THE CENTRAL DOT

~第13回BranCo! 対談企画~
Vol.2博報堂×東京大学教養学部コラボレーションの原点とこれから(後編)
本年度テーマ「人間らしさ」― 時代を超えた問いに、いま挑む理由

2024.12.11
「BranCo!」とは、博報堂と東京大学教養学部教養教育高度化機構が共催する、“大学生のためのブランドデザインコンテスト”。課題となるテーマについて様々な視点から調べ、その本質を考え抜き、魅力的な商品やサービスブランドのアイデアをつくりだして競い合う、チーム対抗形式のコンテストです。
BranCo!は博報堂が大事にしている”生活者発想”や”ブランドデザイン”の重要性・魅力を学生のみなさんに実践を通じて伝えることを目的としています。
今年のテーマは「人間らしさ」。
本企画では、BranCo!の運営、東京大学教養学部との取り組みに携わる博報堂社員に、東大との取り組みや「人間らしさ」について伺いました。

■本日の参加メンバー(写真左から)
・山崎茜(インタビュアー):博報堂研究デザインセンター 生活者発想技術研究所 研究員/BranCo!運営スタッフ
・佐藤稜子:博報堂研究デザインセンター 生活者発想技術研究所 研究員/BranCo!運営スタッフ
・ボヴェ啓吾:博報堂研究デザインセンター 生活者発想技術研究所 上席研究員/東京大学教養部 客員 准教授/ BranCo!運営サブリーダー
・山野井英未(インタビュアー):博報堂研究デザインセンター 生活者発想技術研究所 研究員/BranCo!運営スタッフ

*本年度Branco!のテーマ

:いま揺れ動く「人間らしさ」を、多角的にとらえる

ー今年度のBranCo!テーマ「人間らしさ」に決定し、どのように感じましたか?

佐藤
挑戦的でありながら、意義深いテーマだと感じました。今まさに「人間らしさ」の定義が揺れ動いている時代だと思います。AIが急速に日常に浸透する中で、多くの人が自然と考えざるを得ないトピックになっています。
かつて日本ではクマやキツネ、タヌキといった動物が人間に例えられましたが、その後は遺伝的観点によってサルが、そして現在はAIが比較対象にされるようになりました。「人間らしい」とされる対象の認識が、変化し続けている点が興味深いです。

ボヴェ
今年のテーマ設定に携わった立場として「人間らしさ」は、時代によって変わる点は重要だと感じます。これは、何千年も前から人類が議論している問いで、哲学・神学・文学など数々の専門家が、動物や神といった「人間ではないもの」と比較することで語ってきました。AI技術の台頭は、この問いに新しい視点をもたらしています。揺れ動く今こそ、改めて向き合いたいテーマですね。

:“自然な思考”を疑い、「感情」を問う

ー 「人間らしさ」を考える上で、どんなポイントがありそうですか?

佐藤
思考に行き詰ったら、先ほどの例のように「過去」に目を向けるなど、現在とは異なる世界を覗いてみると、新たな発見があるかもしれないですね。

ボヴェ
これまでBranco!は「自由」「遊び」「平和」など、一見ポジティブな言葉をテーマとすることも多かったですが、一度立ち止まって”自然に浮かぶ思考”に疑問を投げかけてほしいです。
「人間らしさ」も、一般的には「守るべき」という思考に流れやすいですが、例えば戦争のように、人間の不完全さが生む負の側面もあったりします。逆に「人間らしさが失われた世界」を想像し、自分は何を嫌だと感じるのか?なぜ大切だと思うのか?と感情に踏み込むことで、同じ結論でもより深みを持ちます。

佐藤
プレ審査では「人間が行う物事」と「人間らしいこと」を混同するチームが多い印象でしたが、人間のすべての行動が「人間らしい」とは限らないと考えます。むしろ人間らしさとは「これが私たち人間だ」という意志に近いと感じます。

ボヴェ
「人間らしさ」をどう捉えるか?に加えて、それに対してどんな感情が浮かぶのか?どうあって欲しいのか?まで、学生の皆さんが持っている様々な視点から導いてもらいたいです。

:学生による“翻訳”こそが、人の心を動かす

ー学生や社会人が参加できるコミュニティLIVeでは、「人間らしさ」を取り入れられたセミナーを実施したとのことですが、どのような内容でしたか?

