■本日の参加メンバー(写真左から)
・山崎茜(インタビュアー):博報堂研究デザインセンター 生活者発想技術研究所 研究員/BranCo!運営スタッフ
・佐藤稜子:博報堂研究デザインセンター 生活者発想技術研究所 研究員/BranCo!運営スタッフ
・ボヴェ啓吾:博報堂研究デザインセンター 生活者発想技術研究所 上席研究員/東京大学教養部 客員准教授/ BranCo!運営サブリーダー
・山野井英未(インタビュアー):博報堂研究デザインセンター 生活者発想技術研究所 研究員/BranCo!運営スタッフ
ーBranCo!創設のきっかけとなった博報堂と東京大学教養学部との取り組みはどのようなものでしょうか?
ボヴェ
博報堂と東大教養学部の関わりの始まりは、2012年から東大教養学部で開催しているブランドデザインスタジオ(BDS)という授業です。
当時の東京大学の授業は講義形式が大半を占めていたため、アクティブラーニングを取り入れる試みとして、「21KOMCEE」という共創型の授業に適した教育棟が建設されました。この舞台を活かすという狙いもあり、博報堂がさまざまな企業向けに行っていたブランド開発のためのワークショップを、学生に提供する形で、BDSという授業が始まりました。
この授業を受けに、東大内外から多くの学生が参加してくれました。しかし、授業を受けられる人数には限りがあること、大学生が様々な抽象的なテーマについて考えることに大きな意義があると感じられたことから、BDSに加えて全国から大勢の方が参加できる大学生のためのブランドデザインコンテストであるBranCo!の開催につながりました。
BranCo!はコンテスト形式なので授業ほどの手厚い支援は難しいですが、博報堂社員からのレクチャーや参加チームごとにメンターがつくことなどを通じて、参加学生がスキルを身に着けられる体験を用意しています。
ーそうだったのですね!ブランドデザインスタジオ(BDS)とは、どのような授業ですか?
ボヴェ
基本的に学生たちが3~6人のチームになり、インプットからコンセプトを作り、具体的なブランド/商品/サービスを考えるという授業です。そのプロセスを博報堂メンバーが教えながら実際に体験してもらっています。期間は3カ月ほどで、テーマは毎回変えています。
佐藤
テーマの例としては、「東京タワーのリブランディング」「恋愛に関するブランド」「新しい朝ご飯に対するブランド」など、一つの概念や存在をテーマにしてその時代ならではの課題や価値を探索して商品をつくろうというものが多いです。
直近だと「リベラルアーツを起点にスタートアップをつくる」という少し毛色の変わったものも実施しており、自分のやりたいことを見つけていくきっかけとなるような授業を実施しました。
ーBranCo!やBDSも含まれる「LIVeコミュニティ」も最近作られたと伺いましたが、こちらはどのような活動ですか?
ボヴェ
LIVe とはリベラルアーツ・イノベーション・ヴィレッジの略で、「教養からビジネスを生み出すこと」を目指した、BDSやBranCo!も包含するような活動体となっております。
私たちは、特に「動的教養」を大事にしていて、これは単に知識を身に着ける「静的教養」とは違い、異なる分野の知識や生活者が持つ価値観を掛け合わせることで深い理解や本質的なイノベーションに繋げることです。
テーマに関する独自の生活者調査や既存研究に自身の想い(アスピレーション)を掛け合わせながらアイデアを生み出すBDSやBranCo!は、「動的教養」を体現していると思います。
それ以外にも、BranCo!のテーマにもなっている「人間らしさ」や「幸せ」について、哲学・文化人類学・生物学などを専門とする教授にインタビューを行いセミナーの形で共有・議論することで、多様な学問分野に蓄積された知見や視点を横断して新しい社会やブランドの可能性を考えるヒントにするような試みも行っています。
ーBDSやLIVeで「学生」がビジネスアイデアを考える/実装する意義はどのようなところにあるのでしょう?
佐藤
社会に出ていない学生のみなさまは、純粋に「何でこの商品はあるのだろう」「もっとこの商品こうなれば良いのに」という視点はありつつも、その疑問をビジネスに落とし込む術を持っていないことが多いです。
一方で企業は、企業としてやりたいことやできることから考えて生活者の視点から離れてしまいがち、という部分もあるので、学生と企業のお互い足りていない部分が出会える機会なのだと捉えています。
ボヴェ
私も大学生だからこそ気づけるものは多くあると思います。時代の空気、社会の環境や触れる情報によって人の価値観や行動も変わっていくと思いますが、特に若い人はその時代の変化を色濃く反映しています。
若い人にとっては当たり前なことや重要なことを、社会を動かす力を有している上の世代が感じ取れていなかったり、その重要性を理解していなかったりします。
ただ若い人自身も、人と会話して言語化し、背景まで想いを馳せないと当たり前すぎて自覚できないことでもあるので、 BranCo!などを通じて本質的な時代の価値観を見いだせるのだと思います。
一般的なビジネスコンテストでは、企業に合うようなアイデアに寄せていく方が良いという考えに陥りやすいと思いますが、改めてこの時代を生きている自分たちが感じることや、今は当たり前だが昔は無かった部分などを大事にできると良いと感じますね。
ーBranCo!の話も出てきましたが、BDSとBranCo!が共通して大事にしていることはありますでしょうか?
