■Hasso Camp Projectミライ2024参加者
梅原 夏希さん/高校3年生
星 綾音さん/高校2年生
岩崎 晃大さん/高校1年生
■Hasso Campプログラム開発メンバー
中村 拳/博報堂 ストラテジックプラニング局 ストラテジックプラナー
■Hasso Campプロデュースメンバー
永田 奈々子/博報堂DYホールディングス サステナビリティ推進室 マネジメントプラニングディレクター
豊嶋 帆奈美/博報堂DYホールディングス サステナビリティ推進室 マネジメントプラニングディレクター
豊嶋(Hasso Campプロデュースメンバー)
今日は、昨夏の「Hasso Camp Projectミライ」に参加してくださった高校生の梅原さん、星さん、岩崎さんと、Hasso Campのプログラム開発を担当した中村さんとともにプログラムを振り返りたいと思います。
今期のHasso Camp Projectミライは「居場所」をテーマに、
・DAY1:スペシャリストたちによる講義とチームでの対話
・DAY2:「こども食堂」を訪問するフィールドワーク
・DAY3:アイデア発想とプレゼンテーション
という3日間のプログラムを通じて、これからの私たちに必要な新しい「居場所」の形について一緒に考えていきました。
永田(Hasso Campプロデュースメンバー)
プログラムには博報堂DYグループの社員も参加して、社会人と高校生が一緒に考え、熱い議論を交わしましたよね。博報堂DYグループには多様な領域のスペシャリストがいて、違いを混ぜて力にしていくという企業文化があります。高校生の皆さんもさまざまな高校から参加され、個性がぶつかり合う場になったのではないかなと思います。
Hasso Campプログラムの開発にあたった中村さんは、以前高校の教員をされていたのですよね。元教員の視点から、現在の教育現場における探究学習の現状について教えていただけますか。
中村(Hasso Campプログラム開発メンバー)
3年ほど前まで高校で化学の教員をしていました。今はストラテジックプラナーとしてさまざまな企業のマーケティング活動を支援していますが、教員をやっていた経験を活かし教育関連のビジネス開発や教育分野のイノベーション促進にも携わっていて、定期的に教育現場にも足を運んでいます。
この10年、GIGAスクール構想にのっとった教育のICT化が進み、同時に探究学習の導入もさかんに推し進められてきました。ただ教育現場を見ていると、探究学習に非常に熱心な学校もあればそうでない学校もあって、二極化が進んでいる印象です。また、メタバースや生成AIなどのツールを活用するケースも出始めてきていて、まさに探究学習の進め方そのものが進化の途上にあります。そんな中で新しく見えてきた兆しが、「探究疲れ」です。僕たちの時代は座学がほとんどだったので、グループワークが非常に新鮮で楽しいものでしたが、グループワークが頻繁にあって、議論や発表の機会が当たり前のように繰り返されていくような今の学校では、探究学習に意欲を持ちにくくなっている子も出てきているようです。
星さんの学校は探究学習が盛んだそうですね。実際にどのようなことをやっているのですか。
星(Hasso Camp Projectミライ2024参加高校生)
私の通う学校は中高一貫で、中1から高3まで探究学習があります。なので正直にいうと、人によっては学年が上がるにつれて飽きてきてしまう部分はあるかもしれません。中1は比較的簡単な内容ですが、年々高いレベルが求められるようになり、高2の今は自分一人で課題を見つけて取り組まなくてはなりません。テーマは自由で、5月くらいから先生と面談をしてテーマのすり合わせなどを行います。3学期の中間発表に向けてパワポで資料をまとめなくてはならず、けっこう作業が大変ですね。
梅原(Hasso Camp Projectミライ2024参加高校生)
私の学校では探究学習自体はないのですが、プレゼンやレポートが年間10本以上課されるほか、2年生の9月からは卒論の準備が始まります。その合間にちょこちょこ個別の課題も出てくるので、つねに何かに追われている感じです(苦笑)。
岩崎(Hasso Camp Projectミライ2024参加高校生)
僕は中1までマレーシアでインターナショナルスクールに通っていたのですが、そこではほぼすべての授業が探究学習のような形でした。でも帰国して通っている今の学校ではほぼ座学しか行われないので、生徒会活動や課外活動などを通じて自分なりに探究学習に近いことに取り組んでいます。
永田
能動的に取り組まれているなんてすごいですね!
