アセアンに駐在する日本人にとって、アセアン生活者の時間意識は少し不思議に思うところがあります。たとえば以下のように感じたことはないでしょうか?
などなど、上記の例に限らず、時間の感覚というものは国によって異なるようです。
そこでアセアン生活者マガジン第1号では「アセアン生活者の時間感覚」をテーマとして取り上げました。
日本人にとって時間にまつわる言葉としてなじみがあるのはTime is Money(時は金なり)だと思います。しかし、アセアンのいくつかの国にはRubber Time(ゴムの時間)という言葉があります。(インドネシアではジャムカレットといいます)これは時間とはゴムのように、伸びたり縮んだり、たわむものだから、気にせずいこうよといったような意味です。
そこでアセアン各国のRubber Time度はどの程度なのか、独自の調査で明らかにすることにしました。
友達との待ち合わせにおいて
「何分まで友人を待てますか?」
「何分までなら遅れても構わないと思いますか?」
この二つの質問によって、各国の意識の違いを浮き彫りにします。
アセアン5カ国中、もっとも気長に友人を待てるのはタイで31.4分(下図赤囲み・クリックで拡大)でした。一方最も友人を待たせてもいいと思っているのはインドネシアで28.6分(下図青囲み下)という結果になりました。
更に興味深いことにインドネシアでは友人を待てる時間は27.6分(下図青囲み上)で、アセアン5カ国中、唯一「友人を待たせてもいい時間」が「友人を待てる時間」を上回りました。
友人との待ち合わせ どれだけ待てる?どれだけ待たせる?
(クリックして別ウィンドウで開く)
インドネシアの場合、「待てる時間のほうが待たせてもいい時間よりも短い」ため、友人と待ち合わせで出会えないかもしれない、ということになります。実際、インドネシアに出張した際、現地在住の日本人の方からは待ち合わせに15分遅れていったら、相手が映画を見始めてしまい、逆に2時間待たされたということもあるとお聞きしました。
さらにこうした定量調査を裏付けるため、実験調査も実施しています。実験調査は「友人との待ち合わせに、わざと一人だけ1時間遅刻してもらうよう依頼、待つ側、待たせる側がそれぞれどういう行動をとるかを観察する」というものです。
実際インドネシアでは待つ側の人もかなり遅刻して到着するなど、定量調査結果を裏付けるものとなりました。(下図参照)
これらの調査よりRubber Timeについて以下のように各国の特徴をまとめています。
・Time is MoneyとRubber Timeを比べた場合、どちらがいい考え、悪い考えということではなく、経済中心社会では、Time is Moneyの価値観が是かもしれないが、生活者中心社会ではRubber Timeという考え方はリラックスして生活を楽しみ、またお互いのペースを尊重するという前向きな意味があるのかもしれません。
・各国の特徴としては、シンガポール、マレーシアはTime is Moneyの価値観が強い印象。タイはゆったりしたRelaxed Rubber Time、インドネシアは、個々人のペースを尊重するRubber Time at your own pace、ベトナムは経済発展のためRubber TimeからTime is moneyに意識変革をはかろうとしているところ、というふうに考えられるのではないでしょうか。
詳細、他の調査がアセアン生活者マガジンVol.1に掲載されておりますので、ぜひご一読ください。
生活総研アセアンホームページの「Magazines」より、日本語版と英語版のPDFをダウンロードいただけます。
次号は2016年6月頃の発行を予定しています。
博報堂生活総合研究所アセアン所長 帆刈 吾郎
【プロフィール】
1995年 博報堂入社。 マーケティング・プラナーとして得意先企業のマーケティング業務を担当
2005年 英国ロンドンの広告会社に出向
2006年 英国ロンドンのブランドコンサルティング会社出向した後、同年、博報堂に復職
2013年 博報堂アジアパシフィック(HAP)にエグゼクティブ・リージョナル・ストラテジック・プランニング・ディレクターとして赴任
2014年 博報堂生活総合研究所アセアン所長