佐藤
BDSもBranCo!も、以下の3点を大事にしていると思います。
①抽象的なテーマや考え抜くこと
答えが出ないものをテーマにすることによって、今まで考えたことがなかったような思考にたどり着くことができるのだと思います。
BranCo!も初めはありきたりなアイデアが出ていたとしても、調査をして、長い期間考え抜くことで、最終的には本当に面白いプレゼンが出来上がることが多いです。
②「協力して学ぶ姿勢」と「考えることを楽しむ姿勢」を両立すること
協力するときは自分の考えていることを後退させて、深く考えるのは一人で行う、という方も多いと思います。ですがBranCo!もBDSも、人と話し協力することを通じて考えを深めることを大事にしています。
③最後に具体的なアイデアに落とし込むこと
抽象的なテーマだと、みんなで楽しく話して終わる、みたいなことになってしまいがちですが、それを最後しっかりとブランドやサービスなどの形に落とし込まないといけないという制限があることは大きいと思います。
自分たちだけでなく、みんなにとって面白いもの、良いものになっているのかというのも具体があるからこそ考えられるのだと思います。具体があるからこそ、抽象的な議論が逆に深まるというような、具体と抽象の行き来がまさに”ブランコ”の様でありBDSでも共通して大事にしています。
ボヴェ
まさに、「正解のない問いに共に挑む」ということはBDSの立ち上げの頃からのスローガンです。
実際に世の中には正解のない問題がほとんどですが、そこに何らかの結論を出していかなければなりません。そうした問題に向き合うことは一人では困難で、誰かと一緒に考えることが重要になってくるので、BDSやBranCo!では、それを他者と楽しみながら学んでもらえると良いと思っています。
抽象的なテーマだと知識差はある意味なく、皆が同じフィールドに立っているので、多様なバックグラウンドの方々が、自分の感覚や世の中の感覚などの具体を集めることで見えてくることがあるのだと感じます。
BDSでもBranCo!でも、学生たちには、実践を通じて「気づく体験」を得られる場所になってもらいたいですね。自分の身体的な感覚として気づきを得たことが自分に残り、少しずつ考えることが上手になっていくのだと思います。一人だけでは息が続かず潜っていけない部分でも、チームメンバーや誰かと語ることを通じて、より深い部分までたどり着くことができるとも思います。
佐藤
実際BDSに「おかわり参加」する学生も多く、「繰り返しその気づきを体験したい」と思う方が結構いらっしゃいます。そのような経験を提供できていることが嬉しいですね。
今回は、博報堂と東京大学教養部が共同で行っている様々な活動の実態や、それらの中で大事にされている価値観について伺いました。
今回の対談を通じて、改めて学生のみなさんが持つ力やポテンシャルに気づかされました。学生自身が「当たり前」として受け入れている価値観やモヤモヤと抱えている違和感に一度向き合い共有することは、社会や未来へ影響を与える「気づき」に繋がるのだと感じています。BranCo!やBDSなどの取り組みは、その若者たちの力を信じ、応援する取り組みとなっております!
「答えのない問い」に挑みたいと思った皆さま、 2025年度の第14回Branco!へのご参加お待ちしています!また、ご参加されない方も2024年12月21日(土)に東京大学駒場キャンパスにて決勝プレゼンテーションのご観覧が可能です。スペシャルゲストもお呼びしています。学生たちのアイデアに乞うご期待ください!
後編では、今年度のBranCo!のテーマである「人間らしさ」についてお話を伺いたいと思います。
▼12/21(土) 決勝プレゼン観覧申込み(無料)はこちら
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後編につづく
■登壇者
法政大学社会学部社会学科卒。2007年博報堂入社。マーケティング局にて企画立案業務に従事した後、博報堂ブランド・イノベーションデザインに加入。ブランドコンサルティングや商品・事業開発の支援を実施。東京大学教養学部「ブランドデザインスタジオ」の講師など、若者との共創プロジェクトを多く実施し、2019年より若者研究所代表を兼任。2024年度からは研究デザインセンターに籍を移し生活者発想を基軸とした研究開発を行う。
著書『ビジネス寓話50選-物語で読み解く企業と仕事のこれから』
国際基督教大学(ICU)教養学部卒、東京大学総合文化研究科博士課程前期修了。2020年博報堂入社。第一BXマーケティング局にて企画立案業務に従事した後、博報堂ブランド・イノベーションデザインに加入。同時期より東京大学教養学部「ブランドデザインスタジオ」にも講師として参画し、リベラルアーツとビジネスを繋げる大学との連携プロジェクトにも多く取り組む。2024年度からは研究デザインセンターに籍を移し、生活者発想を基軸とした研究開発を行う。
■編集&インタビュアー
※過去BranCo!決勝プレゼンの様子