横山
今回は、PEAK代表のソさん、博報堂の業務と兼任する形でPEAKに携わる私・横山と、博報堂ケトル(以下ケトル)から代表の船木さん、そしてクリエイティブディレクターの南さんの4人で話したいと思います。
取材場所である、ここ「ハラカド」3階の「STEAM STUDIO」は、PEAKとケトルが共同で運営しています。
ソ
この両社は、グループ内で「連携してシナジーを生んでいこう」とされている2社なんです。
世の中的にはない言葉ですが、これを「育て合い」と言っていて。コラボすることで、お互いが補完するだけじゃなく学び合って成長することができる、そういう関係性を目指していますし、実現しつつあると思います。
横山
特にSTEAM STUDIOでは、ハラカドの開業とともに2024年4月17日にオープンしてから年内までの8カ月ほどで、LIVEスタジオ運営、LIVEコマース事業、研修、PRイベントに活用、大学生を招いたワークショップイベントの開催など、さまざまな企画を実施しました。いろいろと実験しましたね。特に様々なクリエイターを招き「100日連続LIVE」をした実績はグループ内でも今までにないチャレンジになりました。
まずはこのスペースができるきっかけをつくった船木さんから、立ち上げの発端と、今年の振り返りを話してもらえますか?
船木
発端は、そもそも「ハラカド」自体の立ち上げをケトルが支援していたので、並行して僕らが入居するのもひとつの実験だと思い「何ができるか考えて」とヨンボンくんと南にパスしたことです。やかんのケトルと頂上のPEAKで、“やかんを沸騰させる”=蒸気?スチーム?と、その場で名称が生まれました。
最初からあまり決め込まずに「縦型動画をやっていこう」と発信していたくらいで、この場所の意義や使い方は運営しながら考えるつもりでした。そこに“勝手に”横山さんが加わって(笑)今につながるアイデアが生まれていきましたね。
最初の3カ月ほどは、いろいろな方に案内しながら意見を聞いて、どんなことに使えるかを丁寧に探っていった感じですね。
ただ、思いのほか1年でいろいろなことを試せたと思います。例えば、2024年度の博報堂/博報堂DYメディアパートナーズの新入社員研修では、クリエイターと組んで2日間で企業の商品の縦型動画を制作しました。
横山
はい。研修は私と南さんが講師を務め、実際に企業のオリエンを受けるところから納品まで、一通り実施しました。研修後に新入社員からの反応もすごく良かったと聞いています。原宿の交差点にあるスタジオというのが新鮮でいいですよね!
船木
アイデア次第で、いろいろなことができる場だなと実感しました。クライアント企業に対しても、それぞれの課題によって「やってみたい」とご相談されることは縦型動画だったりLIVEコマースだったり、顧客との共同商品開発だったりと多様ですが、とにかくこの場所には、たくさんのニーズがあることがわかってきた1年でした。あと、ケトルのオフィスは赤坂にありますが、原宿に通うことで日々たくさんの人が行き交いカルチャーが生まれるこの場に刺激をもらっています。もっと僕らはストリートに出なきゃだめなんだって。
横山
この場所の認知や、ここに対する期待が広がっている感触がありますか?
船木
そうですね、じわじわ広がっていると感じます。ここの価値が注目され始めている。
というのは、神宮前交差点って日本の中でも影響力のある一等地ですよね。
そんな場所にあるSTEAM STUDIOで、スペースと街の感度を生かして、若者向けのLIVE型マーケティングを中心に潜在顧客と深いコミュニケーションが取ることができる。その点に、企業の方々も気づき始めていると感じます。
横山
なるほど。そうした流れの中で、ケトルとのシナジーという点で、PEAKとしてはこの1年でどんな感触を持ちましたか?
