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デジタル時代の「新・ブランド論」【第6回】
大規模定量調査から読み解く!―デジタル時代における「感情」起点の買物行動の実態②

2025.02.19
SNSなどデジタル環境の変化に伴い、生活者の情報選択・購買・消費行動は大きく変化しています。また、様々なテクノロジーの登場によって、企業の行うデジタルマーケティングも日々進化しています。その一方で、長期的な視点に立った企業と生活者との絆づくりである「ブランド」はどうでしょうか?デジタル時代において、改めてブランドとは、ブランディングとはどうあるべきなのか──そんな問題意識からスタートした「デジタル時代の新・ブランド論」構築プロジェクト。
本連載では、マーケティング、消費者行動論、社会心理学などに精通した研究者と博報堂DYホールディングスのマーケティング・テクノロジー・センターのメンバーによって進められているプロジェクトをご紹介します。
第6回では、前回に引き続き、大規模アンケート調査をもとにした情報接触や購買行動の変化を議論していきます。
第5回はこちら

<プロジェクトメンバー>
(写真左から)
米満 良平
博報堂DYホールディングス
マーケティング・テクノロジー・センター 上席研究員

石淵 順也氏
関西学院大学商学部 教授

澁谷 覚氏
早稲田大学大学院経営管理研究科 教授
本プロジェクト共同代表

西村 啓太
博報堂DYホールディングス
マーケティング・テクノロジー・センター 室長補佐
本プロジェクト共同代表

柿原 正郎氏
東京理科大学経営学部国際デザイン経営学科 教授

感情起点の買物に満足したら、人生の幅が広がる?

西村
ここまでの議論では、大規模アンケート調査を元に、感情と購買がどのように結びついているのか、3つの軸でパネルを分類して結果を分析してきました。今回は、感情起点の買物の情報源や、情報の広がりについて見ていきたいと思います。

何らかの情報源をきっかけに、感情が盛り上がって買物して「楽しかった!」という正のフィードバックがあると、学習を通じてその人のメインの購入ルートになっていく、ということがあるのでしょうか。

石淵
そういう側面がとてもあると思います。感情を起点に買物や体験をして、それがプラスだったら、人生の選択肢が広がったと感じ、自己の確立にも役立ってくる。心理学者のバーバラ・フレドリクソン氏が提唱する「拡張-形成理論」では、ポジティブな感情が思考と行動のレパートリーを拡張することで能力が形成され、この繰り返しで人は成長する、と説いています。まさに、感情起点の購買が、その人のメインになっていく流れに合致しますね。

西村
なるほど。心が動くことを通して成長するというのは昔からそうだったように感じますが、消費者行動やブランド論の観点からは感情があまりフォーカスされていなかったのかもしれません。

石淵
ブランド論は、基本的に企業側が顧客を戦略的に囲い込もうとする狙いがありますが、一方でフレドリクソンの新しい経験を重ねることで人生の幅が広がるという理論は人の心理に着目したもので、視点の違いがあります。両者を取り入れることで、今のデジタル時代における買物行動やブランドを捉え直すことができるのかもしれません。

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