博報堂ブランドデザインが東京大学と開催する、大学生のためのブランドデザインコンテスト「BranCo!(ブランコ)」。今年、5回目を迎え、「BranCo!2017」として始動しました。
※ニュースリリース http://www.hakuhodo.co.jp/archives/newsrelease/33888
学生にとって、「BranCo!」の魅力とは?「BranCo!」に参加することで何が得られるのか?
昨年度優勝チーム「つくしーず」のメンバーに、BranCo!2017学生スタッフが「BranCo!」の魅力、そして優勝の秘訣について伺いました。
「つくしーず」は、伊藤望さん(神戸大学4年生<当時>)、大川将さん(関西学院大学4年生<当時>)、福田沙季さん(関西学院大学4年生<当時>)の3人のチームです。昨年度のお題は、“学び”。リボンフレーム(詳細はこちら)に基づき、インプットの上で“学び”を個々のチームが定義し、それに即したブランドデザインをアウトプットするというもの。
彼らは、「学びを測る適切な単位は何か」という切り口で考えてみたところ、学びには「手段的学び」(点数や成果などの「できた度」で測られる学び)と「自己目的的学び」(家庭や費やした時間の豊かさなどの「やった度」で測られる学び)に分類出来ることを発見。最終的には、自分たちで新たな学びの単位を作り、キャンディブランドのアウトプットを提案しました。
─「つくしーず」さんはどういった経緯でチームを結成されましたか。
大川さん(以下敬称略):僕達3人は3回生の冬に参加した他社のインターンで知り合いました。その後も交流があり、4回生の冬に「BranCo!」に出場しました。
伊藤さん(以下敬称略):僕はその前の年、テーマが“嘘”だった「BranCo!」に出ていたんです。その時はあっさり予選で落ちてしまい、悔しいなと思っていて、次の年も出ようかなと考えていました。
福田さん(以下敬称略):伊藤君から、「BranCo!」っていうコンテストがあるよ、と聞いていたので、私から出ようよと話をしました。そして、2人で大川君を誘い、チームを作りました。
─“学び”というお題が与えられてから、実際の作業はどのように進められたのですか。
大川:僕達のチームは、とにかく “アイデアを形にしては、壊す”、ということをものすごい回数で繰り返していました。そういうことを普段からやっていたので、アイデアをどんどん出したり、一から作り直すことに対して柔軟でいることができました。
伊藤:大川君の、アイデアが良いか悪いかの審美眼というか、チェック機能を信頼していたので。彼に投げてみてアイデアの良し悪しを判断していました。
大川:良いか悪いかっていうより、感覚で“ダサいかダサくないか”を言っていました。
─でも、ある程度完成したアイデアを潰してまた新たに作ることを繰り返すのは、ストレスになりませんでしたか。
大川:作業はとても楽しかったので、あまりイライラすることもありませんでした。僕は主にアイデアが良いか悪いか、ダサいかダサくないかを言う係だったので、その判断をする作業が楽しかったです。
伊藤:僕は僕で、自分が持って行ったアイデアが良いといわれるとすごく嬉しかったです。判断するのは大川君と言ったんですけど、福田さんの最後のチェックも重要でした。
大川:彼女が一番客観的でした。僕と伊藤君が“学び”とは何だ、という抽象的な話を2人でたまにしていて。そういう時に、僕らは文脈をわかっているから理解しているけれど、何を言っているかわからない、これってプレゼンしたら誰も理解してくれないよ、みたいなことを彼女がオーディエンス目線に立って言ってくれるんです。それで2人でわかりやすい説明を考えて。それが結構大きかったです。だから最終的にプレゼンがわかりやすくなったんだと思います。
─3人の役割分担が、やっていく中で自然とできていったんですね。
大川:そうですね。あと、伊藤君は3人の中で一番さまざまな情報のインプット量が多くて、ありがたかったです。雑誌や、美大の本や、学者の理論とか。そういったものからいろんなアイデアを出してきてくれました。