皆さんの学校の探究学習や個人の課題などでは、先生方はどういった立ち位置で関わるのでしょうか。
星
私の学校の場合は、基本的に全部自分で内容を考えて、教員面談の場で報告書を提出するのですが、それを見ながらアドバイスをいただく、という感じです。担当する先生はランダムで決まります。
梅原
私の卒論のケースだと、先生方の専門領域を参考に、どの先生に指導してもらいたいかを自分で決めてお願いするところから始まります。かなり厳しく指導する先生もいれば、のびのびと自分の言葉で書けばいいというスタンスの先生もいて、指導方針はさまざまです。テーマについても、始めから自分で考える生徒もいれば、イチから先生と考えていく生徒もいます。
岩崎
小学生時代に通っていたインターナショナルスクールでは、2人いる担任の先生のどちらかに相談しながら進めていました。
豊嶋
すでに大学生のように自分で考えて進めているのですね。先生もバックグランドや専門領域はさまざまだと思いますし、進め方や得意不得意の相性もありますよね。複数の先生の中から決まるというのはいいですね。
豊嶋
今回のHasso Camp Project ミライのプログラムでは私たち社員もメンバーとして各グループに加わり、一緒に取り組ませてもらいましたが、それはいかがでしたか。
梅原
教える立場と教えられる立場で固定されていると、なかなか質問しづらいときがあることもありますが、社員の方がフラットにこちらの立場に歩み寄ってくださったので、教えられるという感覚ではなく、一緒に考えるという感覚でいられました。
岩崎
高校生の僕らだからわかることもあるし、大人だから知っていることもある。違う視点が組み合わさって、多彩な議論につながった気がします。
星
普段家族や先生以外で世代の違う人たちと関わることがあまりないので、自分が知らないことをたくさん知れたこともよかったです。特にアイデアのタイトルを考える際、社員の方の言葉の引き出しが多くてとても参考になりました。
豊嶋
参加した社員のアンケートでも、「高校生ならではのコミュニケーションの取り方や視点を学ぶことができて良かった」「自分の価値観がアップデートされた」という声がありました。いつもは教える立場の人が逆に教えられることを「リバースメンタリング」と言いますが、まさにそれが起きていたのかなと。フラットな関係性で互いに刺激し合うことができていたら嬉しいです。
中村
探究学習の考え方が急速に普及したことで、教育現場では勉強を「教える」他に、探究活動を「やらせる」機会が増えてきていると思います。しかし、生徒の立場からすると、一方的に「やらされる」ことが続けばやる気がそがれ、まさに「探究疲れ」が起きてしまう。今回のプログラムでは、「教える」でも「やらせる」でもない立場、「共に考え創り上げる」という第3の関わり方で大人が介在していました。今後の探究学習においても何かヒントにできるものがあるかもしれませんね。
豊嶋
改めて、皆さんはなぜこのプログラムに応募しようと思ってくれたのでしょう。
岩崎
僕はもともと広告会社に興味があったこともあり、親がこのプログラムのことを知って教えてくれたのですが、まず「居場所」というテーマにすごく惹かれました。というのも、日本語でいう「居場所」は人のつながりとか空間的なものまで含みますが、それに相当する外国語がないので、海外でもあえてそのまま「Ibasho」と表現されるんです。改めて「居場所」の意味を掘り下げられたらおもしろそうだなと思いました。
星
私も、広告会社に関心があることを知っていた美術の先生が、このプログラムについて教えてくれました。
梅原
私は進路選択のタイミングで、博報堂についてリサーチする中でこのプログラムについて知りました。広告会社に行くために大学で何を学ぶべきか考えていたところだったので、社員の方にも相談してみたところ、「学部は関係ない」「その時やりたいことをやればいい」とアドバイスをいただけて少し気が楽になり、自分が進みたい学部を決めることができました。
豊嶋
高校生がいろいろな社会人と話す機会ってあまりないと思いますし、将来を考えるいい機会になったのなら嬉しいです。
プログラムを通じて印象に残っていることはありますか。
梅原
私が良かったなと思ったのは、DAY3の、デンマーク発の都市デザイン&戦略コンサルティング会社Gehl(ゲール)のSophiaさんによるオンラインでのインプットトークです。都市人類学の専門家で、実際に都市づくりに携わる設計会社としての立場から、居場所についての貴重なお話をうかがうことができました。そのような方と個人の力でつながることはなかなかできないですし、思いつかない発想だったので、すごく印象に残っています。
星
私は「こども食堂」を訪問した際、その運営の方が、「子どもたちには魚を与えるのではなく、釣り方を教えてあげたい」とおっしゃっていたのが心に残っています。経済的な支援が必要な子どもたちには、支援をするだけではなくて、自発的にさまざまなことにチャレンジできる機会を得られるようにしてあげたいというお話で、DAY3のアイデア発想にも大きくつながりました。
豊嶋
座学だけでは得られない貴重なお話でしたよね。
永田
このプログラムでは、多様な意見や見方に触れることで、自分だけでは気づかなかったことを発見し、さらに視野を広げてアイデアを発散させ、ブラッシュアップしていくという工程も重視していました。なので、DAY1とDAY3のグループワークでは、付箋をたくさん使ってアイデアを重ねていくという方法をとりましたが、それはいかがでしたか。
