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金融業界から見たAIと人間、そしてメディアの未来

2025.04.07
フィンテックをはじめ、積極的にAI活用を進めている金融業界。メディア環境研究所では、AIが社会や産業、メディアにもたらす影響について研究・洞察する「AI×メディアの未来」プロジェクトを立ち上げました。その一環として、さまざまな分野で活躍されている有識者にインタビューを重ねています。
三菱UFJフィナンシャル・グループの中核企業の一つで、国内最大級のクレジットカード会社である三菱UFJニコスもまさにAI活用を積極的に進めている企業です。今回は、同社代表取締役社長の角田典彦さんに、生成AIの普及による金融業界へのインパクトや、社会基盤に対してどのような変革を起こしていくのかをテーマに、メディア環境研究所 冨永直基がお話を伺いました。

今後30年は、「AI×人間」のハイブリット型が主流に

――生成AIは、社会や事業においてどのようなインパクトを生み出すと考えていますか?

私も生成AIを使っていますが、すでにかなりレベルが高いと実感しています。今後もますます進化していくので、言語から動画・音楽まで生成AIに置き換え可能な対象は飛躍的に広がっていくでしょう。

具体的な変化としては、コストと時間の節約ができること。本当の意味でクリエイティブな思考などの部分は人間が担いながらも、そのために必要なデータ収集や作業などはもっともAIが得意とする部分。

もし作業の時間をAIに任せ、人間が全部、思考のほうに注力できれば、クリエイティブの質やスピードや精度が上がる。そういう意味で、ハイブリッド型が当面は主流になると思います。

――ChatGPTを代表とする生成AIの登場で、いずれはクリエイティブな仕事も取ってかわられるのではないかと不安を感じる人も多いと思います。

「本当のクリエイティビティとは?」を定義分類するのはなかなか難しいですが、擬似的にはいずれできると思います。

例えば、音楽系AIならサザンオールスターズらしい音楽をもうすでに作れるのは皆さんご存知だと思いますし、Mr.Childrenの桜井さんそっくりの歌い方で他の曲を歌うこともできてしまっています。

ただし、これを人々が受け入れるかどうかを考えてみると、現状はまだAIが作ったものに対する忌避感が非常に強いと思いますし、著作権や倫理の問題もあるのでどこまで広がるかは分かりません。

また、人間に近い擬似的な思考はできても、現在の半導体の演算能力では本当に人間そのものの思考を再現するほどの能力はないため、おそらくあと2~3世代くらいは時間がかかる。1世代を5〜6年だとすると、最大で20年ほどはかかるのではないでしょうか。

――生成AIが技術的にさらに成長したときに、人々はAIが作ったものをすんなりと受け入れていると思いますか?

生まれたときからAIが作った音楽や映像に触れている人は、僕らよりも遥かにハードルが低いので受け入れられるでしょう。一方で、年配者になっていく僕らのような世代の方々は抵抗感がある。なので、すぐには難しいと思います。

でも、すごく面白い小説が生成AIに作れるのだとしたら、それは作り手がAIでも人間でも面白いものは面白いとなる。ただ、生成AIを超える天才的な人間はおそらく出てくるので、やっぱり「併存」ですよね。生成AIの比率が今後上がっていくとしても、全てがAIに置き換わることはおそらくないと思います。

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