昨今、地域創生やインバウンドの拡大などで、地域の生活者を取り巻く環境が変化しています。北海道博報堂では、「一歩先の北海道民=新どさんこ」の姿を生活者データ分析や未来予測から提言する専門組織「新どさんこ研究所(略称:新ど研)」を立ち上げました。
★リリース:http://www.hakuhodo.co.jp/archives/newsrelease/27651
本研究所設立の背景や展望について、新どさんこ研究所 所長の山岸浩之(やまぎし・ひろゆき)が語りました。
-所長の経歴を簡単に教えてください。
もともと、東京の広告会社でマーケティングを担当し、様々なクライアントの戦略立案やキャンペーン効果検証などに携わっていました。でも、妻が札幌出身で、家族の中では、いつか北海道で暮らしたいという思いが強くて。子どもが3人いるのですが、3人を連れて北海道に移住しちゃったんですね。
北海道博報堂に入ったのは2014年1月です。入社後は道内のクライアントの戦略立案やリサーチ等に従事してきました。
“北海道の生活者発想”を強化する
北海道博報堂のチャレンジ
-「新ど研」設立に至った経緯を教えてください。
北海道博報堂は地域会社として独立して12年目になるのですが、もっと地域に根づいた、北海道民を知り尽くした“北海道の生活者発想”を体現した会社にしていかなければいけないという思いがありました。それを具現化するためのアイデアの1つに「北海道の生活総合研究所」が必要というものがあって。そのアイデアを具現化したのが「新ど研」です。
新ど研は、北海道の生活者を研究しますが、北海道の未来の姿を見つけようというゴールを掲げています。「新どさんこ研究所」という名前にしたのも「未来の新しいどさんこ像を探る」機関としてやっていこうという意思なんです。「どさんこ研究所が新しくなったの?」とよく言われるのですけど、実際はそうじゃないです(笑)。
また、僕自身は東京出身で、ずっと北海道のことを外から見ていたので、北海道って広くて食の宝庫で観光の聖地でいいなと思っていたのですけれども、中に入ってみると、また全然違う姿も見えてきて。客観的な視点は大事にしつつ、もっといろんな角度から北海道の魅力や北海道民の意識を探っていこうというのも背景の1つにはありましたね。
定量×定性アプローチで、北海道民の未来を予測・提言
-「新ど研」の活動内容を具体的に教えてください。
“未来を予測してビジネスを生み出し、北海道に貢献する”という大目標を達成するべく、主に2つの活動を行っていきます。
一つは北海道民の生活者データの収集・分析です。いわゆる定量的なアプローチですね。「新どさんこリサーチ」という名称で、1000~1500人のサンプル規模の調査を今年からスタートしようとしています。毎年、定点的に観測していく想定です。
もう一つは、フィールドワークです。北海道内の津々浦々に出向いて、人口減少の時代に人口が増えている、とか、若者がたくさん集まっている、といった傾向を目で見て話を聞いて分析する定性的なアプローチですね。
あとは、テーマ別の研究も行っていく予定です。それぞれの研究員が関心のテーマを深堀していく。たとえば、スイーツにとても強い研究員がいるのですが、彼女は北海道のあらゆるスイーツをチェックしていて、成分表示を見ればだいたいの製法や味のイメージがつくんです。道内のお菓子メーカーはもちろん、地方の街のケーキ屋さんの情報も持っています。その強みを活かして未来のスイーツやお菓子などを研究してもらおうと思っています。
-新ど研は現在、何名で構成されているのですか。
7名体制です。マーケッター、クリエイター、デジタル系の人間など、幅広い職種の人材で構成しています。若者からの目線も大事なので、学生の研究員の方も1名います。
-発表して2か月くらいですが、周囲の反応はいかがでしょうか。
クライアントからは多数のお問い合わせをいただいています。北海道の新聞等に載せていただいたこともあって、かなりいろんな方がごらんになっていて。ぜひ説明を聞かせてほしいと、特に経営層の方からお声がかかるようになりました。
また、一緒に取り組みたい、協力するよと言う人もたくさん出てきています。1つ旗を立ててみると、いろんな人が集まってくれるんだなという嬉しい実感はありますね。
あとは、博報堂グループの他の地域会社から、同じように地域に根ざした取り組みを検討していて参考にしたいといった声もありました。
自治体や企業、メディア、生活者を巻き込み、共によりよい北海道をつくる
-今後、実現したいことや展望を教えてください。
北海道の未来へ向けた様々な動きと連携していきたいと思っています。今年3月に北海道新幹線が開業して青函経済圏が期待されていますし、今後は札幌延伸に向けて進んでいます。また、2018年には「北海道」と命名されてから150周年の節目を迎えます。そして、2026年の冬季オリンピック・パラリンピック招致を札幌市が正式に表明して活動を始めています。今後も北海道に注目が集まっていくのではと思いますが、「新ど研」の生活者データや情報をもとに、北海道の未来の動きを予測して、クライアントのビジネスをサポートしていきたいと考えています。そして、よりよい北海道をつくるお手伝いが出来ればと思います。
北海道は、いわゆる「競争型」で競い合ってきた文化ではないと思います。どちらかというと異なる点も認め合う文化というか、「共創型」の土地柄であるように感じます。僕らも、自治体や企業、メディア、生活者と一緒に、共創型アプローチで提案したいと考えています。最終的には、何か北海道ならではの新しい文化やライフスタイルを創りだしていければいいなと思っています。
あとは、インタビューと直接関係ないのですが、今年、北海道に家を購入しまして(笑)。北海道って、一度入ると、そこから離れられない魅力があるみたいで、すでに子どもたちから「もし東京に戻るんだったら、お父さんだけで戻ってください」と言われています(笑)。私自身も今後一層、北海道と寄り添っていければいいなと思っています。
<終>
2014年北海道博報堂入社。
コミュニケーション戦略局長兼マーケティング部長 として、
北海道の様々なクライアントの戦略立案やリサーチを担当。