ソ
当社同様、ケトルも “推し活”文化に通じるファンダムマーケティングをすごく大事にしていることがわかります。新しい時代のクリエイティブが、クライアントの新しい時代のオリエンと自然に引き合っているのを目撃して、PEAKも大きな刺激を受けています。
また、南さんは私よりかなり年下ですが、やり取りさせていただく中で、人としてもプランナーとしても成熟しながら若いパワーがあると感じています。PEAKも全体だと平均年齢27歳で、ボードメンバーも僕以下だと29歳と30歳とすごく若い。そうした親和性もあって、船木さんから南さんと僕が、この場の使い方を考えるお題をもらったのだと思います。PEAKはエグゼキューションの会社なので、今のところケトルがプラニングを、僕らが実行を、という座組で動いています。
横山
南さんは、ソーシャルメディアを捉えたマーケティング戦略やプラニングが得意ですよね。
そうした点で次世代のクリエイティブディレクターと呼ばれていますが、この1年の実践はどう感じていますか? 企業のLIVEコマースなどにも、他にない場所として活用されていましたが、私としては「教育現場」としての可能性も強く感じました。
南
はい、それは僕も感じます。一方で、逆説的ですが、むしろここで研修を展開することで僕らが若い人たちから学んでいる気がします。教えるではなく、教わっていることの方が多い。
僕は今30代ですが、それでも10代20代から見れば十分“おじさん”だという自覚を持たないと、と思っていて(笑)。事実、ここで研修だったり、10代を集めたワークショップを行ったりすると、本当にみんな動画をうまくつくるんですよ。スマホネイティブ、縦型ネイティブだから、僕らのほうがむしろ遅れている。
船木
そう、僕やケトルの同世代メンバーが思いつくようなことをしていてはダメなんです。
南
僕も、10代20代の人を想定するともはや船木さん側ですからね(笑)。
STEAM STUDIOでは例えばクライアント企業の新人研修で使ったり、そこに中堅のクリエイターを交えてお互い学びを得たり、といったこともできそうだなと思います。逆に、中堅社員の研修として、若年層のインフルエンサーをゲストに迎えることで刺激になるはず。
若いときって、どうしても気後れするし、先輩や上長にものを言えないところがありますよね。でもSNSや縦型動画での届け方は、若い人がいちばん知っている。一気に主役になれるし、対等になれます。すると、今大きくクリエイティブのプロセスが変化していますが、この「若者から学ぶ」点はそれを加速させるかもしれません。
横山
私たちはその考え方を「アイデアをスチームさせる」なんて呼んでいますよね。
「STEAM教育」なんて言葉が記憶に新しいですが、AIなどの技術が発展すると“効率化”されることが多くなりがちです。しかし、そればかりに頼っているとアイデアは“同一化”してしまい、もういつか…私たちならではの価値が生み出しづらくなる。
南
あれ、横山さんしれっと韻踏んでます?(笑)
この取り組みは特に、地域のクライアント企業などのご要望もありそうだなと。
横山
バレました?(笑)。実際に世代や立場を超えたワークショップを通して、オフラインで熱量のある議論を起こしたり、他にはないアイデアを半ば強制的に生み出す場として需要が高まっている。このスタジオの壁はやかんと同じ素材でできているので、物理的に戸を閉めてアイデアが沸騰するまで出れないなんてゲーム性のある使い方ができるのも面白いところ。
ソ
生活者が常に行き来するオープンな場所なので、例えば企業がこの場を2日ほど貸し切って若年層にヒアリングしたり、動画をつくったりする取り組みは、新しい展開が生まれそうです。原宿の中心でポップアップショップを出したりすると、ものすごい予算がかかりますからね。それに比べると、STEAM STUDIOの利用料はぐっと低いのも魅力です。
船木
ソさんの言う通りプロモーションやリサーチだけでなく、商品開発にも使えます。この場を月1回使ってワークショップを重ねて商品開発に漕ぎ着ける、という年間の企画が動いています。「ここならテストマーケティング的なことができそうだ」と思われる企業がだんだん増えてきた実感があります。
ソ
興味深いのは、STEAM STUDIOでは若者とベテランが自然に交わるようになる点です。