梅原
やったことのない手法だったので新鮮でした。一般的なディスカッションだと、誰かが意見を言った場合、同じ意見を持つ人はそのあと同じ内容を発言することってあまりないですよね。でも、最初にそれぞれの考えを付箋に書き、ホワイトボードに貼って、同じものは重ねていくことで、違う意見だけでなく同じ意見を持つ人がどのくらいいるのかも可視化されて、「みんなそう感じているんだ」と実感できるのもよかったです。
豊嶋
たしかに違う意見に注目してしまいがちですが、他の人との共通点もわかりやすくなるということですね。
岩崎
共通点がわかれば、それに絞って考えをさらに堀り下げていくことができる。そうやってより良いアイデアにしていけたなと思います。
豊嶋
社会人、高校1〜3年生と年代の異なるメンバーが一つのチームとなり分け隔てなく意見をぶつけ合えていたのが印象的でした。多様な視点が持ち寄られ、より深い議論が生まれていましたよね。
プログラムの中でさらにこうだったらよかったなと感じたことはありますか。
星
私は、せっかく磨き上げたアイデアを実際に形にできる機会があれば、もっと楽しくなるのではないかなと思いました。
中村
たしかに、時間をかけて出したアイデアがどのように形になって、どう世の中に影響を与えるかまでわからないとモヤモヤしますよね。アイデアづくりのその先まで並走できるようなプログラムにできるとさらに面白そうです。
永田
皆さんには「Hasso Camp Project ミライ」の記念すべき1年目に参加していただきました。来年、再来年と、同じように一緒に社会課題解決に向き合う仲間が増えていけば嬉しいですし、今回参加してくださった皆さんもOBOGとしてぜひ今後もご一緒していただきたいです。
また、皆さんからいただいた貴重な意見を踏まえて、生まれたアイデアを社会実装していったり、トライアルできるような場がつくれたらと思います。
中村
僕もこれからの探究活動のあり方を考える上で、今日の3人のお話を大いに参考にさせていただきたいと思います。共創型の探究プログラムにおいて今大人に求められるのは、「教える」ティーチャーでも、「やらせる」ファシリテーターでもなく、「一緒につくる」ジェネレーターとして関わることなのではないかなと考えています。それこそが、立場や視点の違いを力に変える博報堂DYグループが追求していくべきプログラムのあり方なのかなと思っています。
豊嶋
高校生の皆さんが前のめりに参加してくださったことで、そのような場でしか得られないエネルギーが生まれたと思います。熱量の高い3日間にしていただき、我々にとってもありがたい経験となりました。
今回、はるばる大阪や山口から参加してくださった高校生もいました。初回は東京・赤坂を中心にプログラムを実施しましたが、今後は東京だけでなく日本各地につなげていくことができれば、より多様な視点が得られるのではないかと思います。ゆくゆくはグローバル展開も見据えて、このプログラムを大きく育てていきたいです。
皆さん、本日はどうもありがとうございました!
博報堂入社後、食品・ゲーム・教育・自動車・運送など、ストラテジックプラナーとして幅広い業界のマーケティング戦略立案に従事。ブランディング業務を中心に、グローバル業務や、新商品開発、新店舗設計、新事業開発を担当。高大連携プロジェクトなど、教育関連領域も推進。
2012年株式会社博報堂入社。航空、化粧品など複数クライアントのマーケティングプロデュースに従事後、自社の業務フロー変革およびプラットフォーム開発、ビジネス領域拡張推進を担い、現在はサステナビリティ推進室にて、主に環境領域、社会貢献領域を推進。
インフラ企業を経て、2019年株式会社博報堂入社。ペットボトル飲料のマーケティングプロデュースに従事後、現在はサステナビリティ推進室にて、社会貢献領域を推進。
■博報堂DYグループが提供する中高生向け探究学習プログラム「Hasso Camp」には、高校生向けの「Hasso Camp Projectミライ」を含め、2種類のプログラムがあります。
◎「Hasso Camp Projectミライ」プログラム
高校生と博報堂DYグループ社員が1つのチームになり、長期休暇期間の約1ヶ月をかけて社会的テーマに挑戦するプログラムです。実践の中で「発想力」と「創造性」を育んでいきます。高校生が個人で参加し、チームで協力しながら全3回のプログラムに取り組んでいただきます。(本プログラムは個人でのお申し込みとなります)
・開催時期:8月
・対象:高校1〜3年生
・回数:全3回
・場所:東京・赤坂、都内近郊(フィールドワーク)
・定員:30名
・費用:無料
◎「Hasso Camp」プログラム
社会や地域、自身の課題をテーマに、中高生の「発想力」を育む120分のプログラムです。独自のフレームワークを用いて、中高生の皆さんに新たな視点を発見したり、アイデアを発想することに挑戦していただきます。(本プログラムは学校単位でのお申し込みとなります)
・開催時期:通年
・対象:中学1〜3年生、高校1〜3年生
・回数:1回(2時間)
・場所:東京・赤坂
・定員:4~30名
・費用:無料
※各プログラムの詳細につきましては「Hasso Camp」サイトをご覧ください
https://hassocamp.hakuhodody-holdings.co.jp