佐藤
8月に実施したセミナーでは、参加学生に話を聞きたい東京大学の先生を探してインタビューを行ってもらい、その内容を自分の言葉で発表してもらいました。中には人類進化学・文学・国際政治学・化学など「人間らしさ」から一見遠いと思われる分野も多く、とても興味深かったので、あげられた視点を一部ご紹介します。

●人類進化学:人骨の分析から、3万年前の人間は狩猟など「個人として出来ること」が遥かに多いとされていたが、身体能力がほぼ変わらない現代の人間にも同じような潜在能力があるのではないか?
●文学:文学が人間の頭の中の「ゆらぎ(≒フィルター)」を可視化するものと捉えると、「フランケンシュタイン」など一見人間とは「異なる」化け物の物語から、人間らしさが捉えられるのでは?
●国際政治学:戦争をテーマに、「戦争を続ける人間の心理はギャンブルに負け続ける心理に似ている」「敵意は、仲間を作りたいという欲求から生まれる」など、人間の負の部分に深く向き合うからこそ捉えられる「人間らしさ」があるのでは?
●化学:「実験」では特定の条件下で同じ反応が得られることが前提となっているが、人間は同じ課題に対して異なる結果を返す(同じだとむしろ不自然と捉えられる)。これ自体に、人間らしさが表れているのでは?

ボヴェ
専門家の話は、前提となっている専門知識が多く理解が難しい場合もあるかと思いますが、学生が自分の言葉で代弁・翻訳をしてくれたことで、知識に感情が乗って、聞き手にうまく伝わった実感がありました。

佐藤
「肌感覚を持って聞けた」「心が動いた」という声も多く、教授から話を聞いたときの感情や感覚など学生のフィルターを通した発信が、新たな気づきを生んだのだと思います。

ボヴェ
今回のセミナーには、BranCo!参加者も多数おり、新たな視点を得る・ひろげるインプットとして、次のアイデアの刺激になったかと思います。

: “不完全さ“にこそ宿る「人間らしさ」

ー 「人間らしさ」に対して、ご自身はどう考えますか?

ボヴェ
人間の「不完全さ」に着目したいです。人間はものを考える知能を持ちながらも限界があって、どんな天才でもすべてを完璧に理解することはできません。しかし、その「不完全さ」ゆえに想像力を使って物語で世界を理解しようとします。星座もその一例ですが、その物語は真実からずれていたり、科学的には不正確だとしても、それ自体に面白さやアイデアの飛躍が生まれると考えます。
また、完全ではないからこそ他者と一緒に考えられるという視点もあります。一人の思考には限界がありますが、他者に考えを共有して脳を拡張していく、過去の様々な分野のアカデミアの発見や知識を借りて人類全体で考えることができます。これこそが、人間らしいと感じます。

:「考えることが面白くなる」と、生きやすくなる

ー東大LIVeやBDS、BranCo!に参加すると、どのような良いことがありますか?

佐藤
BDSは、週3時間×3ヶ月間のプログラムなので、決められた期間・時間に集中して学びを深められる環境です。また、すべての取り組みに共通して、長期的な仲間とのつながりが生まれる場となっています。

ボヴェ
BDS受講者アンケートでは、ものを考える方法として我々が提唱する「リボン思考」が、シンプルかつ汎用性があり、5-10年後も仕事や研究に役立っているという意見が多く寄せられました。考えること自体が上手くなる、面白いと思えるということは、人生の資産になっているかと思います。
正直、「答えがないこと」を考える行為はしんどいですよね(笑)。我々は考えないように回避したり、他の刺激に流されたりしますが、結局生きていく上で「答えのないこと」を避けては通れません。だからこそ、考え抜く経験を通じて、考えることに面白さを見出せれば、結果的に生きやすくなるのだと信じています。