僕もずっと広告業界にいて感じるのですが、やはりクライアントとのつながりは先輩たちのほうがずっと深いし、情報も経験も持っている。でも、今そのクライアントが求めていることのヒントは若者が持っている、という構図があります。だからこそ、若者が主役になって、臆さず意見したりアイデアを形にしたりできることが大事。
そこにシニアクリエイターやクライアント、ライバーやときに顧客も加わって共創していくことに可能性があると思います。
2024年に行ったとある企業のLIVEコマースは、まさにそんな感じで、学園祭のようなノリでしたね。必ずしもリッチじゃなくていい、手作り感があるほうがむしろ伝わる。STEAM STUDIOで実現できているような、若手とシニア層のコラボレーションは、今後ますます重要になってくると思います。
横山
単なるスペースではなく、体験と共創を前提としたプランニングを設計できる場ですよね。
南
先ほど、クリエイティブのプロセスが変わっているという話が挙がりましたが、LIVE配信に限らず、時代に合わせてどんどん打ち手を変えていくことがクリエイティブ的にもスタンダードになっていくはずだと思っています。時間をかけてブランドを作っていくことが大事な場合もありますが、生活者の興味の移り変わりに合わせていくとそれでは間に合わないというケースも増えています。
STEAM STUDIOは、そうした事例が生まれる場になりつつあります。
横山
決め切らないから生まれること、実現できるアイデアがありますよね。だからこそ様々なパートナーが入ってきやすい場になっている。モジュール化されたブロックの什器を使って授業をしたり、ポップアップをしたり気軽で自由な使い方も魅力。
ソ
それがSTEAM STUDIOのカルチャーなのかも。
だから1年目でいろいろなプロトタイピングができたのだと思います。
横山
2025年4月から2年目に入りますが、ワクワクしますね! この春からどんなことをしていきたいかを教えてもらえますか?
船木
クライアントに並走している商品開発が2年目になるので、今年は実際に商品ブランドをローンチしたいですね。 “売らんかな”の発想で、安易にキャラクターを付加するようなやり方では、うまくいかないと感じています。だからこそ共創を通して生まれた手作り感を残して、形にしていきたいですね。製品ではなく無形のサービスでも実践できると思います。
それと、4月17日にハラカドの1周年イベントが開催されます。いままさに企画中なので、ぜひ多くの方に楽しんでほしいですね!
ソ
2年目は、よりリアルでオープンな場としての強みを活かしていきたいですよね。目線を若者に合わせているので、若い人に集まってもらってリアルな意見を聞いたり、先ほどのテストマーケティングに使ったりするのを、もっと深掘りできればと思います。
また、ここをポップアップストアにすればモノも売れるし、ハラカド内には飲食店もたくさんあるので、コラボしたら飲食系の販売もできそうです。
船木
クリエイティブとメディアがくっついた、新しくて象徴的な場所ですよね。
僕がいちばん惹かれるのは、なんていうか、嘘がつけない環境であることです。
もちろん既存の企画に嘘があるとかではないのですが、共創を前提とすると、嘘がはさまる余地がない。特に若者を中心に、世代が交わるとそんな傾向が顕著な気がします。物理的にも、通路に開いた窓からいつものぞかれるし(笑)。
横山
“嘘のつけない場”という意味ではPEAKが積極的に取り組んでいる「BeReal」というプラットフォームを活用した、この場所ならではのサービス開発も挑戦したいですね。例えばその場でリアルタイムに撮影したBeRealの投稿が、原宿交差点のサイネージに投影されるなど飾らないリアルな熱量をこの場所から発信していきたいです。
南
本当ですね。若い人はもちろん、シニアクラスの方々も、クライアント企業でも博報堂グループ内でも「こんなことができるんじゃないか」と思う人には来てみていただきたい。
横山
PEAKと博報堂ケトルが仕掛ける体験と共創の形はこれからもどんどんと進化し続けていきますね。これからもアイディアを沸かせて、世の中を沸騰させ、更には蒸気でどんどん登っていけるような活動をしていきましょう!