その昔、モータリゼーションが進展していた1960年代、1970年代、日本では子供がクルマの絵を描くと、ほぼセダンの絵を描いていたと言われています。かくいう自分も、クルマの絵を描くときは、無意識にトランクのあるセダン型の絵を描いていました。クルマといえばほぼセダンだった時代ですから、当然のことかと思います。
ところが近年は子供にクルマの絵をかかせると、セダンではなくミニバンの絵を描く子のほうが多いと言われています。ニーズの多様化に伴い、車型のバリエーションが増え、特に子供を連れた家族世帯ではミニバンが主流の車型になっていることを反映しているのでしょう。
では、モータリゼーションが本格化している現在のアセアンの子供たちにクルマの絵をかかせたらどんな絵を描くのでしょうか? こんな問題意識からスタートした企画、今風に格好よくいえば「生活者発想による未来市場トレンド予測手法」でもあるのです。
調査手法は、アセアン五カ国の子供とその親それぞれに、「クルマと聞いて思い浮かぶもの」と「将来乗りたいクルマ」の絵を描いてもらいます。 ※シンガポールでは子供だけ聴取。
そして「クルマと聞いて浮かぶもの」と「将来乗りたいクルマ」として描かれたクルマの車型を比較分析することで、将来のクルマトレンドを抽出します。
実査にあたっては事前に下記のようなクルマトレンドの仮説を立てています。
さて、結果を見てみましょう。
これがボディタイプに関する結果まとめ表です。ここでは見にくいと思いますが、各国ごとに「クルマと聞いて浮かぶもの」と「将来乗りたいクルマ」として描かれたものを、親子それぞれ表に入れています。
では、この表からどのような傾向が見えたのでしょうか。
アセアンに共通する主なファインディングスは下記のとおりです。
仮説に対し、インドネシアでは、将来乗りたいクルマとして、スポーツカーの人気が高く、SUVは堅調、一方でセダン、MPVの人気は低下しています。タイでは仮説通り、将来乗りたいクルマとしてのセダン、ピックアップトラックの人気が大きく低下しています。
ASEAN全体では日本の子供たちと同じく、MPVの絵が増加し(インドネシアを除く)、セダンの絵を描く子供は減少傾向と出ました。しかし、スポーツカーへのあこがれが根強いのはASEAN成長のパワーを象徴しているような気がします。実際、私の周りの現地スタッフに聞いてもスポーツカーへのあこがれは日本より強く感じます。
各国のファインディングスなどの詳細は、アセアン生活者マガジンVol.2に掲載しておりますので、ぜひご一読ください。生活総研アセアンホームページの「Magazines」より、日本語版と英語版のPDFをダウンロードいただけます。
博報堂生活総合研究所アセアン所長 帆刈 吾郎
【プロフィール】
1995年 博報堂入社。 マーケティング・プラナーとして得意先企業のマーケティング業務を担当
2005年 英国ロンドンの広告会社に出向
2006年 英国ロンドンのブランドコンサルティング会社出向した後、同年、博報堂に復職
2013年 博報堂アジアパシフィック(HAP)にエグゼクティブ・リージョナル・ストラテジック・プランニング・ディレクターとして赴任
2014年 博報堂生活総合研究所アセアン所長