佐藤
一人で考えるのは辛いからこそ、BDSやBranCo!では道筋が用意され、サポートが充実しています。この機会に、チャレンジしてみてほしいです。

ボヴェ
また、「授業で初めて泣いた」「BDSでの出会いが起業につながった」という声もあります。最近もかつての学生から、「あの時のメンバーが起業した会社に転職することになりました」という連絡をもらって嬉しくなりました。1つの課題に皆で真剣に向き合って困難を乗り越えた経験と、そこで得られる仲間は、貴重な財産になっているのかと思います。

:BranCo!に参加するからこそ、得られるもの

ー記事を読む学生たちへ、最後に一言お願いいたします。

ボヴェ
BranCo!は、参加の労力を自分で調整しやすく、学生にとって、初めての方でも取り組みやすいです。決勝プレゼンを聞くだけでも、進出6チームのプレゼンテーションから、異なる視点や考えに触れたり、気づきが得られる貴重な体験になると思います。また、二次審査までに敗退しても、頭や体を動かして課題に向き合い、考え抜いた経験が下地にあるからこそ、他のチームのアイデアから実感を伴った学びを得られます。

佐藤
ぜひ多くの学生にBranCo!やBDSに参加して「誰かと一緒に深く考え、企画に落とし込む」プロセスを通じて、生きやすさや、人生に役立つ経験を得てもらえたら嬉しいです。

■編集後記

今回は、博報堂と東京大学教養学部とのコラボレーションの原点から、学生が「答えのない問い」に挑む意義や「人間らしさ」を考えるポイントまで伺いました。
「思考を疑ってみる」「感情に耳を傾ける」という姿勢は、学生・社会人と立場に関わらず、新しいものごとを社会へ生み出すために必要不可欠であると感じています。また、人間には根源的に「理解しようとする欲求」があるので、一人で考えこまずに、他者と思考を共有して考え抜くことが、生きやすさや人生の糧になるという点に深く共感しました。

「答えのない問い」に挑みたいと思った皆さま、来年度の第14回Branco!へのご参加お待ちしています!また、ご参加されない方も12月21日(土)に東京大学駒場キャンパスにて決勝プレゼンテーションのご観覧が可能です。スペシャルゲストもお呼びしています。学生たちのアイデアに乞うご期待ください!

▼12/21(土) 決勝プレゼン観覧申込み(無料)はこちら
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前編はこちら

■登壇者

ボヴェ 啓吾 (Keigo Bove)
博報堂研究デザインセンター 生活者発想技術研究所 上席研究員
若者研究所代表/ 東京大学教養学部 客員准教授 BranCo!運営サブリーダー

法政大学社会学部社会学科卒。2007年博報堂入社。マーケティング局にて企画立案業務に従事した後、博報堂ブランド・イノベーションデザインに加入。ブランドコンサルティングや商品・事業開発の支援を実施。東京大学教養学部「ブランドデザインスタジオ」の講師など、若者との共創プロジェクトを多く実施し、2019年より若者研究所代表を兼任。2024年度からは研究デザインセンターに籍を移し生活者発想を基軸とした研究開発を行う。
著書『ビジネス寓話50選-物語で読み解く企業と仕事のこれから』

佐藤 稜子(Ryoko Sato)
博報堂研究デザインセンター 生活者発想技術研究所 研究員

国際基督教大学(ICU)教養学部卒、東京大学総合文化研究科博士課程前期修了。2020年博報堂入社。第一BXマーケティング局にて企画立案業務に従事した後、博報堂ブランド・イノベーションデザインに加入。同時期より東京大学教養学部「ブランドデザインスタジオ」にも講師として参画し、リベラルアーツとビジネスを繋げる大学との連携プロジェクトにも多く取り組む。2024年度からは研究デザインセンターに籍を移し、生活者発想を基軸とした研究開発を行う。

■編集&インタビュアー

山野井 英未(Amy Yamanoi)
博報堂研究デザインセンター 生活者発想技術研究所 研究員

山崎 茜(Akane Yamazaki)
博報堂研究デザインセンター 生活者発想技術研究所 研究員

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