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ヒット習慣予報 vol.348『ごきげんマタ活』

2025.01.21
#トレンド

こんにちは、ヒット習慣メーカーズの山田です。
先日、はじめて「同級生の子供」に会いました。それ自体、非常に感慨深かったのですが、色々と話を聞く中で、不安や大変なことが多いからこそ、妊娠中や出産後に自分をご機嫌にしてくれるようなアクションを積極的に取り入れていたのがとても印象的でした。他にもそういう流れがあるのではと思い、「ごきげんマタ活」と名付け、取り上げたいと思います。

まず一つ目は「ジェンダーリビール」です。
ジェンダーリビールとはその名の通り「Gender(性別)をReveal(明らかに)する」ことで、妊娠中期ごろ性別がわかるタイミングで、家族や友人に発表するイベントです。アメリカから広がったと言われていますが、近年、日本でもジェンダーリビールイベントをする人が増え、SNS等でもよく見かけます。

出典:Google Trends「ジェンダーリビール」検索ボリューム

ジェンダーリビールの仕掛けとして多いのは、ケーキやおにぎりなど中身が見えないフードを用いて、女の子だったら○○、男の子だったら××と予め決めておいた中身のうち、どちらが出てくるかで発表する方法などです。

どちらの性別が良いということではなく、純粋におなかの中にいる「赤ちゃん」の解像度が上がる情報解禁の場、サプライズの場としてのイベントです。
自分と同じタイミングで知らされてしまうと、自分も感情が昂っている中なので周りの反応を見る余裕がない可能性もあります。しかし、お母さんだけが赤ちゃんの性別を知っている状態で発表をすることで、新鮮に喜んでくれる姿をしっかりと見届けることができます。

赤ちゃんについて一人で抱えてしまいがちな妊娠期だからこそ、皆で感情を分かち合い、お母さんたちがご機嫌になれるイベントが求められているのではないでしょうか。実際に友人も、夫や家族が喜ぶ姿を直接みることができて、嬉しかったと語っていました。

二つ目は「プッシュギフト」です。
英語の「いきむ=Push」から来ており、夫から出産を終えた妻へ贈る感謝と労いの気持ちを込めたギフトのことです。こちらも欧米から始まった習慣ですが、最近では日本でも広まりつつあります。
「出産祝い」と混同されがちですが、「出産祝い」は赤ちゃんの誕生を祝うプレゼントとして、親戚や友人などから両親へ、主にベビー用品などを贈ります。一方で「プッシュギフト」は出産を頑張ったママへの感謝のプレゼントとして、ママが使う・欲しいものをパパから贈ります。

出産にあたり、パパや周囲の方々も最大限サポートをしてくれることも多いですが、最終的に「いきむ=Push」を頑張るママとしては、このように感謝を示してもらえることは嬉しいですね。
ギフトの内容は、身に着ける度に出産当時を思い出すことができるよう、一生もののジュエリーをプレゼントすることが定番なようです。プッシュギフトではありませんが、私も人生の節目でいただいたプレゼントは、見るたびに当時を思い出し、活力の源泉となってくれています。産後、育児や仕事復帰で悩んだり大変なときにも、プッシュギフトがお守りのように出産時の感情や夫からの気持ちを思い出させてくれたら、ちょっぴりご機嫌になれそうな気がします。(そうはいかないことも多いでしょうが…)

三つ目に、「産後ケアホテル」です。
産後ケアホテルとは、出産後、心身ともに疲弊したお母さんが「身体的ケア」や「心理的ケア」、「育児指導・相談」と「生活指導・相談」などのケアを宿泊しながら受けられる施設のことです。 行政や民間でも、産後ケア事業として支援の輪が広がっており、母子の健康促進のために重要なケアとして、注目されています。
二つ目にご紹介したプッシュギフトのように、物として残る感謝の気持ちも嬉しいですが、出産直後に何よりも欲しいのは休養だと、出産を経験した友人も言っていました。
しかしいくら自宅で休もうと思っても、家にいるとついつい満身創痍のなかでも家事や育児をしてしまう…少しシチュエーションは異なりますが、自分の体調不良時を思い返しても、家にいるとついつい遅くまで仕事をしてしまい、その結果しっかり休息を取れずこじらせてしまうという負のスパイラルに陥ることがありました。頑張りすぎてしまうお母さんたちに心置きなく休んでもらうには、物理的に休養専用の空間に身を置いてもらうことが必要なのではないでしょうか。心身の健康なくして自分の機嫌を取ることはできません。

こういった「ごきげんマタ活」の動きがみられる背景として、主に2つの理由があると考えます。
1つ目は男女平等の価値観の浸透が挙げられます。共働き世帯が増え、家計や家事の負担を平等にする家庭も増えてきました。それにより、妊娠・出産期の性差によるどうしても越えられない負担の差がより大きな問題として捉えられ、ママの楽しみを増やしたり、感謝を形で示す動きが顕著になってきたのではないでしょうか。
2つ目は家族時間の減少です。上記の内容とも少し関連しますが、共働き世帯が増え、家族団らんの時間が減ったことで危機感を覚え、家族の思い出を増やし、絆を深めていく機会としての家族イベントが必要とされているのではないでしょうか。

最後に、「ごきげんマタ活」のビジネスチャンスとして下記のようなことを考えてみました。

「ごきげんマタ活」のビジネスチャンスの例
■ネームリビール(名前発表)など、新たな家族イベントの創出
■子供の誕生日=出産記念日としてパートナー間での贈り物を推奨する出産記念日商戦
■妊娠・授乳中でも気にせず何でも頼める妊婦フレンドリーレストラン、カフェ、バー
(ノンアルコール、ノンカフェイン、ノー生魚、ノー昆布など)

今回は「ごきげんマタ活」について取り上げましたが、どのようなライフステージにおいても自分や周囲の人がなるべくごきげんでいられるよう、日々工夫して過ごしていきたいと思います。

▼「ヒット習慣予報」とは?
モノからコトへと消費のあり方が変わりゆく中で、「ヒット商品」よりも「ヒット習慣」を生み出していこう、と鼻息荒く立ち上がった「ヒット習慣メーカーズ」が展開する連載コラム。
感度の高いユーザーのソーシャルアカウントや購買データの分析、情報鮮度が高い複数のメディアの人気記事などを分析し、これから来そうなヒット習慣を予測するという、あたらしくも大胆なチャレンジです。

山田雅(やまだ・みやび)
博報堂 ビジネスデザイン局/ストラテジックプラニング局
ヒット習慣メンバーズ メンバー

2022年博報堂入社。趣味は旅行で、休日は常に複数の旅行計画に追われている。
虫と睡眠不足が大敵。虫がいない旅行先を行きつくしてしまいそうなのが悩み。

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