例をいくつか紹介してきましたが、このような新たな兆しを見せている背景にはどのようなことが考えられるでしょうか。
まずひとつ考えられるのは、コロナ禍以前の生活への回帰によって生じた反動に起因している可能性です。外出規制も落ち着きを見せたことで、出社する頻度や家の外での用事が増加しました。そのため、コロナ禍でリモート中心の生活をしていた人たちが、身体的な疲れや可処分時間の減少を感じ、日常生活の中でそれらのリカバリーを試みるようになったことが大きなムーブメントとなり、一つの習慣として顕在化し始めているのではないでしょうか。
もう一つの背景として考えられるのは、「リカバリー」という概念の重要性が日本でも徐々に広がりつつある点です。これまで日本では「疲労は病気ではないから、休めば治る」「休みを取ることは悪いこと」という認識が強く、リカバリーするという行為が重要視されない傾向がありましたが、健康意識の向上や、ワークライフバランスという概念の浸透により、「リカバリー」という概念自体を考える機会が増加し、疲労回復を目的としたリカバリーにとどまらず、様々なものをリカバリーするムーブメントへとつながっているのではないでしょうか。
最後に、「なんでもリカバリー」のビジネスチャンスについて、少し考えてみました。
僕は休みの最終日についつい夜更かしをして充実感のリカバリーをしがちなのですが、夜更かしはほどほどに、朝の時間を使った朝型リカバリー生活へと切り替えていきたいなと思います。
▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。
2020年北海道博報堂に入社し、マーケティング・ストラテジックプラナーとして業務に邁進している。2024年博報堂プラニングハウスに参画。インターネットに生息し、日夜インターネットカルチャーを浴び続けている。