─ずばり、優勝できた秘訣はどこにあるとお考えですか。
大川:“コンテストだ”ということを非常に意識していました。審査員が誰かを考えて、得点をかなり意識しました。インパクトが無いと、話を聞いてもらえないしコンテストに勝てないと考えていたので、一時期3人の中で誰が一番面白いアイデアを考えられるかを競うなど、しっかりブレストをしていました。
伊藤:“学び”を擬音語・擬態語で表してみたらどうなるかとか、いろんな挑戦もしましたね。
大川:最後、心理学者の提唱した概念などアカデミックな話をプレゼンに組み込んだのも、審査員の方や得点を意識したからです。
─そこまで考えていたんですね。
福田:予選で個々の得点が出るので、低い項目の点数を上げることを意識していました。低かったのは確かコンセプトだったと思います。
自分達の強みは活かして、弱みの部分でもどう得点に繋げていくか、工夫しました。
大川:でも、優勝できた一番の要因は、たぶん単純に3人で時間をめちゃくちゃ長く過ごしたことだと思います。全チーム中で一番長く一緒にいたんじゃないかな。1人が旅行に行っている時でも、残りの2人で会ったりしていました。
伊藤:あと、“3人”っていうのも、僕は良かったかなと思います。チームの人数が多いと、予定を合わせたり議事録をしっかり作ったりと少し手間がかかります。3人だと誰かは内容を覚えていますし、何より集まりやすくてスピードもあります。ただ、最後プレゼン準備の際に人海戦術がきかないので大変ではありましたね。
─最後、そういった人海戦術がきかない部分も、3人で出したアイデアや、時間を出し合って築いたチームワークでカバーすることで、優勝に繋げていかれたんですね。
─「BranCo!」での体験を振り返ってみて、いかがでしたか。
伊藤:僕は「BranCo!」の他にも学生向けのビジネスコンテストにも出たことがあるのですが、“アイデアが面白かったら勝ち”みたいな部分があって。一方「BranCo!」は、アイデアだけでなく、アカデミックな部分やリサーチも重視しています。僕にはそれが魅力的でした。
“嘘”とか“学び”とか、テーマから自分で問いを立てる。僕達のチームは、その問いをしっかり立てられたというのが、最終的に優勝へつながったのかもしれません。
─「BranCo!2017」が始動しています。最後に今年の参加者に向けて、メッセージをお願いします。
伊藤:普通に生活している時に使う頭とは全く違う頭の筋肉を鍛えることができる貴重な機会だと思います。シンプルだけど奥深いテーマだけが与えられて、そこからアウトプットまで落とし込むという思考は普段はなかなかできないものだと思います。ぜひこの機会に、体験して頂きたいです。
福田:実際に出てみてわかることがたくさんあります。私自身、学生時代にこれだけ考えたことはありませんでした。だから本当に楽しかったです。チームで取り組むと、新しい発見があったり、自分に足りないものも分かったりして、視野が広がりました。とりあえず参加してみるくらいの気持ちでいいと思います。
大川:最終的に自分達の出したアイデアをどこまで愛せるかだと思います。「絶対にこれは社会にうける」という自信が出るまでブラッシュアップして、その上で「自分達のアイデアが一番強い」という自信を持って臨むことが大事だと感じました。
─“自信”が大事なんですね。
大川:一次予選が終わった後に、博報堂の社員の方にフィードバックをもらいに行ったんです。その時に、「すごく良かったけど、僕の方がその商品を実現させる熱意があるから、僕がやった方が強い」と言われて、的を射ていると感じました。決勝の前の二次予選でも、社員の方が、「企画を商品化まで実現させるくらいの自信がある人は手を挙げてみて」と言った時、僕らのチームも含めて誰も手を挙げられなかったんです。それが結構悔しくて。
でも、それまでの準備段階で、みんなでディスカッションをしている時から、「本当にこのアイデアは結構実用的なんじゃないか」という確信がありました。そう思えるまでやれると、良いのかなと思います。
―ありがとうございました。