博報堂には、子育て視点から家族を研究する「こそだて家族研究所」という専門組織がある。ファミリーは消費ターゲットとして重要だがステレオタイプで捉えられやすく、変化や潮流を捉えるのは意外と難しい。
生活定点は、大きな流れを見ることができるので重宝している。
今回注目したのはこれ。
2016年に1年以内の年中行事のトップに躍り出た、「家族の誕生日の祝いごと」だ。この1年以内に「家族の誕生日の祝いごと」をした人は、73.1%。20年で9.7ptも増えている。
なぜこんなに伸びているのか?
私の誕生日は盆の入り8月中旬で、子供の頃から誕生日パーティーに縁がない。1人息子の誕生日は5月初め。新学期から数週間だとこれまた自宅に誘うほどの友だち関係もできないし、大型連休中だし、お祝いは家族だけでやっている。丸いケーキを用意して近居の親族が集まるので、彼は一応「パーティーだ」と思っている。本当は友だちを呼んでゲームをしたりプレゼント交換したり、盛大な祝い方もあるんだけど、働くママは面倒くさくてサボっている。
「家族の誕生日の祝いごと」をした人を年代別でみると30代40代が高水準をキープしており、2008年以降は80%超えとなっている。子どもの誕生日を祝うパパママが含まれるからだろう。
「家族に誕生日などでプレゼントすることが多い」は、2000年くらいから少し伸びて53.1%。先ほどのデータと同様、子育て家族の多い30代が年代別トップ、次いで40代だ。
このデータでは誰が誰を祝っているのかわからないが、子どもの誕生日を祝っている人が多そうだ。
こそだて家族研究所で、「子どもの誕生日」について詳しく調べる自主調査をやってみた。
※http://www.hakuhodo.co.jp/archives/newsrelease/34526
子育てママで子どもの誕生日にプレゼントを買う人409名に、子どもの誕生日にしたことがあるものを聞いたところ、「家族で誕生日パーティーをする」94.4%。「誕生日の飾り付けをする」54.8%。やっぱり子供がいる家族は祝っている。
「友人など大勢で誕生日パーティーをする」は12.7%で、10歳以上の子供がいるママに区切っても15.5%。おぉ。お友だちを呼ぶパーティーって、思っていたほど多くない。
「テーマパークへ遊びに行く(24%)」、「写真館で記念写真を撮る(17%)」という方が、友人など大勢のパーティーよりもやや多い。
これを深読みすると、誕生日は誰のものか?ということが気にかかる。
「友人など大勢でパーティー」は、子ども本人は嬉しくても親たちは準備やプレゼントの金額などに気を使って大変だ。反対に「記念写真」で今を残したいのは親であり、子どもはあれこれ着替えさせられて大変だ。「テーマパーク」は大人も子どもも楽しい。
大人は、主役である子どもを喜ばせつつ、同じくらい自分たちも楽しみたいのではなかろうか。
最近は、1歳の誕生日を待たず、生後6カ月を祝う「ハーフバースディ」がママたちの常識になっていると聞く。本人は6カ月のベビーなので主役だが主役ではない。乳幼児の育児に毎日奮闘するママパパが自分の頑張りを誇らしく思い、ねぎらい合う良いきっかけになっている。素晴らしい発明だ!
ちなみに私の実家では、5月生まれが5人もいるので、四世代合同の誕生日祝いが行われる。最年長は90代、下は幼稚園の年中だ。その中に入れてもらっている息子曰く、自分ひとりが主役の誕生日もいいけれど、みんな一緒のお祝いは格別に楽しいそうだ。
最初は、「ひと月に何度もやるのは大変だし一緒でいいよね」と始めたのだが、いまや、1人1人の成長や健康を祝福するだけでなく、世代をこえていく家族のありようときずなを見えるかたちで祝う、家族全員のための日になっていると感じる。祝うカタチをちょっと変えるだけで意味は大きく変わるのだ。
年中行事1位に躍り出た「家族の誕生日の祝いごと」。あなたの周りにも新しいカタチと意味が生まれているはず。探してみてね。
<終>
■バックナンバー
第1回 / 何を見ているのか言ってごらんなさい。あなたがどんな人だか言ってみせましょう。
第2回 / 生活定点から見えてくる、「新しい大人の関係性消費」